最近のトラックバック

トップページ | 2008年6月 »

2008年5月

ありがちな、研修医の思考錯誤

研修医のプレゼンテーションを聞いていると、知識の多寡とは関係なく、論理矛盾の多いことによく気がつきます。大学を卒業するまで、事物を頭に詰め込むばかりで、「考える」訓練をほとんど受けていないためだと思っています。PBLとかも形式主義に陥ってしまうと、結局情報を集めて開陳するだけになってしまうのでしょう。

こういう台詞があれば、「思考」訓練を促さねばなりません。若干メタ・モデルの応用ですが。

「髄液検査は脳腫瘍を示唆しています。だから脳腫瘍だと思います」
「示唆している、とはどういう意味?」
「脳腫瘍に矛盾しない、ということです」
「compatibleであることと、diagnosticであることは別だと思うけど、それで脳腫瘍である、と断言してもいいの?」

「腎臓が悪いので、腎性貧血だと思います」
「腎臓が悪くて貧血があると、それは腎性貧血なの?そうでない可能性はどのくらい?」

「検査が陰性だったので、この疾患は否定的です」
「その検査の感度と特異度は?」
「、、、、、」

「貧血については経過観察しています」
「なぜ、経過観察するの?そもそも、なぜこの患者さんは貧血なの?」

EBMの5つのステップというのがありますが、多くの研修医は臨床的な問題点を言語化する、ステップ1の時点で躓いています。ここを乗り越えることが、臨床判断の第一歩ですが、高い頂です。ここを乗り越えないと、どんなに情報を集めても検査の乱れうち、検査結果の治療(患者の治療ではなく)というデフレスパイラルに陥ってしまうのです。今日日の学生は僕らが学生だったときとは比べものにならないほど優秀ですが、この辺の訓練はまだまだです。

常に、指導医が尋ねるべき質問は「why?」です。が、多くの指導医がwhat, how many, how muchの質問ばかりを回診でしています。研修医はたくさん検査をやってたくさんデータを取ってそれを記憶していれば優秀、という幻想に陥ります。「今日のCRPいくつ?」に代表される愚問を指導医が尋ね続けると、どんどん研修医のおつむも劣化していきます。本来は、みんな優秀な頭脳を持っているのに、もったいない話です。


CRPは役に立つ?7

CRPについては、「感染症診療のエビデンス」で亀田総合病院の大路剛先生がまとめているので、そちらも紹介しましょう。

・生後3日以内の新生児の熱。初期診断ではrule out, rule in にはあまり有用でない。48時間後の測定で陰性なら除外可能か
・1ヶ月から36ヶ月の小児・新生児では、重症感染症(菌血症、髄膜炎、尿路感染、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎)に対して、CRP>7mg/dlで感度・特異度は最良(71%, 91%)、<5mg/dlにすると、LR0.087。除外に有用。
・高次救急における意識障害患者の重症感染症除外には、CRPは役に立たない。
・ICUレベルでCRPを毎朝測定すると感染症を予測できる。ただし、感染症の診断が培養検査のみで判定されており、方法論的には問題。Crit Care 2006;10:R63
・CRPを根拠に下気道感染を診断するのは困難。BMJ 2005;331:26
・血流感染患者に抗菌薬を測定し、4日目にCRPの下がりが悪ければ治療失敗例が多い。ただし、CRPを測ることによって患者の予後が改善する、というデータはない。

以上です。毎日のように使われるCRPですが、このように微妙な役割を果たし、微妙な役割「しか」果たしません。しかし、毎日の回診で、「昨日熱発したので、今朝のCRPをチェックしときます」的なコメントが平気で出されます。それよりベッドサイドにいった方がずっと有用なのに、もかかわらずです。最近経験したケースでは、

・セラチアによる敗血症性ショック。CRPは上がらなかった。
・化学性肺臓炎。CRPは上がった。
・CRPが高い。抗菌薬を止めたら治った

みたいな感じです。CRP医者を作るのには2ヶ月あれば充分、と聞いたことがあります。本当に、そう感じます。これをひっくり返すのは大変です。ドリンクホルダーがドリンクホルダーである、と理解してもらうのに、あと、どれくらいかかるでしょうか。

次回からは、また他の検査について、、、、

ステロイドと感染症

ステロイドが効く感染症は少ない。むやみに熱にステロイドを用いるのは、むやみに熱に抗菌薬を用いるのと同じくらい良くない、というのが岩田の意見。ステロイドが必要な感染症は数えるほどしかありません、という主張でした。これは、

medicina(ISSN:00257699)44巻4号(2007.04)P.760-763
http://ej.islib.jp/ejournal/1402102689.html
にまとめています。

今回、新たに分析した論文が出たので読んでみました。著者のMcGeeは、「あの」McGeeでしょうか。
Use of corticosteroids in treating infectious diseases. read May 28, 2008

McGee S and Hirschmann J

Arch Intern Med. 2008;168:1034-46

・ステロイドの臨床使用は1949年、Henchらが関節リウマチに使用した「E物質」に遡る。これがコルチゾン。後に、この功績によりHenchらはノーベル賞を受賞している。
・腸チフス、結核性髄膜炎、そして重症敗血症にステロイドが効く、という治験も多かった。1960年代には多くのウイルス性、細菌性感染症にステロイドを用いた。しかしながら、免疫抑制作用のあるステロイドは諸刃の剣で、医師はこれを避けることが多い。
・このスタディーはMEDLINEで英語論文のみで検索した。190の治験を見つけ、歴史的コントロールやランダム化されていない、オープンラベルなものを除外した。ステロイドの局所薬の使用も除外された。

・結果、ほとんどのスタディーでは抗微生物薬併用されていた。
・全てのスタディーでは免疫抑制者は除外されていた(!)が、HIV患者を入れたものはあった。

帯状疱疹
・5つのランダム化スタディー、780人の成人を用いている。3つのスタディーではアシクロビルを併用。
・疼痛、鎮痛剤の減少、睡眠、創部の治癒において3つのスタディーで有効性が認められている。特に発症初期には有効。
・2つのスタディーはアウトカムに陰性。
・postherpetic neuralgiaの予防には無効。
プレドニゾンにして50mg程度(初期投与、以下同じ)、20日程度が使用された(平均、以下同様)

伝染性単核球症
・6つのスタディー、268人の患者。外来の軽症患者がメイン。
・2つのスタディーでは全員にペニシリンを使用(?)
・2つのスタディーではアシクロビル・バラシクロビルを使用。
・症状改善はあったが軽度であった。症状期間の短縮はなし。再発、合併症に差はなし。
プレドニゾンにして60mgくらい、8日程度使用。

ウイルス性肝炎
・再発、あるいは死亡率を上げるのではないか?
・ランダム化試験はB型肝炎のみ。
・ステロイドは予後を悪化させた。

急性喉頭気管気管支炎(クループ)
・小児に投与すると、症状期間を短縮させる。外来、入院共に同様の結果。入院率、親の心配、医療費も減少した。入院期間の短縮はスタディーによりまちまち。挿管の必要や再挿管率も減少。
プレドニゾンにして200mgくらい、1日程度使用。

急性細気管支炎
・多くのスタディーはネガティブスタディー。

ウイルス性出血熱
・中国で99人を対象に(ハンタウイルス感染)。ステロイド無効。

細菌性髄膜炎
・抗菌薬投与5−20分前に使用することが多い。
・デキサメサゾンを使うことが多い。
・成人、小児共に質の高いスタディーがある。成人の意識状態、けいれん、死亡率を減少。特に重症肺炎球菌では。小児の難聴を減少。死亡率は変わらず。
・小児に対するスタディーでは「抗菌薬後」にステロイドを投与したのもあるのだそうだ。Arch Dis Child. 1996;75:482-88
・セフトリアキソンやバンコマイシンの髄液移行性は変わらず。
・治療が遅れるとステロイドのうまみは減るかもしれない。ネガティブスタディーはマラウイ、パキスタンからだった。
・プレドニゾンにして200mgくらい、4日程度使用。

細菌性肺炎
・1950年代に2つのスタディー。症状は良くなるがレントゲンは良くならない。死亡率は変わらず。
・7日間のステロイド投与で死亡率を下げた、というスタディーもある。患者は46人。Am J Respir Crit Care Med. 2005;171:242- 本当だろうか。
・プレドニゾンにして60mgくらい、治療は4日程度。

化膿性関節炎
・123人に4日間使用。熱、関節痛、可動域制限期間の短縮。抗菌薬使用量も減った。12ヶ月後の機能予後も良かった。Peiatr Infect Dis J. 2003;22:883

咽頭炎、咽頭周囲膿瘍
・7つのスタディー、852人の患者。咽頭痛は改善、ただし24-48時間のみ。欠席期間など他のパラメターは変わらず。リウマチ熱、再発も変わらず。
・咽頭周囲膿瘍に対しては症状改善が早まったという62人を対象にしたスタディーあり。J Laryngol Otol. 2004;118:439-

蜂巣炎
・112人の成人を対象としたスタディーで、8日間のステロイド使用で症状改善。再発率は変わらず。Scand J Infect Dis. 1998;30:206-

慢性滲出性中耳炎
・189人の小児を対象に2つのスタディー。抗菌薬不応。7-14日間のステロイドを抗菌薬と共に用いると、症状改善が早まった。

重症腸チフス
・意識障害かショックを伴う重症例に1つだけスタディーあり。
・デキサメサゾン2日間使用。デキサメサゾン 3mg/kg、その後1mg/kgを6時間おき。
・死亡率は56%から10%に激減!ARRだいたい2!!!!再発や消化管出血に変化なし。N Engl J Med. 1984;310:82-

破傷風
・63人の重症破傷風では、死亡率を55%から31%に減少も、統計的有意差なし。Clin Ther. 198;10:276-

百日咳
・小児対象にした1つのスタディーでは、11人採用で入院期間を18日から14日に減少、、、ううん。Pediatr Infect Dis J. 1992;11:982-

肺結核
・4つのスタディー、3つは1950-60年代のもの。症状やレントゲンは改善。2つのスタディーでは喀痰培養陰性化が速くなった。長期予後は差なし。再発や治療失敗、空洞閉鎖に差はなし。
・HIV患者では、CD4が上がり、「ウイルス価も上がった」。なんと。

リンパ節、気管支結核
・リンパ節が気管支を圧迫した117の小児の症例で、ステロイドは狭窄を改善。

結核性胸膜炎
・4つのスタディー、そのうち一つはHIV感染対象。
・胸水をあまり取らない場合はステロイドは症状改善に有用。胸水をたくさん取ると、ステロイドは無効。長期予後は関係なし。
・HIV患者では、ステロイド使用でカポジ肉腫が増えた。

結核性髄膜炎
・6つのスタディー、990人の患者。一つはHIV患者も含めた。重症患者が多い。
・ステロイドは全てのスタディーで死亡率を低下させた。合併症などについては変化なし。
・プレドニゾンにして100mg程度、30日程度使用。

結核性心外膜炎
・3つのスタディー、441人の患者。一つはHIV患者のみ。
・腹水、静脈圧、肝腫大などが改善。1つのスタディーでは心外膜せん刺の必要が減少。死亡率も減少。14-34%から3-17%に。
・10年後のmorbidityも減少。
・ただし、収縮性心外膜炎を合併すると、死亡率などに変化なし。
・プレドニゾンにして50mg程度、50日程度使用。

ニューモシスチス肺炎
・6つの489人のHIV患者を対象にしたスタディー、4つはブラインドがかけてある。2つはオープンラベルだが、ランドマークスタディーとして有名で、結果もオブザベーションバイアスにしては大きすぎるのでこの文献では採用。NEJM 1990;323:1451-, J Acquir Immune Defic Syndr. 1992;5:726-
・ステロイドは10-21日使用。症状が改善、2つのスタディーでは死亡率改善。23-31%から10-11%に。ただし、一旦呼吸不全が進んでしまうとステロイドは無効。7日間の使用では再発増加。

脳マラリア
・昏睡を長引かせ、消化管出血を増やす。有害無益。

脳嚢尾虫症(cerebral cysticercosis)
・60人の患者、新規のけいれん。浮腫を伴っている場合、けいれんの再発を減らした。抗けいれん薬は用いたが、抗寄生虫薬は不要だった。J Infect. 2006;53:65-


まとめると、

死亡率を下げるのが、細菌性髄膜炎、結核性髄膜炎、結核性心外膜炎、重症腸チフス、破傷風、中等度/重症PCP

予後改善が、化膿性関節炎

症状改善が、帯状疱疹、伝染性単核球症、クループ、肺炎球菌性肺炎、咽頭炎、扁桃周囲膿瘍、蜂巣炎、慢性滲出性中耳炎、脳嚢尾虫症、肺結核、リンパ節/気管支結核、結核性胸膜炎

効果ないのが、急性細気管支炎(RSV)、ウイルス性出血熱、百日咳、重症市中肺炎(ICUケア)

有害なのが、ウイルス性肝炎、脳マラリア

だそうな。

思ったのは、
・ステロイドは意外に無害
・症状改善に有効、というスタディーは思ったよりも多かった。

が、ステロイドの量や投与期間がばらばらなのと、パブリケーションバイアスの可能性なんかを考えると、どうかな?という気がしないでもありません。

あと、やはり「原因の分かっていない熱」にステロイド、「抗菌薬を併用しないでステロイド」は問題だと思います。ランダム化試験はありませんが、SARSのときはやはり骨壊死などの合併症が続発しました。それと、「ステロイドパルス」を必要とする感染症は本当に数えるほどしかない、ということも大事だと思います。本当は「ない」といいたかったのですが、腸チフスのスタディーを今回初めて知った(青木先生の記載は読んでいましたが、ARRまでは知りませんでした、、、)ので、、、、never say never、ですね。

皆さんはどうお考えになりますか?

CRPは役に立つ?6

実際に、私がCRPが役に立ったなあ、と思ったケースです。

80代の女性。肺炎か何かで入院しました。寝たきりで退院先を探していたいのです。微熱が続いていましたが、特にパッとしないので経過観察です。研修医のプレゼンを聞いても、特に変わりません、という話でした。

一般に、研修医が「特に変わりありません」なんて言い出したときは要注意だったりします。どれどれ、と検査データを見ると、CRP値が高い。まあ、それはいい。よく、大学病院の先生はCRPが高いと親の不幸にでもあったかのように驚愕動転されますが、ほったらかしておいてもいいのです。

問題は、CRPのトレンドでした。前の日のCRPは今日より低く、一昨日はさらに低い。グラフにしてみると、なんとここ1週間毎日上がり続けている。

おかしい。

CRPそのものはnon-specificなマーカーです。これが高いことそのものが何かの疾患を意味しているわけではない(示唆してはいても)のです。しかし、毎日上がり続けているのは問題です。

すごくシンプルにした確率論でいうと、CRPは上がるか下がるかそのまんまか、の3種類しかありません。これもすごくシンプルに乱暴に考え、それぞれが起きる可能性を33%と決めつけておきましょう。CRPが翌日上がっている確率は3割程度とするのです。では、その翌日も上がり続ける可能性は?これは、0.3x0.3で、10%程度になります(ついてきていますか?)。その翌日も上がり続ける可能性は3%弱、その次の日は、1%以下になります。

偶然にしては出来すぎています。何かがおかしい、と思うのがまっとうな臨床的な考え方です。臨床家は確率論の世界に生きており、原則として「偶然を信じません」。あの素敵な彼女との出会いも全部必然だあっ!と間抜けなことを考えるのが臨床家です(それは単なる偶然です)。

おかしいってんで患者さんを診察に行きました。やっぱり。左下腿が腫れて固くなっていたのです。深部静脈血栓を作っていたのですね。

CRPに限らず、臨床の世界ではトレンドが大事です。検査も、初診時のスポットで見ていてはいけません。クレアチニンが1.5という数字ではこれが重要かどうかは分かりません。しかし、前日は1.1で、その前の日は0.8でした、と聞けば、何かがまずい、マネジメントの変更を強いられるのです(水を増やすとか、利尿薬を切るとか、アミノグリコシドを切るとか、です)。

ポイント
・検査はトレンドが大事
・CRPが「上昇し続ける」場合は、単に高値なのとは違い、心配が必要。

 もちろん、CRPが上がり続けたからといって、すぐに「抗菌薬」という意味ではありません。件のおばあちゃんも感染症以外がCRP上昇の原因でした。CRP上昇ーー>抗菌薬は大脳を使わない脊髄反射的思考です(まあ、思考ですらないのですが)。CRP上昇ーーー>何故?というのがせっかく良いおつむを両親にもらった医師の最低限のつとめと思うべきです。

CRPは役に立つ?5

ここで、CRPやその他のマーカーの有用性について、私がまとめたものを紹介します。CRPに関するデータがどんなものか、今注目されているプロカルシトニンがどのくらいなものか、ご覧ください。底本はInfectious Disease Clinics of North Americaの総説です。

検査の有用性について
・白血球やその分画で細菌感染か非細菌感染かを峻別する能力は低いとされます。極端に高い場合などは別ですが、予後決定因子としても使いにくいです。ちなみに、有名なPSI(pneumonia severity index)では白血球数については、肺炎の30日後死亡率との関連が得られませんでした。
・白血球の形態についてはどうでしょう。Dohle's body, toxic granulation, vacuolesなどがアネクドータルに紹介されていますが、厳密にはよく分かりません。
・実は、もっと役に立つのが血小板です。血小板減少は多臓器不全や予後増悪を予測する独立危険因子です。逆に、慢性炎症では血小板は高いことがおおいですね。白血球・CRPだけでプレゼンをするのはマンネリだから、今度は血小板も混ぜてみると面白いかもしれないですよ(優秀な研修医に見せるためには、ヒトと違うことをやるのが一番!)。
・severe sepsis患者の90%以上でD-ダイマーとPTの異常です。でも、これくらい頻度が高いと逆に測る意味あるんだろうか、なんて思ったりしないでもないですが、皆測る。
・乳酸レベルも近年よく測定されます。バイカーボ正常、アニオンギャップ正常でも乳酸値は高いことがよくあるそうなので(知りませんでした)、乳酸だけを独立して測る価値はあるのだそうです。上がっていれば、予後不良。
・動脈血の乳酸値と中心静脈の乳酸値はよく相関していますが、末梢静脈血の場合はそうでもないので注意が必要とのこと。末梢静脈血の乳酸値が正常であれば動脈血でも正常である可能性が高いです。しかし、末梢静脈血の乳酸値が上昇していても動脈血では上がっていないことも多いのだそう。
・CRPなどのバイオマーカーには60種類以上あるそうだ。
・IL-6、プロカルシトニン、プロテインCなど。
・細菌感染と非感染性疾患を区別するのに、プロカルシトニンとCRPはある程度の感度・特異度を持っている。それぞれ感度88%, 67%, 特異度81%, 67%。特に、CRPはスクリーニングにも確定診断にもパッとしないことは理解しておきましょう。6割台の感度・特異度、50%に毛が生えた程度の感度特異度だと、コイントスをして判断をするのとそう、大差はないのです。陽性でも4割間違い、陰性でも4割間違い。
・細菌感染とウイルス感染を区別するのには、プロカルシトニンとCRPの感度特異度はそれぞれ感度92%vs86%、特異度73%vs70%です。どちらも感度はまあまあまずまず、特異度はいまいち、というところか。
・敗血症と、非感染症のSIRSの区別に、プロカルシトニンの効果が70%程度しかなかった、という報告もあります(メタ分析 Lancet Infect Dis 2007;7:210)。
・プロカルシトニンの最大値、あるいは上昇量が予後と相関する、といわれていますが、入院時のプロカルシトニン値(そしてCRP値と白血球)は関係ないのだそうな(Crit Care Med 2006;34:2596)

Talan DA et al. Severe sepsis and septic shock in the emergency department. Infect Dis Clin N Am 22(2008)1-31

やはり、エファビレンツか

PIとNNRTIの優劣については特に強いデータはなかったと思いますが、今回NEJMでは、エファビレンツの方がロピナビル・リトナビルよりいいんじゃないか、と示唆するデータを出しています。また、NRTIをスペアすると耐性が増えやすいかも、というデータも出ています。

Class-Sparing Regimens for Initial Treatment of HIV-1 Infection
S. A. Riddler and Others
NEJM, May 15 2008より

CRPは役に立つ?4

では、どんなときにCRPが役に立つか考えてみましょう。

CRPの上昇、下降は多くの急性感染症で、「ある条件を満たせば」その感染症がよくなっているか、そうでないかの指標になります。
それは、CRPが熱、血圧、意識状態、呼吸状態、あるいは患者の自覚症状や食欲などと連動しているときです。

ポイント
・急性感染症ではcrescendo or decrescendo。良くなるか悪くなるかのどちらかだけ。
・多くの感染症では、(CRPも含めて)全てのパラメター同時に同じ方向に向いて動く。

 つまり、CRPが他のパラメターと一緒に動いているとき、そのCRPは患者の評価の役に立つ、ということです。逆に、他のパラメターがよくなっているのにCRPが上昇したままだったり、あるいは他のパラメターが悪いのにCRPがあがらないとき、CRPは臨床的には役に立ちません。

あれ?

 そう、賢明な読者の皆さんはお気づきになったでしょう。「他のパラメターと連動しているときのみ」CRPが役に立つのなら、他のパラメターさえみておけば、CRPを測らなくても患者の評価は可能だ、ということです。そして、他のパラメターとCRPが連動していない場合は、CRPを測定しなければCRPの高低は予測できません。ところが、そういうときはCRPは臨床的に有用ではないのです。なんたるジレンマでしょう。

 したがって、CRPを測定しなくてもいいときにはCRPは臨床的な予測因子となり、CRPを測定しないとCRP値が予測できないときは、臨床的な予測因子とならない、ということです。え?よく分からない。簡単にいうと、患者を丁寧に診察していればCRPは測らなくていい、ということです。

 しかも、この原則には例外があります。例えば、臨床的に改善して、CRPが下がっていても(連動している)、抗菌薬を止めてはいけない場合もあります。例えば、感染性心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、膿瘍といった疾患です。こういった疾患は、場合によっては治療開始数日で患者の臨床症状は改善し、CRPも下がりますが、「決して」抗菌薬を止めてはいけません。

ポイント
・感染性心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、膿瘍などでは(たとえドレナージしていても)、CRPの低下をもって抗菌薬を中止してはいけない。

 CRPは炎症マーカーで、抗菌薬はばい菌を殺す薬です。抗炎症薬ではありません。炎症と殺菌は多くの急性感染症ではいっしょに動くパラメターですが、上記の疾患ではそうではありません。炎症が治まっても細菌は生きています。清潔な、本来であれば細菌が一匹もいてはいけない場所で、生きています。例え患者がよくなったように見えたとしても油断してはいけません。何週間、何ヶ月、時に1年以上たって、患者は再発してきます。そして、そのときには心臓の弁はぼろぼろになり、椎体はつぶれ、患者の生命予後、QOLはがた落ちになっていることがあります。医師の手落ちで、患者の予後を悪くすることは決して許されることではありません。私は、「CRPが下がった」という理由で黄色ブドウ球菌による心内膜炎、椎体炎、化膿性関節炎に対する抗菌薬が中止になり、患者が死に至ったケースをいくつも知っています。無知は、罪です。

 だんだん、暗澹たる気持ちになってきましたね。本当にCRPは役に立つのでしょうか。次回は、実際に病棟でCRPが役に立ったケースを振り返ってみましょう。まれに、CRPは私たちを助けてくれます。そんなケースです。

青木先生講演を聴いて

感染症診療の原則

青木眞先生 2008年5月21日、大阪での講演より

1200回くらいお話されたとおっしゃる演題の講演。未だに輝きがある基本中の基本。逆に言うと、1200回も青木先生が講演をなさっていてもまだこれがコモンセンスになっていない日本の医療現場(ええ?そうなんですか?というリアクションがあること自体だ問題)。本日、私も院内で研修医に講義をしたが、内容は似たような感じでした。

箴言集

・be specific 原因微生物は何か?固有名詞で考える
・熱、白血球、CRPに踊らされない。
・重症感染症であればこそ熱、白血球、CRPに踊らされない(パラドキシカルに動く)
・精神症状と熱があるからといって頭の感染症とは限らない。
・CRP使用禁止を申し渡した研修医は臨床能力習得が早い。
・surgical illnessはsurgicalに治す(抗菌薬だけでは治らない物も)
・FUOで大事なのは、FUOであると認識すること。FUOとは「なんだかよく分からない」ことではない。フォーカスは探しきること。
・細胞性免疫障害で問題となる(ステロイド、移植、HIV)微生物は暗記すべし
 ・ウイルス ヘルペス(CMV, VZV, HSV, EBV, HHV6)、その他(アデノ)
 ・細菌 LLMNS リステリア、レジオネラ、抗酸菌、ノカルジア、サルモネラ
 ・心筋 カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、カリニ肺炎、ヒスト、ブラスト、コクシ
 ・原虫 トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、イソスポラ、糞線虫
・結核PCRは感受性は教えてくれない。胸膜炎ならやはり胸膜生検が大事。
・グラム染色を行って原因微生物に興味を持とう。
・MRSAと緑膿菌が同時に培養に生えたら、何を考えよう?もし喀痰グラム染色でGNRばかりなら、MRSAは却下できる。
・MRSAが喀痰から生えたときに、本当にMRSA肺炎の時のグラム染色像を理解する。
・培養は、菌名と感受性試験を教えてくれる。菌名の臨床的意義と感受性試験の臨床的な読み方を識る。
・黄色ブドウ球菌が血液が生えていて腰が痛かったら、そうでないと分かるまでは骨髄炎(椎体炎)である。
・細菌検査室が院内にあるのは研修病院のいろはの「い」
・入院患者の下痢便の便培養は、移植やHIV患者などの例外を除けば、御法度検体であることが多い。
・サルモネラにセファゾリン、セフォチアム、アミノグリコシドを使ってはいけない(たとえ感受性があっても)
・血液培養を取るときは、熱、白血球上昇、CRP上昇だけではない。低体温、白血球減少、CRP上昇低下も大事になることも。意識障害、心不全、腎不全、アシドーシスなどもきっかけに!
・重症だからといってブロードスペクトラムと決めつける必要はない。
・アミノグリコシドは初回はフルドース。腎機能は関係なし
・ポリミキシンも注意深くモニターすれば副作用はそれほど大きくない。
・CID 2004;38 新しい抗菌薬は減っている。耐性菌は増えている。
・バンコマイシンもMRSAに対してMICが2を超えるとあまり効かなくなっている。
・結核のサードラインの治療はイミペネム、マクロライド、リネゾリドなどは普段使う薬(セカンドラインのキノロンも)。 You use it, you lose it.
・細菌感染はcrescendo and decrescendo (細菌感染症は改善OR悪化あるのみ)動かない患者は感染症でない可能性が高い。

ManU ヨーロッパを制す

チャンピオンズリーグ決勝。悪いピッチと雨で少し大変だったようですが、チェルシーとManUの対戦。結局PKでManUの勝利でした。普段の出勤を30分遅らせてPK観てました。

前半は、ManUらしくないポゼッションサッカーで1点先取。ペースもつかんでいましたが、思わぬミスから同点にされ、後半はチェルシーペース。延長戦はほぼ互角で展開していましたが、ドログバが痛い退場。そのまま試合終了でPK。ロナウドが「予想通り」外して万事休すかと思いましたが、テリーがまさかの軸足を滑らせて失敗。いつだかのアジアカップの中村を思い出しました。最後はファンデルサールが決めて勝利。ライアン・ギグスは出場記録更新に花を添えました。

立ち上がりこそ固かったものの、1対1のスコアからは想像しがたい攻撃的な展開で全然退屈しませんでした。決勝でPKだと、ミラン対ユベントスという世紀の凡戦を思い出しますが、全然内容は違っていました。

幸か不幸かイングランドはヨーロッパ選手権に出ないので、多くの選手はようやくこれでオフです。本当にご苦労さまでした。ManUが勝ったのは嬉しかったですが、チェルシーもいい試合を見せたと思います。テリーも勝負を分けかねないギグスのシュートを驚異的な戻りで救っていました。誰も責めることは出来ないでしょう。

BBCのMOMはクリスチアーノ・ロナウド。私的にはエブラがとても良かったと思いました。

帰りの飛行機で観た映画

The Bucket List。死に対面した二人の男がリストを埋めていくお話。最後はウィットも効いた展開でとても楽しめた。ただ、今世紀最高作というのは過言だと思います。

27 dresses. 普通のラブコメです。

PS I love you. NY はラブコメの街です。

Lions for lambs. レッドフォードのハードな作品。議論と対話が中心の映画で、国の進むべき方向と、我のあるべき姿を問う。字幕なしでは分かりづらいところもありました。


CRPは役に立つ?3

最近、みたケースはこんな感じでした(すこしデフォルメしています)。

腹部のオペ後の患者さん。閉腹出来ず、ICUに長くいます。熱があり、白血球が高く、CRPが高い。ずっと高い。あれやこれやの抗菌薬を次々に試しますが、なかなかよくならない。

相談

されて診察してみると、全身状態はとてもいい。呼吸状態はよく、血圧は安定、脈拍も安定、鎮静を落とせば意識状態もいい。

わたしは、「抗菌薬はやめてみましょう。熱が出たら、培養を取り直してみましょう。血液培養と尿培養を、、、、」

熱が出たときは血液培養、というのは近年ようやく、少しずつ浸透してきましたが、意外に忘れられているのは尿培養です。入院中でカテが入っていて、熱のフォーカスがはっきりしないときは、かならず尿検査と尿培養が必要です。培養も何でもかんでも取ればいい、というものではありませんが、少なくともICUではそうです。

ポイント
・入院患者の発熱で、尿検査・尿培養を忘れると痛い目に遭うことがある。

抗菌薬をやめてみます。当然、心配だから毎日診察します。大丈夫、バイタルに変化なし。そうこうしているうちに、数日たってから熱が下がってきます。白血球も下がってきます。CRPも低下傾向。陰性化はしません。でも、気にする必要はない。トレンドが大事なのです。

こういうケースはとても多いです。もしかしたら薬剤熱だったのかもしれませんし、オペ後の反応熱が遷延していたのかもしれません。意外に知られていないことですが、薬剤熱でもCRPは上昇します。

ポイント
・バイタルが安定している患者の熱の場合、抗菌薬中止が福音をもたらすことがある。
・薬剤熱でも、CRPはあがる
・CRPは陰性化する必要はない。あくまでトレンドが大事。

もちろん、熱の出ている患者の抗菌薬を切るのは不安なことです。どの担当医も心配になります。心配になるのが自然ですから、それは健全な反応です。むしろ平気の平左でいる方が、やばいかもしれません。
 でも、心配しながらも「中腰」でじっくりゆっくり患者を観察していきます。幸いICUはスタッフも多いし急変にも対応しやすい。血圧が下がる、呼吸状態の悪化、患者の急変があれば、即座に各種検査をして、広域抗菌役をどんっと最大量で使います。感染管理で典型的な失敗は、急変している患者に広域抗菌薬を出し損ない、「経過観察」してしまうことです。広域抗菌薬を「使わない」ことが「適正使用」なのではない。この一点は、大変重要な教訓です。
 でも、この患者さんはバイタル安定してるから、じっと我慢でみていくのです。この我慢、この胆力こそが臨床家の臨床家たる「勇気」です。
 CRPは、重症感染症におけるドリンクホルダーです。もっと大事なのは、血圧、呼吸数、意識状態などです。これらがハンドル、エンジン、ブレーキに当たるのです。ハンドルやブレーキを無視してドリンクホルダーばかりいじっていると、事故ります。ハンドル、ブレーキ、エンジンがしっかりしていれば、CRPが高くてもあわてて抗菌薬を使わなくてもよい可能性が高いです。

 逆の症例。膵臓手術の既往のあり、脾摘を受けている男性ですが、「非常に」残念なことに、肺炎球菌ワクチンを接種されていませんでした。ショック、意識状態の変化、出血傾向を伴うDICで来院です。重症敗血症・敗血症性ショックです。適切な広域抗菌薬がすぐに使われたにもかかわらず、患者は24時間以内に死亡してしまいました。CRPは1台でした。ドリンクホルダーは緊急時にはみていてもしようがありません。

外来の20代の男性。「熱があり、CRPがあがっていたので、クラリス、次いでフロモックスを使っているのに治らない」という理由で紹介されてきました。のどが腫れていて、白苔が就いていて、後頚部リンパ節が腫れており、肝機能異常があり、腹部超音波で肝脾腫がありました。そう、伝染性単核球症でした。患者の診察を怠り、CRPばかりみているとこういうことになります。

外来患者でも入院患者でも、CRPはドリンクホルダー。CRPを測るのはかまいませんが、もっと大切なものを見逃さないように。

ポイント
・CRPは測っていいが、ドリンクホルダー。
・病歴、診察所見(特にバイタル、意識状態)こそが感染症診療におけるハンドル、ブレーキ、エンジンに当たる。ハンドル・ブレーキをほったらかしてドリンクホルダーをいじりまくらないように!

世界中どこにでもある中華街、世界中どこにでもあるアイリッシュパブ、で、中華街のアイリッシュパブ


Image017


ケネディーセンターでジャズ

本音を言うと、学会だのパーティーだのは苦手です。それでも勉強になるので参加していますが、、、、

さて、たまたまケネディーセンターでWomen in Jazzという企画をやっていたとワシントンポストで見つけたので、早速チケットを予約して行ってみました。ケネディーセンターに最後に行ったのは、確か1995年くらい。小澤征爾がタクトを振っており、チャイコフスキーの何とか、、、でした。クラシックは弱いので覚えていませんが。クラシックは、、というと他が強そうですが、他も等しく弱いです。

最初に、無料のWomen in Jazz competitionをみました。ジャズのコンテストをみるのはこれが初めてです。今年のテーマはサクソフォンで、5人の女性が最終選考に残っていました。曲を聴いて、「あ、このひとが優勝だな」と誰もが感じたであろう、Hailey Niswangerが優勝でした。この人のサックスはすごいです。客がみな乗っていました。美人だし、今後売れると思います。注目です。

次いで、シアターでコンサート。会場はほどよい狭さで、ジャズ向きでした。客はほとんど高齢者。なんか、アメリカのジャズってファドとかシャンソンとか演歌みたいな立ち位置なんでしょうかね。ジャズはむしろ、日本、フランス、スウェーデンなど外国で評価が高いように思います。去年ビレッジヴァンガードにいったときも客は少なく、日本の観光客が多かったし。そういえば、日本の演歌もそうか?

Helen Sungは中国系のジャズピアニストですが、モンクの作った?教育機関の門下生みたいです。この人のピアノはすごかった。怒濤のピアノさばきで、大拍手、スタンディングオベーションの嵐でした。2007年のWomen in Jazz Competition Winnerです。私はピアノ弾きというとエヴァンスとかモンクとか死人しか知りませんが、生きているジャズピアニストではぴかいちでした、、、変なほめ方か。

恥ずかしながら、シーラ・ジョーダンという歌手は初耳でした。もともと、(言葉の壁もあって)ボーカルにはあまり興味がなかったこともありますが。

しかし本当にすごいです、この方。すばらしい声、ユーモアたっぷりの会話。伝説のマイルス・デイビスやチャーリー・パーカーと同時代で、マイルスの思い出を唄にしたり、自らのジャズ人生を歌にしたり、とファンサービスたっぷりです。最後に、彼女は「これまで79年半の人生で、、、」と語り会場はざわつきます。このおばさん、79歳???彼女を知る観客は「もう6回も観に行ったけど、全然声が変わっていないのよね」とのこと。すごい!スタンディングオベーションでした。私もジャズのライブで初めて涙が出ました。それぐらい感動的でした。

次いで、Sherri Maricle and Five Playでしたが、これもよかったです。あとで知ったのですが、ベースとピアノは日本人でした(Noriko Ueda and Tomoko Ohno)。ジャズの世界で日本人(女性)の活躍は本当にすごいですね。


CRPは役に立つ?2

 CRPは肝臓で作られるいわゆる「炎症マーカー」です。肺炎球菌のC多糖体と結合するのでこんな名前(C reactive protein)ですが、まあそんなうんちくはどうでもいい。

 昔は、日本でだけ使われるドメスティックな検査でしたが、最近は別領域で海外でも用いられるようになりました。例えば、冠動脈疾患におけるマーカーとしても注目されており、予後設定などの目的で高感度CRPが用いられることがあります。また、感染症以外の炎症性疾患でも用いられることがあり、例えば関節リウマチの炎症マーカーとして用いられたりもします。巨細胞動脈炎(giant cell arteritis, GCA)の診断ではよく赤沈が用いられますが、赤沈陰性のGCAもあり、CRPのほうがより感度が高いと言われています。繰り返しますが、「上手に使えば」CRPは便利な検査です。

 感染症におけるCRPの有用性はあるか?私は、ドリンクホルダー並みにはあると思いますので、その使い方は追々説明していきます。しかし、その前にCRPの間違った使用について検討しておいた方がよいでしょう。人間は成功よりも失敗からより多くを学ぶ生き物だからです。

まずは、

CRP「だけ」を感染症の診断に用いる。

 前回紹介した例がそうですね。CRPをとりあえず測定し、それが高いと感染症と決めつけ、抗菌薬を開始する、というやつです。
 特にこのやり方が頻用されやすいのは集中治療室(ICU)、免疫抑制剤を服用している患者、血液疾患などで化学療法を受けている患者などです。いわく、「俺の患者は易感染性だから、臨床症状ははっきりしない。熱も出ないこともある。だから、CRPがあがれば即抗生剤だ」というやつです。

「おっ、今朝のCRPは高いな。ペコポコマイシンを入れておこう」

 残念ながら、CRP上昇でもって抗菌薬使用を正当化するようなエビデンスは皆無です。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)アンチゲネミア・アッセイがこのような使われ方をします。このアンチゲネミアの価値についてもいずれ議論するつもりですが、よく、アンチゲネミア上昇でもって抗ウイルス薬を用いますね。これは、疾患が発症していない段階ですが、将来の発症を抑えることができる、という意味で用い、preemptive therapyと呼びます。preemptive therapyも、厳密にはほんまにええの?という議論は成り立ちますが、まあそこには目をつむってもよい。
 大事なのは、CRPにはこのような方法、preemptive therapyに応用する、という方法が認められていない、という点です。CRPの上昇は抗菌薬使用を(無条件には)意味しない。この一点を覚えておくだけでも、病棟管理の質は格段にアップします。恐ろしく多くの患者さんが、CRP上昇という理由だけで抗生剤のピクルスにされているからです。
 もっというと、感染症を積極的に疑っていない段階で、CRPをルーチンで測定することそのものに問題があると思います。検査にルーチンなし。必要な検査を、必然性を持って測定するというコンセプトを現場の医師は持つべきでしょう。

 この間、自治医科大学の矢野晴美先生に教えていただいたのですが、2008年4月1日の時点でCRPの保険点数は16点、つまりコストは160円となるんだそうです。
 1100床の(大学クラスの)病院で、稼働率90%と仮定し、1000床に患者がいるとすると、例えばCRPを、毎回の検査で全員に、週3回、ルーチンに検査しましょう。

1回 160 x 1000 = 160,000
週3回 160,000 x 3 = 480,000
1ヶ月=4週とすると、480,000 x 4 = 1,920,000

これが1年間になると、x 12 = 23,040,000。2300万円になります。

 もちろん、これをゼロにするわけにはいかないでしょうから、ルーチン検査をやめたからといって即2300万円の赤字削減(最初から赤字と決めつけていたりして、、、、)とはいかないでしょう。逆に、そのCRPがチョロ上がり、という理由で無益に入れられている抗菌薬コストや、それが作る耐性菌対策コスト(ガウンや人件費)や、偽膜性腸炎などの合併症による入院延長で得る病院の不利益は莫大なものではないかと想像します。風が吹けば桶屋が儲かるみたいですが、本当だと思います。だれか調べてくれないかな、CRP測定がもたらす経済効果。

 いずれにしても、CRP。介入の余地ある部分です。病院経営者の皆様、ご覧あれ。

ポイント
・CRPをルーチンに測定してはならない。
・そのルーチン検査の異常でもって「ルーチン」に抗菌薬を使ってはならない。

 では、CRPがたまたま高い場合(そもそも測らなきゃいいので、このような仮定をおくこと自体、変なのですが)、私たちはどうすればいいのでしょう。
 それは、何故CRPが上昇したのか、考えてみることです。原因を考えることなくして、アクションを取るのはいけません。パブロフの犬じゃあるまいし、せっかく私たちは両親からもらったすてきな頭を持っているのですから、それを使わない手はありません。何故、CRPが高いのか考える。

CRP上昇ー>抗菌薬

は脊髄反射でして、頭を使っていません。ベルの音ー>よだれ、に等しい行為と知るべきです。今度CRP上昇で抗菌薬使っている医者を見つけたら、「ベルヨダ先生」と呼んであげましょう。
 ベルヨダ先生の多くは、実は優秀な頭脳の持ち主です。頭が悪いのではなく、使っていないだけなのです。話してみると、性格も(そんなに)悪くはない。きちんと理解すれば分かる話ですが、悲しいかな、人間とは結構理性よりも習慣で動いてしまうのですね。ベルヨダ先生が、その頭脳にふさわしいプラクティスをできるように、私たちはお手伝いをしていかなければならないのです。

パンダ飛行機

Image015


米国行きの飛行機は、、、

米国内科学会でワシントンDCです。糖尿病の勉強を最近さぼっていましたが、だいぶ勉強し直しました。problem orientedな勉強(UpToDate)もいいけれど、こればかりやっていると、問題意識を抱けない場合、いつまでたっても無知なまま。座学も大事と再認識。

空港までの移動中にipod touchで「勝手にしやがれ」鑑賞。機内では、「陰日向に咲く」「大統領の陰謀」、「駅前怪談」を鑑賞。アメリカ行きの飛行機は長くて、特に東海岸はつらいけど、普段できない映画鑑賞ががっちりできてうれしい。特に最近はエコノミーでも選択肢が多くてすばらしい。

勝手にしやがれを観るのは何度目だろうか。何度観てもすてきな映画である。アメリカ嫌いのフランス人がアメリカのジャズを最大限に利用して作った映画。

陰日向に咲く。最初の30分は「失敗したな」と思って別の映画に変えようと何度も思ったが、変えなくてよかった。オムニバスの小説をうまく映画にしています。

大統領の陰謀は、恥ずかしながら初見。伝説の名作、大好きなレッドフォードとホフマンということで、こういうのを観ていなかったのは忙しすぎるからか。必見の名作。ちなみに、ディープスロートはこの人らしい。

駅前怪談みたいな昔の日本映画を観るのが結構好きです。民俗学的な興味をそそります。

さらに、この間、2つの新書とペーパーバックを読みました。「大学教授コテンパン・ジョーク集」はタイトルに惹かれて買いましたが、既知のネタも多く、お買い得とは、、(それにしても、アマゾンの読者評価は本当にいろいろで、個人の書評がいかにあてにならないかを示しています、、、)。「マックス・ヴェーバーの哀しみ―一生を母親に貪り喰われた男 」は残念!としか言いようがない本。High Profile by Robert B. Parker。日本語ではスペンサーシリーズを何度も読んでおり、例のチャンドラーのつぎはぎも読みましたが、これは傑作でした。美しい英語で、村上春樹にでも訳していただきたいです、、、

ManU勝利

Manchester Unitedプレミア制覇、最終戦でした。

最後の最後までもつれましたが、全体的には安定していました。史上最強、とまで言われたアーセナルが失速したのは、良かったんだか悪かったんだか、複雑です。最終戦、とどめの2点目をとったライアン・ギグスは、私がマンチェスターに住んでいた1991年頃ルーキーでしたが、まだがんばっています。Ryan Giggs, Ryan Giggs,,,,のファンのチャントが印象的でした。

次はチャンピオンズリーグ。

CRPは役に立つ?1

まずはこんなケースから

「患者さんは67歳の男性。高血圧と脂質異常の既往あり。昨日夕食を食べているとき、急に左半身が動きにくいと救急搬送。CT、MRIにて脳梗塞と診断され、当科入院となりました。CRPが高かったので、感染症の合併を考え、抗生剤を、、、」
ちょい、またんかい(にわか関西弁習得中)。なんで脈絡もなく、そこでCRPが高値、、、って話になるの?全然話がつながらないんだけど。
「いや、測ったら高かったので、、、」
だから、どうして測ったの?
「どうして?いや、理由は特に」

ポイント
・検査にルーチンなし

そう、全ての検査には、オーダーするなら理由がなければいけません。CRPも然り。どこからどう見たって脳梗塞の患者さんで、とくに誤嚥を疑ったり、心内膜炎からの塞栓を疑ったりしているわけでもないのでしょ。そういうときは、CRPを測っても意味がないのです。CRPは非特異的なマーカーですから、急性疾患の患者さんで、けっこうチョロ上がりしています。こういうときに全例抗菌薬を出していたら、日本人の抗菌薬詰め、一丁上がり、ってやつです。「日本人の抗菌薬詰め」は某大学病院の名物料理といわれていますが、その実、船○○兆の鮎の塩焼きより食べられない代物です。

ポイント
・CRPは、理由がなければオーダーしてはいけない
・CRPが高いからといって感染症とは限らない。CRPが高いからといって抗菌薬が必要とは限らない。

CRPは役に立つか?という議論がよく行われますね。

私の尊敬する感染症医の一人はCRPはほとんど役に立たないと見向きもしません。別のやはり尊敬する感染症医はCRPをよく使う、とおっしゃっています。どちらが正しい、というのではなく、スタイル・スタンスの問題のようです。私は?私はCRPを使わなくても困りませんが、使っても別にいいや、ってかんじの両刀づかいです。前の病院では、
「岩田の前でCRPなんて一言言ったら雷落とされるぞ」
とかいうデマが回り、研修医が測っているCRPを隠そう隠そうと必死で努力していました。そこまでせんでええわい。測ったって別に罰は当たりません。

ただし、ちゃんと使えていれば、ね。

CRPは、車で例えるなら、

ドリンクホルダー

といったところでしょうか。別にあってもいけなくはないですが、なくてもちゃんと走れます。それなのに、多くの医師はドリンクホルダーをタイヤやブレーキやエンジンよりも大事にしているのです。

「わっ。タイヤが外れてますよ」
「いいんだよ、ドリンクホルダーはしっかりしてるだろ」
だと面白くもないジョークですが、

「先生、脈が150とタキッてます」
「でもCRPは落ち着いてるからなあ、すこし経過観察しようか」
は、ブラックな実話です。

ドリンクホルダーには、ドリンクホルダーとしてちゃんと仕事をしてもらいましょう。次回も、ドリンク、、、いや、CRPの使い方を解説していきます。

写真は祇園の街並み
Image009


ブログを始めました

Image003_2

こんにちは。岩田健太郎です。

感染症の情報発信のため、ブログを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。

感染症に関連した検査について、いろいろお話ししていきます。学生、研修医、指導医、検査技師さん、ナースなど多くの方に読んでいただけるとうれしいです。

それでは、最初は感染症でもっともよく使われ、またもっとも誤用されているCRPから説明していきます。お楽しみに。

写真は近所を散歩していて見つけた美容院。グラム陽性だ!

トップページ | 2008年6月 »

2016年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ