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2008年11月

B級以上、A級未満、、、、

おなじアルゼンチンのワイン。ピノノワール100%なのですが、ブルゴーニュなんかと違い、香りがよくてとても美味しい。少し高め、、、、グラス一杯で結構満足できます。

オランダとパンデミックフルー

 世界でもっとも感染症に対する考え方が進んでいる国の1つがオランダです。もっとも遅れているのが日本です。オランダの感染対策専門家である友人のテアダーハさんにマニュアルをみせてもらいました。2年も前に出来ているのにとてもよくできています。本当はすごく分量が多いのですが、病院関連の所だけ抜粋します。とても具体的なので分かりやすい。どこぞの国みたいに「臨床的に新型インフルエンザを疑ったら」みたいな意味不明な文言はいっさいなしです。骨子としては、パソジェンではなく患者で分ける、という考え方で、これは米国や香港もそういう流れだとIDSA/ICAAC総会のワークショップで言っていました。日本も健全な方向転換が出来るでしょうか。

新型インフルエンザ病院内対策案

2006年オランダRIVMガイドラインを参照

・ガイドラインは、実際の地域のアウトブレイクの有り様に応じて臨機応変に適応・修飾しなくてはならない。
・軽症例は入院の対象とならない。患者は家庭で可能な限りケアを受けるべきである。
・その場合、患者・家族には症状が増悪した場合の対応法を教えておく必要がある。具体的には、ただちに自らのかかりつけ医や地域の救急外来(あるいは発熱外来)に電話連絡するべきである。この場合、各医療機関はそのバックアップとしてインフルエンザ専門家のアドバイスを受けても良い。
・家族の状況は保健師などが十分に把握し、必要に応じて往診。
・ケアする家族が存在しない(独居)でも軽症であれば家庭で待機可能。症状が増悪した場合に入院の対象となる。かかりつけ医が入院の適否をアセスする。
・長期療養施設に入所中のものがインフルエンザに罹患した場合も必ずしも急性期病院に入院する必要はない。重症例、症状増悪時に入院とする。
・ベッドの空き具合に応じて入院の適応はその都度変更しても良い。
・ベッドが枯渇した場合は、入院の適否は専門家の判断にゆだねられる。その時は、地域でトリアージ委員会を作り、入院の適否を決定する。
・患者が将来重症化するかどうかを正確に予測することは不可能である。この前提でトリアージを行う。
・地域のトリアージ委員会は国の入院基準を遵守する。この入院基準は流行の程度に応じて刻々と変化させる。
・入院基準は以下の情報を参考にする。
市中肺炎のリスク因子はあるか、、、
 患者の年齢、病歴、診察所見 脈拍125/分以上、呼吸数30回/分以上、収縮期血圧90mmHg以下、体温が35℃以下か40℃以上、意識障害(時、人、場所)など。
 リスク因子:年齢、施設入居者、悪性疾患、心疾患、脳血管障害、腎疾患、肝疾患、
 血液検査や画像所見の増悪

インフルエンザのリスク因子はあるか
 ・65歳以上、妊婦、COPD、重篤な心疾患、腎疾患、免疫抑制療法、血液疾患、糖尿病、アスピリン服用者

入院へのステップ
ステップ1 リスクを見積もること。電話か外来で。
・年齢 50歳以上ならグループ2−5
    50歳より若ければグループ1 で、もし基礎疾患があれば、グループ2−5
    診察上、上記の異常があればグループ2−5

グループ1.50歳未満。基礎疾患なし。診察上上記の問題なし。臨床的に入院不要

ステップ2
血液検査、レントゲン写真

グループ2:50歳以上、他にリスクなし 臨床症状増悪なければ入院不要

グループ3;年齢関係なく、リスク因子があるか、診察上の異常あるか、あるいは血液検査やレントゲン上でも少なくとも1つの異常あり。
臨床症状増悪なければ自宅療養。

グループ4:年齢関係なく、2つ以上のリスク。臨床症状に応じて入院考慮

グループ5:50歳以上で、基礎疾患、診察、検査のいずれでも異常あり。入院。

予防措置
・ワクチンは有効だが数に限りがある
・抗ウイルス薬はパンデミックでなければ周囲への曝露後予防として使用可能
・パンデミックになれば抗ウイルス薬は患者の死亡を防ぐ治療薬として用い、予防的には使用しない。

一般的な措置

患者へのアドバイス
・患者に近づくな
・自分がインフルエンザに罹患したら家でじっとしていなさい
・鼻と口をマスク、ティッシュ、ハンカチなどで覆いなさい。
・手洗いを励行
・自分の鼻や口をみだりに触らない。

プライマリ・ケア
・パンデミック時も急性疾患には継続的に対応
・慢性的な問題はできるだけ先送り
・インフルエンザ様症状の初期対応はプライマリ・ケアのセッティングで
・インフルエンザ様症状のあるものと他の患者を区別する。待合室を共有しない。
・インフルエンザ様症状の患者が増加したらインフルエンザ様症状専用外来を設ける。

入院患者
・インフルエンザコントロール/ケア施設を地域に設ける。その役割は
A 一般外来終了後のインフルエンザ様症状患者ケア
B 緊急時の対応と入院
C コールセンター。かかりつけ医からの相談を受ける。患者からの質問を受けても良いかも。一般的な質問はホームページか、録音電話サービスに回すという手も、、
D サーベイランス

職員の枯渇
職員が枯渇した場合、医学生、看護学生、引退した医師や看護師、ボランティアに助力を求めることができる。

癒しとしてのワイン

風邪でダウンです。仕事がはかどりません。こういうときはしっかりカベルネで癒しのワインです。アルゼンチンのワインでした。

論文あれこれ

好中球減少時の発熱患者でのPKPDを検討した論文。まだ臨床現場でいきなり使える情報は少ないですが、、、、
Lancet Infect Dis 2008;8:612-

ICUの敗血症患者(の一部)で5日後のプロカルシトニンで抗菌薬を減らせないか、という論文。興味深いので日本でも検証してみたいと思いました。
Am J Respir Crit Care Med 2008;177:498-

これは有名な論文ですが、抗菌薬の副作用で救急室を訪れる患者は多い、という論文。米国も日本同様、無駄な抗菌薬使用が多いようです。
CID 2008:47:735-

W杯予選 カタール対日本

W杯予選 カタール対日本

 前半は上出来。出だしこそ押し込まれましたが、徐々に自分たちのペースに。中盤の構成力がよいし、前線の3人がうまく機能していました。田中達也が裏に走り込んで「らしい」先制点。その後もチャンスを作りました。やはり中村俊輔は本調子からはほど遠い出来。あと、ディフェンスも、ちょっとミスが多かったです。
 後半は玉田が見事なミドルシュートで序盤から得点。前半はチャンスメイクこそできていましたがシュートチャンスがなかったのでうれしかったでしょう。その後は、押し込むカタールとカウンターアタックの日本、という点差を考えると予想通りの展開。こういう展開だと大差が付きます。

「ドーハの悲劇」の時は、僕は学生で、学園祭の準備をしていました。ショックでした。あのころはワールドカップに「でる」のが夢の時代でした。なんか遠い昔の話みたいです。このまえ、神戸大の学園祭の企画に参加しましたが、学生さんたちが一所懸命準備をしているのを見て懐かしく思いました。

 いまの日本代表はあのころよりずっと強くなったと思います。ときどき「あのころのがむしゃらさが足りない」みたいに言われますが、今からビデオを見直すと、あのころはがむしゃらさ「だけ」でした。Jリーグの黎明期はがむしゃらさだけで突っ走った時代でした。僕は当時の代表選手には思い入れは強いですし、大好きですが、冷静に見ると、どう考えても今の日本の方が全然強いです。ヘンな懐古主義で若手の選手をこき下ろすのはよろしくないと思います。これは、医者についても言えることですが(僕が初期研修医の頃より、今の研修医の方が全然優秀だというのが個人的な意見です)。

 そういえば、サッカー界のお偉いさんが、チェイスをしない代表選手を批判したそうですが、的外れな意見です。もちろん、そういう汗かきタイプの選手もいていいですが、そんな選手ばかりでも問題です。そうやって走り回って消耗して、いざというときシュートが入らない。それで「決定力不足」と批判される。全く、理不尽な話です。2006年のワールドカップがまさにこのパターンだったではないですか。

 欧州リーグのトップストライカーでも確かにカルロス・テベスのように走り回るタイプもいますが、多くのストライカーはぶらぶらしていて、いざというときだけ決定的な仕事をするタイプが多いと思います。要は、結果を出せばよいのです。

 それにしても、風邪をひいてしまい、ここのところ睡眠時間も削られて、こんな試合見ていていいのかなあ。

NHKの考え方、使い方

年に2回語学関係の試験を受けることをノルマにしています。この日曜日はフランス語検定4級を受けました。まあ、そんなに難しい試験ではないのですが、このような足かせをつけないと勉強しないのです。私は根っから怠け者だと思います。3月には中国語の試験を検討中。

NHKの教育テレビとラジオ第二放送のファンです。今、はまっているのがテレビの

「美の壺」
http://www.nhk.or.jp/tsubo/

小粋なジャズと日本美術の融合が何とも素晴らしい。土曜の早朝はこれで決まりです。私は5時15分からこれをよく見ています。

ラジオは、各種語学番組を録音して、1.5倍にして聴いています。フランス語、スペイン語、中国語をやっていますが、なかなか毎日やるのは大変です。あと、実践ビジネス英語も、これは大学生の時から間欠的に聴いています。杉田敏さんの大ファンなのです。こちらは1.5倍だと速すぎるので、1.3倍にして聴いています。

感染症行政の仕事に足をつっこむと、「俺の払った税金がこんな国にこんなふうに使われるのはもったいなくない?」と思うことが多々あります。けれど、NHKの受信料を払うことは全然苦になりません。元は取ってまっせ。

最近の一句

非効率 集めてできし 国立大学

季語なし、、、

慢性期の感染症治療

昨日は、以下の内容で長野県の伊那でお話でした。紅葉がきれいでした。

慢性期医療における感染症治療

日本の感染症診療。その問題点

 日本の場合、初期診断に関連した科のドクターがその後のケアも継続することが多い。精神科病棟では精神科医が高血圧や糖尿病の管理を自ら行うことが多い。脳梗塞、脳出血におけるリハビリテーション病院でも脳外科医や神経内科医がそのまま病棟管理を行うことが多い。感染症診療も、また同様であり、内科系・外科系問わず、臨床医療に従事しているほぼ全ての医師が感染症診療に関与し、抗菌薬を投与する。およそ臨床家で感染症と全く無縁でいることはほとんど不可能である。
 しかしながら、彼らのほとんどはきちんとした感染症のトレーニングを受けたことが無く、「見よう見まね」「医局の習慣」「思いつき」「何となく」感染症を診断し、治療しているのが現状である。長い間、学生教育においても卒後研修医教育においても妥当な感染症診療の教育は行われてこなかった。
 急性期・慢性期問わず、現在の日本における感染症診療は、端的に言うと「貧弱」である。その根拠は正しい診断の不在、正しい治療の不在、という2点に他ならず、その原因は妥当な教育の不在、という分かりやすい理由で説明できる。
 一方、専門家たる感染症のコンサルタントの数は圧倒的に少なく、ほとんどの病院には感染症の専門家を有しない。また、感染症のコンサルテーションを行う習慣もない。慢性期医療においてはなおさらである。日本感染症学会は、全ての病院に感染症のプロが必要、という観点から必要な感染症専門医数を3000−4000と見積もっているが、現存する専門医数は900人弱である。しかも、その大半は感染症の臨床研修を受けずに専門医資格を獲得している。
 その慢性期医療においては患者の大多数は高齢者で慢性基礎疾患を一つあるいは複数抱えており、ポテンシャルとしての感染症のリスクは高い。高齢者の感染症は、症状が非特異的で診断が難しい。これが診断の遅れ、治療の遅れ、予後の増悪につながる。
 しかし、「診断が難しい」がいつの間にか「診断努力は無意味」という誤謬に換言され、診断努力のないままに抗菌薬が垂れ流されているケースを、散見する。これは急性期、慢性期の区別無く普遍的な現象である。また、日本の医療は伝統的に検査重視で丁寧な問診と診察をないがしろにしてきた部分があり、「慢性期では検査できないから」という時点で診断可能性を否定してしまうケースもある。
 従って、基本的な感染症診療の原理・原則、診断と治療といった基本メソッドをまず学び、与えられたセッティングに応用することが大切になるだろう。

格に入りて格を出でざる時は狭く格に入らざる時は邪路に走る
格に入り、格を出でて初めて自在を得べし
 芭蕉

感染症の診断

 慢性期医療のポピュレーション、特に高齢者が多いポピュレーションでもっともコモンな感染症は尿路感染である。一方、もっとも予後が悪いのは肺炎であろう。また、褥瘡感染は起きやすく、しばしば見逃されている。ーー>「原因の分からない熱です」「ひっくり返したら診断つきました」のエピソードはまれではない。コモンなものはコモンなので、こちらからアプローチする。
 感染症治療の原則は、感染症診断である。診断をないがしろにして正しい治療はあり得ない。 例えば、熱発患者の場合、きちんと診察することは大事である。長期療養施設の患者が施設内で発熱した場合、その原因として考えられる可能性(鑑別疾患)は実は10ちょっとしかない。その多くは感染症であるが、感染症でない原因でも患者は発熱する。感染症の場合、多くは尿路感染か肺炎であり、時に褥瘡感染、カテーテル感染、副鼻腔炎、前立腺炎などが起きる。偽痛風発作、薬剤熱などもコモンな熱の原因である。これらはたいてい、丁寧な診察とちょっとした検査で診断が付くことが多く(つかないこともあるけれども)、血液検査は必要としないことすら多い。
 感染症の診断は、まず感染臓器を確定することから始まる。「炎症の有無」から始めることではない。「炎症」の存在をCRPや白血球数で確認しても、正しい抗菌薬は選択できない。一部の教科書では今でも「発熱患者のアプローチ」で、まずCBC,CRPを、と書いてあるが、明らかな誤謬である。

White blood cell count is often ordered inappropriately and has almost no value as a screening test.....

Wallach J. Interepretation of Diagnostic Tests. 8th ed.

 慢性期のセッティングでまず考えるべきは、肺炎、尿路感染、褥瘡感染、必要ならライン感染である。そこに焦点を絞って診察を行い、簡単な検査をする。血液検査はしているのに尿検がされていないケースは、意外なほど多い。
 高齢者の感染症はしばしば「意識障害」で発症する。発熱は無いこともしばしば。低体温にも要注意。急性発症で意識障害がある場合、血圧が高ければ頭蓋内疾患を考える。血圧が低めなら感染症をまず考え、頭部CTの前に血液培養など感染症の検査を考える。

尿路感染

 慢性期のセッティングでは必ず鑑別に入れる。頻度は高い。
 CVAノックペインは出ないことも多い。「CVA陰性なので尿路感染は否定的です」というコメントを何度も聞くが、「感度の低い検査(診察)で診断は除外できない」という大原則を無視している。
 尿路感染の診断は、尿のテステープと培養があればOKで、採血は必ずしも必要ない。
 尿培養は、de-escalationに有用だし、施設のアンチバイオグラムを作る上でも重要。
 基本的に予防的抗菌薬は意味がない。無症候性細菌尿は治療しない。症状がない患者の尿検査や尿培養をやってはいけない。
 尿カテーテルは可能な限り早期に抜去する。漠然とデバイスを留置・放置してはいけない。
 尿から生えた黄色ブドウ球菌やカンジダは原則治療の対象にはならない。そこに菌がいることと、治療の対象かどうかは、別問題である。

肺炎

 慢性期医療の患者は、一般に誤嚥のリスクが高い。
 ただし、誤嚥のリスクが高い、という理由で予防的抗菌薬を使用してはならない。予防的抗菌薬はむしろ肺炎のリスクを高めてしまう。
 一過性の酸素飽和度の低下、一過性の微熱、一過性のCRP上昇を抗菌薬で治療してはいけない。
 化学性肺臓炎は抗菌薬不要。かならず区別すること。明らかな誤嚥のエピソードがあり、全身状態がよければ24時間経過観察で抗菌薬は不要。全身状態が悪ければ広域抗菌薬で治療。入院患者の口腔内は院内感染の原因菌。誤嚥性肺炎=ダラシン、という固定観念で治療すると失敗する。
 レントゲンとCRPで診断してはいけない。必ず病歴が重要
 実は、肺炎球菌が原因としては最多。必ず培養は出そう。
 グラム染色はお奨め。低コストで迅速。慢性期医療のセッティングにぴったり。3%食塩水で、うがいした後に吸入すれば痰はとれることが多い。
 治療効果の判定にレントゲンやCRPを使用してはならない。あくまでもベッドサイドで判断し、治療期間は一定の期間最大量用いるのが基本である。

褥瘡

 褥瘡があるだけで患者の死亡率が上がる。
 問題は、褥瘡は骨に近いところで発生することが多く、骨髄炎を合併していることがある。骨髄炎を合併していると治療はきわめて困難。
 菌血症を合併すると死亡率は50% で、褥瘡感染は恐ろしい。
 診断は局所の炎症所見。発赤、膿の存在、疼痛、熱感などで判断する。慣れれば褥瘡感染の診断は容易である。何よりも褥瘡感染の可能性を考えることが大事である。「大穴」があくまで放置されている残念なケースがある。
 治療のポイントは抗菌薬とデブリを。仙骨部の褥瘡感染は黄色ブドウ球菌、腸内細菌、嫌気性菌をカバーするのが基本。ユナシン・オーグメンチンあたりが選択されることが多い。シプロ・フラジールも慢性期のセッティングでは有効。
 皮膚や褥瘡そのものの培養は意味がない。膿は綿棒ではなく、直接注射シリンジで採取するか、嫌気ポーターを使って提出する。
 やはり予防が最大の武器。丁寧な観察、栄養状態の最適化が鍵。

結核

 微熱、咳、数週間続く、がキーワード。体重減少はほぼ必発
 結核の分類は簡単。移る結核か、移らない結核か。学会分類はあまり意味がない。
 ニューキノロンが命取りに!熱、咳で漠然と抗菌薬を使用すると、痛い目に遭う。
 過去の結核は、現在の結核を否定しない。「陳旧性結核があります」とレントゲンを見て、そこで現在の結核を否定してしまう誤謬は珍しくない。むしろ、過去の既往歴はリスクを高くする。
 臨床的に活動性結核を疑った場合、ツベルクリン反応やQFTの有用性は限定されている。患者に対してよりも医療スタッフに用いる方が合理的かもしれない。
 高齢者でも、ツ反陽性者にINHを飲ませる価値はある。飲むなら、9ヶ月。感染症法で報告すれば公費で使える。ツ反は2ステップで。

疥癬

 ヒゼンダニの感染である。高齢者、慢性期医療のセッティングで皮疹があれば、まず疥癬がないかどうか確認することが大事である。しばしば見逃されており、施設内アウトブレイクを起こしている。
 疥癬トンネル、紅斑、丘疹、全身の掻痒感が特徴。夜間にきつい!
 crusted scabies(ノルウェー疥癬)は免疫抑制者に。乾癬のような皮膚炎を起こす。
 通常の疥癬であればダニの量は10−15。ノルウェー疥癬では100万以上と、圧倒的に違う!
 日本で疥癬の治療を行うのは大変である。適切な治療薬がなかなか手に入らないからである。
 リンデン、ペルメトリンクリームが治療の基本だが、前者は医療機関で自作しなければならない。ペルメトリンは世界中で使われる塗布剤で副作用も少ないが、日本では入手できない。
 イベルメクチン内服も。こちらは効果が高いが、皮疹や消化器症状などの副作用が問題。
 ムトウハップ(硫黄製剤)はだめです!
 治療後24時間は感染性が残っている。
 治療後2−4週間で再検査した方がよい、という専門家も。

偽膜性腸炎

 慢性期医療において、患者はしばしば下痢をする。その中で、もっともコモンなものの一つが偽膜性腸炎だ。
 原因は嫌気性菌であるClostridium difficileである。difficileとはフランス語でdifficult。培養の難しい菌である。従って、診断は便培養ではなく、CDトキシン検査で行う。
 relapse, recrudescence が多い。
 抗菌薬が入っているとき、終了直後の下痢熱ではこれを考える。ただし、抗菌薬曝露が無くても発症することがある。
 治療の第一選択薬はメトロニダゾールであり、高額で耐性菌が問題になるバンコマイシンは第二選択薬。
 一番大切なのは、抗菌薬をストップすること。必要ない抗菌薬を使用しないこと。
 再発時の抗菌薬は同じメトロニダゾール。

倫理的事項も

 感染症=抗菌薬という単純図式は本当か。
 例。末期の膵癌、胆管癌の胆管炎
 熱を下げた後、患者に何が提供されているのか、今一度考えてみる必要がある。
 トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント(医学書院)では、終末期医療(ここではターミナルな癌)においては抗菌薬は用いない方がよい、とコメントしている。
 終末期医療において、患者は最後は肺炎で亡くなることが多い。低酸素血症は苦しく、CO2ナルコーシスは苦しくないという。十分な酸素とモルヒネは有効。

文献
Mathei C et al. Infections in residents of nursing homes. Infect Dis Clin N Am 2007;21:761-772
Smith PW and Rusnak PG. Special Communication. Infection prevention and control in the long-term-care facility. Am J Infect Control 1997;25:488-512

遺産か、負債か

Posterity! You will never know how much it cost the current generation to preserve your freedom. I hope you will make good use of it. John Quincy Adams, 6th US president

クインシー・アダムズは先人の功績のおかげで今のあなたたちがあるのですよ、というちょっと嫌らしい言い方をしています。でも、アメリカでも日本でも、自信を持ってこんなことを言える人がどれだけいるでしょう。

医療の世界では、むしろあるべき資産を使い尽くし、後生には荒れ地しか残っていないような、悲惨な事態が起きないと良いのですが、、、、それとも1回崩壊しないと分からないのでしょうか、私たちは。

エイズに「治癒」はあるか?

ない、というのが通常の考え。それに対する反証(かもしれない)の話。さて、どうなるか。

HIV、HIV、HIV、、、

大阪で年間新規HIV感染者が200人を越えている、という報道(11月12日日経夕刊)。兵庫県も全国上位に入っているそうです。

でも、2007年兵庫県は年間26人。私が神戸に来て半年ちょっとですが、このペースだとかなり多いような、、、、、患者さんが来てくれるのは全然苦にはなりませんが、患者さんが増えるのはもちろん良いことではありません。

もっともっと診療環境を良くして、患者さんが受診しやすいように改善したいです。

味のある、、、、

2007 CABERNET SAUVIGNON RESERVA
BARON PHILIPPE DE ROTHSCHILD MAIPO CHILE

久しぶりにB級ワインの世界。南アフリカとチリがやはりねらい目ですが、円高でこれからは欧州やアメリカのワインも安くなるのでしょうか。後味のよいカベルネ。

大陸を移動する鳥インフルエンザ

野鳥が大陸をわたって鳥インフルエンザを運んでいくことはない、と最近の総説論文にも書いてありましたが、これを反証するものです。反証はこの業界の常なのです。

新興感染症対策の最大のポイントは、既存の知識に依存しすぎないことです。ガイドライン、マニュアルをいくら整備しても新事実が出てきたらしなやかに方針転換できる頭のやわらかさと腰の軽さが必須だと思います。

ティアニー先生の診断入門

やっと買って一息で読んで、すぐにうちの研修医に貸しました。検査からアプローチしている医療機関には強くお奨め、必読です。ティアニー先生、うちの病院にも来てくれないかなあ。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=62741

B型肝炎ガイドライン2007

長い長いガイドラインですが、知識の整理のためにがんばって読みました。うん、すっきりした。

AASLE guidelines on chronic hepatitis B 2007

・世界にはB型肝炎キャリアが3億5千万人いる。
・慢性キャリアの定義は、HBsAgが半年以上陽性の人のこと
・頻度が高い、中程度、低い地域がある。それぞれ人口の8%以上、2−7%、2%以下のこと。
・感染は垂直感染、血液感染、性交渉による。頻度の高い地域では密な接触も感染の原因になる。
・HBVは体外でも長く生き続ける。
・慢性キャリア化しやすいのは垂直感染や免疫抑制者
・スクリーンの対象はハイリスク患者だが、
「スリランカ以外のアジア全部!」とある。はい、日本人全員です。
・スクリーニングはHBsAgおよびAbが通常。HBcAbを使っても良い。
・HBc抗体「だけ」が陽性になる理由は様々。
1.慢性感染
2.治癒後で表面抗体がでていない。
3.偽陽性(よく、日本の教科書にはこのことが書かれていない。例えば、HCV抗体陽性、PCR陰性のときに「既感染」と決めつけてしまう記載が多い。日本の医師は、検査は間違いを犯さないと信じている人が多い、、、、とくに大学病院)。
4.急性期でウインドウピリオド。HBcIgMを測れば分かる。
・酒を飲むと肝硬変が進む。当たり前。キャリアの飲酒は極力避ける。
・キャリアにはカウンセリングが必要。他者への感染をさせない。性行為を行うパートナーにはワクチンが必要。あるいはコンドーム。妊婦では出産時に免疫グロブリンとワクチンを新生児に。95%以上の効果あり。
・医療従事者でe抗原陽性の場合は「曝露をしやすい手技をやらない」とCDCは推奨している。微妙な言い回し。
・ヨーロッパではDNAレベルで医療従事における許容度を決めているらしいが、そのカットオフ値は200-20000/mlとばらばら。
・HBcのみ陽性の肝移植ではなんと感染率75%!移植の場合は抗ウイルス薬を飲んだ方がよい。期間は決まっていないが、6-12ヶ月?肝移植なら生涯か?HBIGは?
・透析患者は毎年HBV✓をしたほうがよい。ワクチン接種後も免疫が下がることが多いから。
・genotypeはAからHまで8種類。地域によって流行が異なる。
・予後が良いのがB?その他のジェノタイプについては不明。Aと
Bではインターフェロンの反応がよく、CとDはいまいち。別のスタディーではAのほうがBよりよかった(NEJM 2005;352:2682-)。経口薬ではとくにそういうデータなし。
・大多数の患者では、感染初期にDNAレベルとe抗原が上がり、減り、そしてe抗体ができる。
・垂直感染ではDNAが高くてもトランスアミラーゼは正常なことが多い。免疫寛容があるためという。
・e抗原の消失は年間8−12%。免疫抑制があるとさらに低い。
・高齢者、ALT高値、ジェノタイプBかCだとe抗原クリアランスの率が高い。
・10-20%のキャリアが慢性肝炎となる。キャリアのフォローは生涯必要。
・毎年0.5%の確率でHBsAgは消える。抗体もたいてい、できる。しかし、そのうち半分は低レベルでDNAを検知できる。HCCもたまにおきる。HBVが体からなくなっていないことも多いのだ。
・肝硬変のリスクは、高齢、ジェノタイプC、DNA高値、アルコール、HCV、HDV,HIV感染で増す。アフラトキシン、喫煙(!)もリスク。
・HCCのリスクは男性、家族歴、高齢、HBe抗体から抗原への逆戻り、肝硬変、ジェノタイプC、コアプロモータ突然変異、HCV共感染(!)である。
・20-50%のHCCは肝硬変がない。
・HCVとの共感染は10-15%。日本ではもう少し低い?
・肝炎は重症化しやすい。肝硬変、HCCの頻度も高い。
・HDV。サテライトウイルス。地中海、南アフリカに多い。HDVが追加で感染すると、慢性化しやすい。BもDも慢性化するのが特徴。
・HIV共感染。HBVのDNAは高値となりやすい。e抗原のセロコンは起きにくい。肝疾患の予後も増悪。IRISにも注意。CMVやマックでも肝機能は増悪。
・s抗原が出ないこともあるので、HIV感染者では「必ず」c抗体も検査すること。
・CD4は200以上あった方がHBVワクチンは効きやすい。
・PCRは大事。DNA低値を治療するのは非現実的かも。根拠は甘いが、20000コピー以上を慢性肝炎と定義している。
・トランスアミラーゼの閾値はALTで。男性は30,女性は19という意見も。
・肝生検は、ALTが高くてDNAが2万以上の時の「オプション」。そして治療。
・ALT高くてDNA2000-20000が続けば、治療。
・ALT正常、DNA2000以下、e抗原陰性、e抗体陽性なら、様子見。
・e抗原陽性、ALT正常なら経過観察
・ALTちょい上がり、e抗原陽性なら、持続する、40歳以上などなら治療。
・超音波「か」AFPが定期的に推奨されている。両方ではない、、、
・治療は、biochemical(BR),virologic(VR),histologic(HR)に決める。
・耐性が出やすいのがラミブジン、出にくいのがエンテカビル、その間がアデホビル。
・多剤併用療法はまだ効くとはわかっていない。

・インターフェロンαは限定された患者でないと効かない。
 e抗原陽性かつALT高値。ALT正常だと効果は小さい。アジア人でも同様。
 e抗原陰性。効果は38-90%。ただし、再発は多い。24ヶ月の治療が推奨か。
・1回治療失敗したら、次の治療も失敗しやすい。
・e抗原陽性の安定した肝硬変には効果あるかも。ChildB,Cではほとんど効果なし。
・長期予後についてはコントラバーシャル。
・皮下で5MU毎日か、10MUを週三回。16-24週の治療がe抗原陽性では一般的。陰性なら最低12ヶ月、24ヶ月という声も。
・たぶん、pegIFNも同様に効果あるか。180mcg週一回。ラミブジンとの併用療法も。
・ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、telbivudineの腎機能低下時の投与量もガイドラインにあり。便利。
・telbivudineはラミブジンと耐性を共有する。耐性は出来やすい。臨床効果は高いのに。
・テノホビルはアデホビルと構造がにている。効果も同様らしい。
・clevudineも長期にわたってウイルスを抑制すると言われる。ラミブジンと同様、YMDDの耐性あり。
・現行の治療はHBVを除去することは出来ない。
・普通のIFNよりpegIFNのほうがいいだろう。
・耐性が出来やすいのでラミブジンやtelbivudineは好まれない。
・ALT正常なら通常治療はしない。
・pegIFN, アデホビル、エンテカビルがファーストチョイス。小児ではIFNかラミブジン。
・耐性ウイルスが出たら、「加える」か、「変える」。
・ただし、ラミブジン耐性でアデホビルを使うなら、「加える」。エンテカビルでは、ラミブジンはエンテカビル耐性を促すので、「やめる」。結構複雑。
・アデホビル耐性では、ラミブジンかエンテカビルを「加える」
・エンテカビル耐性では、アデホビルを用いる。
・肝硬変ではIFNは使わない。アデホビルかエンテカビルのことが多い。

HCV共感染での治療
・推奨なし。データなし。

HDV。
・IFNのみ。ラミブジンは効果なかった。

HIV。
・ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビルはHBV,HIV両者に効く。アデホビルは低容量なのでHIV治療には使えない。ただし、耐性もでにくいらしい。エンテカビルはHIVには効かない。telbivudineはHIVには効果がないが、M204I(YMDD)突然変異を誘発するため、使うべきではない。
・IFNはCD4が500以上で推奨されることが多い。e抗原陰性ならアデホビルかエンテカビル、、、、
・HAARTを変えるときにHBV治療を止めないことが大事。フレアの原因に。
・化学療法、免疫抑制の時は予防的にHBV治療をする手もある。

急性肝炎
・重症、劇症肝炎でのみ、ラミブジン、エンテカビルなどを使う。lIFNは禁忌。

本日のお題

大学に異動して7ヶ月。論文の読み方とかずっと教えていて、ようやくまっとうなジャーナルクラブができるようになってきました。耳鼻科の先生が来てくれて、こちらも勉強になっています。やはり他業種のコミュニケーションは大切みたいです。

本日のお題は

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine
2004 vol. 170 (5) pp. 561-6

DOTをやると予後が良いか、という後向き研究ですが、面白いのは、比較対象のテーブル1が全然違っている、という逆説。明らかに予後が悪そうな群をDOTに置いて、それでも予後が良かった、という論拠で攻めているアイディア賞。バイアスはないの?あるかもしれませんが、何か?形式論ではなく目的相関的に考えると、こういう論文はあり、という好例です。

Chest
2006 vol. 130 (6) pp. 1679-86

侵襲性A群溶連菌感染患者の予後規定因子を検討したもの。壊死性筋膜炎や菌血症はあまり予後とは関係なさそう。外科的処置も予後とは関連なさそうだが、壊死性筋膜炎だけで切っていないのが残念。IVIGを使うとICU退出が0.2日間早まる!すごい、やっぱ免疫グロブリンだ!なんてね。

Head Neck
2001 vol. 23 (6) pp. 447-55

生まれて初めてHead Neckという雑誌を読みました。head and neck cancerの術後感染は多い、という論文。

Chest
2000 vol. 117 (1) pp. 39-42

よく院内の熱の鑑別にPEがあがるが、PEの14%で熱が出ますよ、という論文。熱の高さは関係なさそう。

Biosecurity and bioterrorism : biodefense strategy, practice, and science
2008 vol. 6 (3) pp. 227-36

pandemic fluにまつわる倫理的な問題をまとめた労作。なかなか面白かったです。

アメリカ大統領が決まって、、、、

オバマが勝ったと言うより、ブッシュが負けたというべきでしょう。この8年のアメリカを、アメリカ国民自身が否定したのです。このことは、まあ必然と言うべきでしょう。

さて、就任について各国の首脳がコメントを残していますが、麻生首相のコメントが一番情けなかったです。いままでのアメリカに未練たらたらで新しいアメリカにもべったり、という日米2国間だけのスキームを維持する古くさいコメントで、そのくせ何も言っていませんでした。グローバリズムを提唱するオバマ氏としては、一番軽蔑の対象になるのではないでしょうか(彼が敵と見なす、「過去」のコメントでした)。ああ情けない。

アメリカはついに変革する覚悟を国全部で決めました。日本はその覚悟があるでしょうか。どうも、現状維持の重力はいまだに強いようですが、、、、どこもかしこも。

日本の官僚に一番足りないもの

日本の官僚・公務員に足りないものはたくさんありますが、一番足りないのは勇気です。現実を見据える勇気、自分の能力を正当に評価する勇気、自分の限界に挑戦する勇気、現状維持の重力にあらがう勇気、そうなっているからそうしている、というトートロジーから脱する勇気、知識のラテラリティーという帝国に閉じこもらない勇気、そして、自分の仕事に責任を取る勇気。

なんて、ステレオタイプな官僚・公務員評価はよくありませんよ、という大分トリニータ社長の話。すごいなあ。人生の醍醐味はGiant Killingだ、を地でいくストーリーですね。

最近読んだ面白い話。評論家のセルジオ越後氏。好き嫌いはあるでしょうが、以下の逸話は説得力がありました。彼が日本代表が勝った後に企業の社長さんに、今日はおめでたい日だから辛口コメントはなしですよ、みたいなことを言われたそうです。そうしたら、セルジオ氏は、「では、営業会議で、先月の業績は良かったから今月は頑張らなくていいよと言ってください」と返したとか。プロとは何かを考えさせるお話でした。

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