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2008年9月

電車で読んだ本

オレンジの呪縛 講談社

 ヨハン・クライフという不世出のスーパースターを産んだオランダサッカー。そのすばらしさの秘密(そして勝てない理由)を社会学、心理学、歴史学的な視点から美しい文章で分析した本。とても楽しめました。

藤田和日郎 邪眼は月輪に飛ぶ 小学館

藤田マンガは密度の高い設定・伏線が魅力ですが、話が複雑になりすぎて散漫になるところと、熱のこもったストーリーが熱を帯びすぎて逆に引いちゃったりするところがちょっとなあ、と思っていました。この短編は熱と冷静のバランスがとれた名品で、読後はじーんと感動しました。読み返しちゃいました。

小林多喜二 蟹工船 マンガ版 イースト・プレス

むかしはこういう名作のマンガ版とかいうと下手な漫画家が担当していましたが、今はみんな絵がうまいしこまわりや表現も巧みです。原作はもう20年以上前に読んで忘れちゃいましたがあまり面白く思わなかった(80年代の日本で中学生がプロレタリア文学を読んで面白いわけないですよね)。共産主義も資本主義もある局面では有効に活用され、ある局面では(あるいは時間が経つと)効果がなくなる、、、ということでしょうか。

帰国後の熱

国立国際医療センター主催の輸入感染症講習会に参加しました。各論では、マラリアとか腸チフス、デングの話がでたので、私は「発熱」をテーマに話をしてみました。患者さんは診断つきでは来院しませんから、、、、、

以下、メモ的ですが

旅行スタイルの変化
旅行者の変化。かつては旅行しなかった免疫抑制者も自由に旅行する時代に
一般の発熱に対応できないと輸入感染症にも対応できない。
発熱患者の基本は
診断は?
患者は重症?
タブーは訳も分からず抗菌薬。訳も分からずステロイド。訳も分からず抗菌薬とっかえひっかえ
アセスメント無き発熱対応にさようなら

コモンなものはコモン
旅行者でも多いのはインフルエンザ、上気道炎、尿路感染、急性腸炎
赤道近くではインフルエンザは通年。南半球では冬夏逆に
熱以外の症状に注目しよう。気道症状はあるか。腹部症状、尿路系症状はあるか。など。

亜急性の発熱と急性の発熱を区別しよう。時間は大事。
結核、真菌感染、感染性心内膜炎、アメーバ肝膿瘍、感染症以外など
人にうつる病気はすぐにチェック
結核、ウイルス性出血熱など

サハラ以南のアフリカ→ダニ媒介リケッチア
中央アジア、南アジア→腸チフス
70%以上の腸チフスはアジア由来
Leptospira、アメーバ肝膿瘍、無菌性髄膜炎、回帰熱(だに、シラミを介したBorrelia感染症)も多い。

近くの旅行歴だけでなく、昔の渡航歴、滞在歴も重要
HIV感染無くても播種性ヒストプラズマ症は時々起きる。
注意すべきは、結核、endemic fungi、Penicilliumなど

どの国の 国によってリスクが違う。リーシュマニアやマラリアでもどの原虫(そして病態や予後)かは国によって違う。
どの地区で 同じ国でもマラリアリスクは違う。
インド?ヒマラヤ山脈上
ペルー?海岸沿いのリマ
どのようなホテルで
何をやって 洞窟巡り?イカダ下り?
何をやらなかったか? 患者さんは嘘をつく動物!
滞在期間も大事
予防接種、予防薬なども
動物曝露歴は超重要!虫刺されは覚えていないことも多いが、活動の詳細から推測できる。例・マラリア、Lyme病など

長期滞在者では必ずB型肝炎を考える(可能なら、予防しましょう)
人間はそういう動物です。

HBV、HAV、黄熱病ワクチンはほぼ完璧
本当に検疫所でないと黄熱ワクチン打てないの?昭和20年代の遺物
腸チフスは50-80%と微妙
マラリア予防薬の効果は80-90%
発症だけでなく予後改善か。

ハイリスク(長期滞在、田舎に滞在、汚染された食べ物や水に曝露)ーー>Brucella症、住血吸虫など旅行者にはまれな感染症も
旅行前のアドバイス・コンサルテーションの言うことを聞かない。ワクチンや予防薬も控えめ。
地元の病気も甘く見がち。受診もしない。医療保険やビザがないことも。
確かに現地の(大人の)マラリアは軽症だが、しばらく先進国にいると免疫が低下して重症マラリアになりやすい

Communicable Diseases Manualは便利
ほとんどの感染症は潜伏期間30日以下。ほとんどのfalcip malariaもそう。
例外が、vivax malaria, TB, viral hepatitisなど
逆に短いのはデング。帰国後すぐ、とか飛行機の中で、という病歴が多い。

結核空洞と肺化膿症の区別
old TBは今のTBを否定しない。
咳がなくても結核、熱がなくても結核
結核を見たら、HIVを考えよう

HIV、移植患者など免疫抑制者も旅行する時代
マラリアはHIVで死亡率上がらない。Salmonellaは上がる。
Penicilliumなど現地の日和見感染(dimorphic fungi)にご用心。タイでは日和見感染ナンバー3
南米、インド、南欧などではリーシュマニアに注意

熱型
以前言われるほど役に立たない
数日おきの周期熱はマラリアを疑うが、持続熱の方が実は多い
デング、黄熱はbiphasic (saddle-back) pattern
だんだん微熱から熱が上がっていくstepladder pattern-腸チフス
比較的徐脈 腸チフス、リケッチア、デングなど
マラリア、リーシュマニアの混合感染でdouble quotidian fever(他に、gonococcal endocarditisなど)

神経ー髄膜炎や脳マラリアなど
肝腫大ーvisceral leishmaniasis(kala-azar), African sleeping sickness with chancre at the site of inoculation by tsetse fly、ウイルス性肝炎
脾腫ーマラリア、デング、レプトスピラ、typhus、ウイルス性出血熱、伝染性単核球症、HIV感染

リンパ節腫脹ー
全身性 HIV、伝染性単核球症、デング、visceral leishmaniasis, disseminated histo, cocci, blasto 
局在性 ツツガムシ病、野兎病、ペスト、African tick-bite fever、STDs

虫刺あと、cutaneous larva migrans、リケッチア、Rocky Mountain Spotted fever, Mediterranean spotted fever, endemic typhus (R. prowazeki)、皮膚リーシュマニア、梅毒、African sleeping sickness、腸チフス(実はまれ)、片山熱、swimmer or sea-bather’s itch (by avian schistosoma)、ドキシサイクリンと日光、黄疸(肝炎、黄熱、マラリア、デング出血熱、レプトスピラ、ウイルス性出血熱)

白血球減少ー腸チフス
血小板減少ー腸チフス、マラリア
anemia. デング、マラリア
血液、髄液の好酸球増加-Angiostrongylus cantonensis meningitis
低血糖ー重症マラリア(キニーネ?)

呼吸器症状はあるか?
リンパ節は腫れているか?
関節は腫れているか?
皮疹はあるか?
この4点に注目するだけでずいぶん絞れる

参考
CDC Health Topics A-Z: www.cdc.gov
CDC, general travel information: http://www.cdc.gov/travel/
CDC, Health information for international travel 2008 (Yellow Book): http://www.cdc.gov/travel/contentYellowBook.aspx
CDC Morbidity and Mortality Weekly Report: http://www.cdc.gov/mmwr/about.html
World Health Organization Health Topics A-Z: http://www.who.int/topics/en/
WHO Global Malaria Program, information about malaria: http://www.who.int/malaria/
Global Monitoring Emerging Infectious Diseases (Promed): http://www.promedmail.org
The International Society of Travel Medicine (ISTM): http://www.istm.org/
GeoSentinel (the global surveillance network of ISTM and CDC): http://www.istm.org/geosentinel/main.html
European Network on Imported Infectious Disease Surveillance (TropNetEurop): http://www.tropnet.net/
Eurosurveillance: http://www.eurosurveillance.org/
日本渡航医学会:http://www.travelmed.gr.jp/
海外旅行者のための感染症情報 厚労省:http://www.forth.go.jp/

アセトアミノフェンは無謬?

肝臓がOKで、飲み過ぎなければ安全無害と考えられ、頻用されてきたアセトアミノフェン。日本ではボルタレンが好きなドクターが多いですが、NSAIDSのあれやこれやのリスクが懸念されると言うことで、私を含めて米国でトレーニングを受けたドクターのほとんどはボルタレンには眉をひそめ、アセトアミノフェンをファーストチョイスにしていたと思います。

ところが、それが喘息との関連あり?というショッキングな論文です。鼻炎や湿疹についても関連があるといいます。まあ小児の話ですが。

The Lancet 2008; 372:1039-1048




可能性と妥当性

よく、「○○という可能性は否定できません」とか、「可能性はあります」と研修医がプレゼンします。しかし、この言葉には意味がありません。

可能性がある、といわれれば、大抵のことには可能性があるものです。明日隕石が落ちてきてみんな死んじゃう、、、、可能性はあるか?といわれればそうだけど、、、そんなことをいったらナンでも有りなので、思考停止に陥ってしまいます。これで検査漬け、薬漬けになるんですね。

明らかにグラム陰性菌の感染症が起きていると知っているのに、「万が一グラム陽性菌もからんでいるといけないから、バンコマイシンも併用」みたいなのが、「可能性は否定できず」がもたらす弊害です。もちろん、そういう世にも珍しい併存は日頃の行いが相当悪い人に何十年かに起きるかも知れない偶然ですが、偶然的事象は偶然的事象に過ぎず、それをいきなり考えるのは妥当ではありません。急性の事象が独立して次々と同時に起きるのは確率的に考えづらく、これがオッカムのカミソリです。

だいいち、それをいったら、「なんで真菌はカバーしなかったの?」「ウイルスは?」「原虫は?」みたいになってぐちゃぐちゃになってしまいます。可能性があるかないか、という議論が思考停止とぐちゃぐちゃをもたらすのは当然でしょう。

では、どう考えるか。「妥当性はあるか?」と考えればいいのです。可能性ではなく、妥当性。

例えば、午前中にある街で雑誌の万引き事件がありました。同じ日の午後、同じ街で3億円強盗があったとしましょう。そのときの3億円強盗の犯人と万引きの犯人が同一人物である可能性は?
 もちろん、可能性はあります。でも、妥当性はどうでしょう。普通、しないですね。雑誌の万引き。そこで捕まったら計画していた3億円強盗もみんなパーですし。この、普通ないよね、しないよね、というのが妥当性の検証的考え方です。

妥当性の検証は、「普通に考える」訓練でもあります。普通に考えられないと臨床判断を誤ってしまうのです。だから、可能性ではなく、妥当性。

武庫川女子大講演

 台風一過。昨日の東海での講演はキャンセルになりましたが、夕刻コンサルトが続出したので、けがの功名だったかもしれません。
 本日は夕刻より武庫川女子大で薬剤師さん相手に講演会です。ホストの森山賢治教授は島根医大11期卒で、私が学生時代にお世話になった第一解剖学教室のご出身です。学生時代はCELLの輪読会をごいっしょさせていただいたり、いろいろお世話になりました。

 さて、この講演会で薬剤師さんに伝えたいことは、簡単には以下のようなものです。

・抗菌薬にはたくさんの種類がある。一般名、商品名、略称などあり分かりづらい。
・抗菌薬の選択は菌=抗菌薬という1対1対応で考えられやすいが、実はそうではない。患者の性別、年齢、基礎疾患、アレルギー歴、今の症状、そして診療のゴールなど、さまざまな要素が複雑に絡み合って初めて抗菌薬が決定される。モニター上の培養結果と感受性試験の結果だけで抗菌薬を選んではいけない。ベッドサイドが重要である。
・TDMも患者のコンテクストが大事。バンコマイシンの血中濃度も絶対的な正解はなく、あくまでも患者の状態がそれを規定する。「正常範囲内」でも投与量を上げたり、「正常範囲以下」でもそのままにすることが多いのはそのためだ。
・米国では回診で薬剤師さんと一緒に患者をみる(こともある)。これが理想型。日本でも医師と薬剤師はもっと密なコミュニケーションを取らねばならない。
・日本は歴史的に感染症先進国だった。北里、志賀など偉人も多い。サルバルサンは歴史的な抗菌薬で1910年、エールリッヒと秦 佐八郎が開発しており、これはフレミングのペニシリン発見よりも何十年も早い。ちなみに秦の出身地も島根県(えっへん)。
・そのペニシリン発見後、臨床医学は劇的な、あまりに劇的な変貌を遂げる。「死の」病であった心内膜炎などの重症感染症が死なない病気になったのだ。ペニシリン以前の米国の医学生の手記では、自らが心内膜炎であると悟った彼が「私の余命はあと数ヶ月」とつぶやいた、と伝えている。ちょうど、1990年代のHAARTのようなインパクトか。
・当時ペニシリンはとても高価な薬で、貴重な「切り札」だった。
・幸か不幸か、日本では国民皆保険制度となり、ペニシリンは庶民でも使える抗菌薬に。感染症はあらかた治療されるようになる。出来高制なので医者はどんどん抗菌薬の適応を広げていく。製薬メーカーもそれに乗っかっていく。「死ぬ」病気をひっくり返すためだったペニシリンだが、「熱」に対してペニシリン、「のどいた」にペニシリン、「咳」「鼻水」「彼女に振られた」など、なんでもかんでもペニシリンを乱用するようになる。
・おおかたの感染症は不勉強な医師で対応できるようになり、1950−1960年代には、「感染症はもう終わった」といわれるようになる。臨床・研究両面で日本が遅れ出す時代である。
・が、その頃出てきたのが耐性菌。ペニシリン耐性の痳菌、ペニシリン耐性肺炎球菌が問題になり、MRSA、VRE、VRSA、MDRPなど百花繚乱の状態になる。
・米国では1960年代に米国感染症学会(IDSA)ができ、専門医養成の後期研修が行われるようになった。現在数千人の専門医が活躍している。しかし、日本で感染症の研修システムができたのは、なんと2007年まで待たねばならなかった。この遅れは甚大である。
・病院で感染症の専門家がおらず、各科の医師は「適当に」「なんとなく」抗菌薬を乱用する習慣が続き、日本の病院は耐性菌だらけである。また、患者の感染症も適切に治療されていない。この状態をひっくり返すことが急務になっている。

各論

・かぜには抗菌薬は不要

・中耳炎、副鼻腔炎も大多数は不要

・急性気管支炎も原則不要

・カルバペネムは切り札ではない。そう考えるとMRSA感染症やレジオネラを見逃すことになる。

・患者の正当な評価は大事。熱、CRP、白血球だけを見ていると失敗する。ベッドサイドが大事。CRP医者にはご用心。

・血液培養とグラム染色の上手な併用を。培養結果を治療すると「ばい菌を治療する」医者になってしまう。治療対象は患者です。無症候性細菌尿は原則治療不要。尿のカンジダも治療不要。喀痰培養のMRSAの大多数は実はMRSA肺炎ではない。

・抗菌薬はPKPDが大事。ペニシリンなどのβラクタム薬は大量頻回投与が基本。来月でるゾシンは最大4.5g4回投与だが、その成分のピペラシリンの最大投与量は4g。どうして????添付文書が間違っているからです。

・MICが低い抗菌薬が正しいとは限りません。MICの縦読みにご用心。

・抗菌薬は止めるタイミングも大事。CRPをあてにして抗菌薬をだらだら続けたり、逆に継続が必要なのに止めてしまってはダメ。よく、短期の使用が正しい、という言葉が一人歩きをしているが、抗菌薬の長期投与が必要になるケースも多い。キーワードで過度の一般化をする、「ワイドショー」的診療は御法度。

・人生と同じで抗菌薬の使い方の上手下手が如実に表れるのが、「熱が下がらないとき」の対応。最悪なのが、「明日から別の抗菌薬」「3日たっても熱が下がらないのでさらに別の抗菌薬」「やっぱりCRPが下がらないので明日からさらに別の抗菌薬」と抗菌薬の「一人サイクリング療法」を行うこと。

・抗菌薬が効かない、と思ったら、次にやるべきは「なぜじゃ?」と篤姫のように問いただし、考えること(ファンです)。頭痛に頭痛薬は下の下策です。それと同じですね。

講演会で紹介する、感染症の教科書です。他にもあるかもしれませんが。

・お奨めは、ハリソン。ここの感染症の項は本当に勉強になる。
・マンデルは非専門家にはあまり必要ない。
・サンフォードは必須。英語、日本語ありますよ。
・青木眞先生の「マニュアル」は、無人島に一冊だけ持って行け、と言われたら選ぶ一冊(もっとも無人島では役に立たんが、、、)
・最近でた、サークル図は傑作!
・私の本は、もちろん買って読んでね(せこい!)。

チャンピオンズリーグ08−09開幕 ManU対ビジャレアル

 ようやく欧州シーズンも開幕です。リーグ戦はずっと見逃していましたが、チャンピオンズリーグ開幕戦はがんばって見ました。最近睡眠時間が短い生活が定着したので、早起きもつらくなくなっています。

 結果は0−0で、ユナイテッドにとっては損な結果ととられやすそうですが、まあ初戦はそういうものでしょうか。ユナイテッドの槍のような縦パス主体の攻撃と、ビジャレアルの横パス主体の組み立てのコントラストが美しく、面白い試合でした。サッカーは点が入らなくても面白い(こともある)という代表例でしょう。イエローサブマリンのビジャレアルは、日本代表が模倣しやすいモデルなのでとても参考になると思います。ManUのまねは無理でしょうね。いつの日か、日本人でもManUでプレーしてくれる人がでてくるとうれしいですが、、、当分は無理でしょうか。

 エバンス、ナニの若手は前半活躍していましたが、後半息切れしました。P エブラががんばっていい動きをしていました。ガリー・ネビルはまだ本調子ではなく、ちょっと腹回りもでかすぎて窮屈そうでした。もう少し体を絞る必要がありそうです。パク・チソンも復帰直後でしたがいい動き、後半はばてましたが。Cロナウド、、、、すごすぎる、、、、あれで手術あけとは、、、この辺がぱっと見た感じの感想でした。ビジャレアルはあまり見ておらず、「リケルメいなくなったんだよな」「ピレスがいたんだ」と全くの無知ぶりでした。WOWOWとっていませんし。9番のFW(名前が出てこない)の動きが印象的でした。

適当に料理しながら

やっかいな会議や症例でほとほと疲れてしまった一日の終わりに。

snowy creek 2006.
悪くはないですが、それ以上に感想が出てきません。

今日は夕食にマヨネーズオムレツという娘のリクエストに応えてみました。意外においしかったです。あり得るんですね。

料理しながら

 ものすごく久しぶりにお休み。ということで、ファミリーの残務整理に追われてそれはそれで忙しい一日でした。

イトーヨーカドーで買った食材で料理をしながらいただいているのが、Crios 2006というアルゼンチンの赤ワイン。カベルネですが、悪くない、どころか実にいいです。コストパフォーマンス的にいうと絶品でした。

明日は月一回の亀田行脚です。また休みのない日々が続きますが、涼しくなったことですしがんばりましょう。

想像力の限界

北京オリンピックの水泳で8冠を獲得したマイケル・フェルプス選手がこう言っていたそうです。
「8冠は無理だという人もいたけれど、逆にそれが自分の想像力に火をつけてくれた。想像力の勝利だと思う」

 この言葉に、強い共感を覚えました。歴史に残る偉大なスイマーを捕まえて「共感」なんて不遜もいいところですが、大きく頷かされたのです。

 フェルプス選手に「8冠は無理」と言った人には想像力の限界があったのだと思います。それは、現在の枠組みにおける常識的なアドバイスだったのでしょうが、現在の枠組みにおけるアドバイスは将来における新しい価値を何も生まないのでしょう。

 「世の中のことを俺はよく知っている」としたり顔の人たちから「アドバイス」を受けることがあります。が、そういうアドバイスが的を得ていたり、役に立った、という記憶がほとんどありません。

 数年前、私はある厚生官僚に「日本は医療者の数が少なすぎる。医者の数ももっと増やすべきだ」と主張したことがあります。そうしたら彼は次のようなことを言いました。「岩田、お前は世の中の仕組みが全く分かっていない。今の日本で医療費を増やしたり医者の数を増やすことは絶対に無理だ。あり得ない」と。これが、彼の「想像力の限界」でした。この助言が妥当だったかどうかは、もちろん皆さんご存じの通りです。

 個人的な話で恐縮ですが、島根医大を受験しようとしていたとき、ある学校の先生からより偏差値の高い、よりネームバリューのある大学を受験するよう薦められました。私は思うところあって島根医大に固執したのですが、そのときその先生はいいました。「岩田、お前は世の中のことが分かっていないからそういうことをいうんだ。大学は名前が大事だ。そこがお前には分かっていない。将来後悔しても知らないぞ」。生憎(?)、島根医大を卒業して、そのことで1秒たりとも困ったことも後悔したこともはありません。それどころか、大学時代に出会った友人や恩師の存在が、自分の中では医師として一番大事な「コア」の部分を作っていると感じています。少なくとも、彼らの存在がなければ今の私はないし、鼻持ちならないダメな医者になっていた可能性が高いような気がします(今でも十分ダメ医者だ、という突っ込みアリ)。

 医局に入らず沖縄に研修に行ったときも「医局に入らず医者なんかやっていけるわけないだろ。一生後悔するぞ」と脅かされましたし(当時はそういう時代でした)、アメリカに臨床研修に行くときも、「アメリカ帰りは日本では活躍できない」と大反対されました(当時はそういう時代でした)。日本で感染症の後期研修システムを作るときも「今の日本で感染症のプロを育てるのは無理」と言われました。「大学病院ではまともに臨床も教育もできないから、行くのはよしておいたほうがよい」云々。全部、「想像力の限界」がもたらした「今の枠内」でのアドバイスで、全て的外れでした。

 彼らは「世の中」を熟知していると主張しましたし、事実そうなのかもしれませんが、それは「現在における世の中」の枠組みの中でのアドバイスであって、未来のそれを規定していません。むしろ、現在の常識をがっちり理解してしまうと将来の可能性を見通すことができなくなってしまうようです。これが、「想像力の限界」なんだと思います。現在の想像力の枠内で生きていくと、マイケル・フェルプスや短距離走のボルト選手みたいな人は絶対に生まれてこないのでしょう。

 私も、学生さんや研修医を指導するようになって、苦手な進路相談を受けたりします。中には、「そりゃ、無理やろ」と思うような遠大な理想を夢見る人もいて、「よしとけ」と言いたくなることもあります。でも、それは私の想像力の限界がもたらす余計なお世話な可能性が高いです。チャレンジする者の足を引っ張るのは、教育者として御法度な態度だと感じます。

 「世の中のことは俺の方が分かっている」と鼻息荒く、したり顔で訓話をたれるタイプの教育者の話は、話半分で聞いておくのが妥当かもしれません。それは未来の成長を妨げてしまうリスクを伴っています。「明日の日本のことはよく分からない。何が正しいのか、特に未来の正しいことは全く分からない。それでもあえてアドバイスするしたら、これかな」とおずおずと、謙虚に助言してくれる先輩の言うことの方が信頼できるかもしれません。これも、健全なlimitationのひとつなのでしょうか。

プロと努力

日経(9/6)より、陰山英男(立命館大)の言葉

 教師は教育のプロである。プロは結果で評価される。努力が評価されるのはアマチュアだ。私たちなりにがんばっていますという学校は多いが、それでは話にならない。

 うーん、陰山先生、私の回診を覗いてたんじゃないか?いや、これくらい誰でも思いつく常套句ということですか。

 これだけでは、寂しいかもしれないので、もう一つ好きな言葉を。

 努力した者が全て報われるとは限らん。しかし、成功した者は皆すべからく努力しておる
                                  鴨川源二

映画と感染症

 古い映画を見ると、当時の感染症のあり方が分かって面白いです(こういう映画の見方は反則かもしれませんが)

例えば、こないだ観た「鬼龍院花子の生涯」では、母親と主人公(夏目雅子)が腸チフスにかかり、隔離されます。みな鼻と口を袂で覆い、飛沫感染、空気感染対策です。主治医は「3人に1人は死ぬ難病」で、「隔離病棟で入院」が必要と説きます。大正時代(だったっけ)はそういう時代でした。

前に観た「酔いどれ天使」では、結核がすごい難病で、患者さんは自分のレントゲン写真を持参して主治医の所へ行きます。カンボジアでカルテを患者が所持しているのを思い出しました。

今通勤時に観ているやはり黒澤の「素晴らしき日曜日」では、アパートを借りに来た主人公に、「ここはだめ、冬はリウマチに、夏は発疹チフスになる」と言われます。発疹チフス!戦後の日本ではそういう病気もあったのですね。ノミが媒介するリケッチア感染です。

と、こういうデータを集めたら楽しい論文が書けそうです。暇があればね、、、

関係ないですが、先日移動中にたけしの「監督バンザイ!」を観ました。痛い映画でした。北野監督はギャグ映画はよしておいたほうが、、、、、(シリアスなのは好きで、マイベストは「キッズリターン」ですが、他にも好きな映画は多々あります。ファンの人は怒らないでください)。

テンプラニーニョが好き

 スペインワインが好きなのですが、これは空いた日はちょっといまいちでした。抜栓して3日目でベストになる感じ。

鬼龍院花子の生涯

ipod touchで移動中に見た映画

80年代の映画は駄作が多くて、敬遠していたのですが(このころが日本映画冬の時代ですね)、最近見直すとそれなりに味があって楽しめます。音楽もそうですが、80年代再評価って感じです。

で、標題の映画ですが、なかなか荒削りな展開ですが、それがまた魅力で面白かったです。仲代達夫が円熟の演技です。80年代にありがちな破滅的な映画になりそうですが、少し救いもあって、全体的には満足度の高い映画でした。

それにしても、夏目雅子って美人です、、、、

バーレーン対日本(W杯最終予選)

以前と違い、欧州のように長期戦になるW杯の最終予選。総合力と準備力が鍵になります。

今回は準備をきっちりしていたのは日本で、バーレーンは明らかに作戦負けでした。最初の日本のプレスに浮き足立ってしまい、自分のペースを見失ったのが2失点までの流れでしょう。一方、日本は気合いが入っていました。オリンピック男子の惨敗や準備試合の失敗が逆によかったようです。06W杯の準備試合にドイツと善戦して本番失敗したのとは対照的。だから、サッカーって難しい。

3−0になってバーレーンの縦槍がようやく機能するようになりました。1点目は速いボールのピンポイントのパスで、やややむを得ないくずされ方でしたが、2点目はまずかったです、、、あれで逆に日本はおたおたしてしまいました。1−3になることはあると思いますが、そこで慌てないことが、って言うのは簡単ですが、普通慌てますよね、ああなったら。

私が見ていてMOMは田中達也。遠藤、DF陣、GKも最後以外はがんばっていました。玉田と中村俊はもっとやれるはず。特に中村は中盤で簡単に取られることが多く、点こそ取ったものの、微妙な出来でした。

次はホームのウズベキスタンですが、まだ長いので、勝たないといけない、みたいな妙なプレッシャーをメディアがかけないといいですが、、、、それだとフランスと同じになっちゃいます。

サンダーバード

 たまたま、朝時間のあるときにテレビをみていたら、ケーブルでサンダーバードの第一回がやっていました。ディテールの質の高さにびっくりです。こういう細かいところに私って感動してしまうのですね。ストーリーは突っ込みどころ満載でしたが。

指導医養成ワークショップ

 今度、某日某所で行われる指導医養成ワークショップの話題をまとめてみました。
==================================
 先日、うちの職員と話をしていて面白い発見をしました。彼女は阪神大震災を体験して、大変な思いをしましたが、それ以来「ちょっとの揺れ」でも敏感に反応してしまうのだそうです。ところが、彼女の弟は全く逆で、「あれだけ大きな揺れを経験したのだから」ちょっとやそっとの揺れでは全然動じなくなってしまったのだとか。

 このように、全く同じ体験をしてもとらえ方は完全に逆になってしまうことはあるのですね。講演後のアンケートを採っても、同じ内容なのに「テンポがよくてよかった」「早すぎてもっとゆっくりしゃべってほしかった」と逆の感想が返ってくることがあります。

 「医学教育」の教科書は、一義的に「こういうことを言うと研修医はこう感じるから止めた方がよい」的なアドバイスが多いですが、眉につばをつけて聞いた方がいいんじゃないか、と思います。

 例えば、指導医が権威的な態度を取っていると、研修医も権威的になる可能性があります、、、、という記述をある医学教育の教科書で見つけたことがあります。しかし、それはおそらくは、定量的な心理学的研究から得られた「傾向」に過ぎず、全ての研修医がそのような感じ方をするとは限りません。たぶん、「ああはなりたくないな」と権威に対して嫌悪感を抱く研修医も少なからずいるのではないでしょうか。なんとならば、反権威的な感情は、権威の中でこそ生まれてくるからなのです。

 専門家は、しばしば定量的な心理研究を(それもかなり限定された条件下での、ですが)ものすごく引き延ばして一般化し、教科書化しますが、それには要注意です。そのような仮想空間で作り出された「エビデンス」は現場の空気に全く合致していない、要するにapplicableではない、ことが多いのです。

 しばしば引き合いに出す例は、「叱り」と「虐待」の違いです。欧米の教育専門家は、「虐待にあった子どもは自らが虐待者になりやすい(そういう「傾向」がある)。だから、叱るのはよくない」とよく考えると全然論理的でない台詞を平気で口にします。この文章が論理的、原理的に間違っているのは明らかです(つまり、主義主張、意見の違いとは関係なく間違っている)から、興味のある人はなぜそうなのか、構造的に検討してみてください。

 もちろん、このことから、研修医は叱りとばしていればいいのだ、という結論にはなりません。問題は、叱るか叱らないか、ではなく、「いつ」「どのように」叱るべきか、という観点です。つまり、目的・アウトカムに準拠して、目の前のあるキャラクターの研修医のある感情的、体力的状態を鑑みて、どう接すればいいのか、という微妙な対応となります。その状態によっては論理的な言及が有効ですし、感情的なサポートが有効ですし、叱咤激励が有効ですし、黙って見守ることこそが有効なのかもしれません。いずれにしても、どの方法がベター、というのではなくて、いつ、どの手段をとるのが、が大事になります。

 コーチングではペーシング、というスキルを使いますが、上記のような教育のしかたも一種のペーシングといえましょう。相手のあり方に合わせてこちらの教育方法や態度も変えていき、ゴールを見据えていくという部分においては。

 医療の世界においては絶対善や絶対悪が存在しにくく、その意志決定や振る舞い方の是非も賛否両論で、時代においてもどんどん変わっていきます。キャラクターも大事で許される行為と許されない行為は、その人のキャラによって決まってくるところもあります(許されるキャラっていますよね)。だから、キャラというのはとても大事なのですが、そのくせ教育の世界では「人格攻撃をしてはならない」と教条的にのたまいます。もちろん、人格を攻撃するのは御法度ですが、しかし人格≒キャラのもたらす意味は、医師という仕事の中では大きいものなのです。そこを無視して「キャラにはタッチせず」の態度を決め込むのは、あまりにも実態からかけ離れているのではないでしょうか。キャラは否定してはならないですが、キャラへの働きかけはむしろ必然です。だってそこに厳然としてあるものなのですから。

 所詮、指導医が研修医にできることは限られています。幻想や伝説、えせ科学とはおさらばして、しなやかに柔軟に、程よい熱意を持って考え直してみる必要がありそうです。

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