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新型インフルエンザガイドライン・パブコメ

以下のパブコメを厚労省に送りました。情報公開の観点から、私たちの見解を公表します。本物には図表が付いていますが、これは割愛しました。

                                                    2008年12月26日
新型インフルエンザガイドラインへのパブリックコメント
  神戸大学医学部附属病院 
               感染症内科、岩田健太郎
                               感染制御部  荒川創一、李宗子、阿部泰尚
全体の構成について
・まず、新型インフルエンザの定義、概要を整理して明示すべきだと思います。新型インフルエンザとは何か、H5N1だけを指しているのか、それ以外の血清型(H7N7など)はどう認識し、対応するのか。新型インフルエンザとしては、季節性インフルエンザの変異や予想はずれの型であることによるminor changeしたウイルス株が大流行するような場合も含まれているのか、こういう点も整理して、ガイドラインに盛り込むことが肝要と考えます。諸外国ではpandemic fluと認識されているのに、なぜ日本だけが「新型インフルエンザ」なのか。想定される社会的、医学的、経済的インパクトはどのくらいなのか。ガイドラインの遵守によってそのインパクトがどのくらい軽減され、何がもたらされることを厚生労働省や国は目標にしているのか(ゴールの設定)、「はじめに」で明確にまとめていないので、何を議論したいのかが分かりづらいです。
・次のガイドライン(改定版)はいつ発行される予定なのか、明示すべきです。
・今回募集したパブコメがどのくらい集まったのか。それがどう処理されたのか、明示してください。そして、次に出されるガイドライン(改定版)では、どのようなパブコメがどこに反映されたのか、これも明示してください。
・    ガイドライン作成方法を明示してください。だれがどのようにして何を決めたのか、全く不明確です。データはどこからどのように入手したのか、どのように議論して作成されたのか。最近の諸外国のガイドラインではすべてそういった情報が明示されているのが常識です。
・ガイドラインなので、最低限、引用文献リスト(参考資料ではなく、根拠となるデータのソース)はつけていただきたい。存在しない疾患の治療については、推奨のエビデンスレベルはなかなかないでしょうが、せめて推奨度はつけるべきです。
・執筆者の名前は明示するのが常識。これはガイドラインの基本中の基本なのでぜひ治していただきたい。

文章表現・アピアランスについて
・一文を短文に箇条書きにしてほしい。読みづらいです。「国立大学医学部附属病院感染対策協議会病院感染対策ガイドライン」などのように、要点(概要)とrecommendationをまず箇条書きにして、注釈やエビデンス、法的根拠などは1項目毎にまとめて、そのあとに解説的に書き、そこに引用文献の番号をつけるというようにするほうが読みやすいと思います。
・特に「医療体制におけるガイドライン」については、文章だけでなく、図や表を多用していったん概要がわかるようにしてほしい。例えば、国、都道府県、市、感染症指定病院、協力病院、発熱相談センターに関して、備蓄薬の配分や、段階別の役割分担の概要をフローチャートに図示してほしい。
・1ページ目の下から3番目の段落、「なお、本ガイドラインは、、、、、期待 される」の文章は分かりづらい、典型的なお役所型の文章です。ガイドラインは法令ではないので、絶対に守らなくてもいいのですよ、という重要なメッセージをもっと明確に示すべきです。ここは誤解のないよう、はっきり書いていただかないと後々現場は困ります。太字、下線などでメリハリをつけてくださった方がよいと思います。
・同様のことは下から二番目の「現在までに、、、、随時更新していくものである」の文章も同様です。ここも重要な部分ですから強調が必要です。要するに、 このガイドラインは何者なのだ、というところがはっきりしていないので、それは明示すべきと考えます(たいていの各種国際ガイドラインではそうなっています)。また、「その重症度や抗インフルエンザ薬の必要性および有効性について、検索し、情報を適正かつ速やかに国民に伝達する」というような表現が必要と考えます。
・104ページ 一般の人には不織布製のマスク、とは何なのか分からないと思います。昔のガーゼマスクは止めましょう、という文章を併記するべきと思います。
・一般の方はN95マスクは使うべきではない、とはっきり書くべきで、その根拠も示せばいいと思います(息苦しくてつけ続けられません、、、)。基本的に、全ての推奨事項には根拠を示すべきで、「こうだから、こうしましょう」とあるべきです。理由も示さずにこうしなさい、というパターナリスティックなガイドラインは好ましくありません。
・個人、家庭向けのガイドラインは、その目的に照らし合わせ、「ですます調」
で書くのがよいと思います。
・医療体制のマニュアルで「等」という表現が多用され解釈が難しい部分があります。等の連用は典型的なお役所文章で、改めるべき思います。
 感染症指定医療機関等
 →感染症指定病院、結核病院、協力病院と具体的に明示して頂きたい。
 マスク等
 →医療従事者の個人防護具についていえば「マスク等」で良いが、患者の個人防護具はマスクだけで十分と考えます。敢えて言うと、マスクだけをここに書くと、ガーゼのマスクなのか、N95マスクなのか、不織布製マスクか分かりません。不織布製マスク(いわゆるガーゼマスクではない)と明示すべきと考えます。
・19ページ。ホームページなどにおいてこれを周知するとありますが、厚労省などのHPを読むのはその道の専門家がほとんどで、これでは周知にならないと思います。具体的にどのメディアを用いて周知させるのか、その予算についてもきちんと議論し、明示しておくのがよいと思います。
・19ページ「可能性が高いものがチェックインしようと」の何がチェックインするのかが不明瞭です。

診断・検査について
・初動のPCRの使われ方について。「PCRにより、新型インフルエンザウイルスのH型、N型を明らかにされた結果を速やかに公表し、その重症度の情報などを的確に伝達する」というような、文章が必要と思います。また、そのH5N1が鳥インフルエンザとしてのそれなのか、新型インフルエンザなのか、あるいは不明なのかも公表する旨、明記しておくべきでしょう。
・74ページで是非加えていただきたいのが、検査態勢の調整です。蔓延期では、おそらく微生物学的に新型インフルエンザか否かの区別の持つ意味は希薄になります。全例検査で確認していては、検査態勢が崩壊するリスクがあります。その場合、選択的なサンプルしか受託しないという選択肢を設けた方が現実的でしょう(技師1ローテート研修あたり何検体、、、など)。2001年にNYで炭疽菌が問題になったときも、膨大な検体で検査室がパンクしました。疑い患者は検査をする、という流れは、あるレベルまでしか通用しないと思います。

フェーズの考え方について
・(参考)改定前の行動計画におけるフェーズ分類と発生段階との対応表
フェーズ               発生段階    
フェーズ1、2A、2B、3A、3B  【前段階】未発生期
フェーズ4A、5A、6A       【第一段階】海外発生期
フェーズ4B             【第二段階】国内発生早期
フェーズ5B、6B          【第三段階】感染拡大期、まん延期、                     回復期
後パンデミック期           【第四段階】小康期
※「A」国内非発生 「B」国内発生
この分類はまだ検討する必要があると思います。













国内で新型インフルエンザが発生した場合の第2段階、第3段階と、国外でフェーズ6になった段階での第1段階は根本的に意味合いが異なります。
この点を含めての発生段階の分類改訂をご検討頂けないでしょうか。

封じ込め段階の対応について
・現在のガイドラインの案では、封じ込めの概念が分かりにくい印象があります。もっと具体的に「1例目」、「1つめのクラスター」という表現を取り入れられたら如何でしょうか。
・また、封じ込めの段階(フェーズ4-5)の対応については専門的な知識が必要になると考えます。各地域で専門家を育成するよりは中央で育成した人材、蓄えた物資を発生した地域に派遣するシステム(例えばFETPを派遣する、専門医療チームを派遣する、封じ込め時のタミフルは国が備蓄する等)をご検討頂けないでしょうか。フェーズ6においては、封じ込めといっても全国各地で同じような状況が多発することが想定されるため、対応としては現行の方法を踏襲せざるを得ないと考えます。
・封じ込めの段階と、パンデミック期の対応は根本的に全く異なるものであり、封じ込め期の対応は国、パンデミック期の対応(発熱相談センターの設置,患者の振り分け,医療体制,等)を各地域で考えるとして頂いた方が、対応がし易くなります。


発熱相談センターについて
・66ページ、発熱相談センターは誰の担当か明示しておいた方がよいと思います。個人的には一般情報提供は録音テープかウェブの紹介、個別の相談は医療従事者(医師、看護師、保健師など)の業務とすべきです。医師は、発熱外来に行かないひとたちを当てればよいでしょう。「だれでもよい」になると、医療判断の責任はどこにあるのか(まちがってトリアージした場合)の問題が生じる可能性がありますし、それを回避するために「全員病院に行ってください」という実質的な意味を失ったざるのような相談センターになるリスクがあります。SARSのとき岩田は北京で電話対応をしていましたが、個別のケースについて事務の人たちによる対応は不可能で、全部ドクターに電話を回していました。発熱相談センターのあり方についてはもっともっと詰めるべきだと思います。回線数はいくつが妥当か、24時間態勢でやるのか、休日はどうか、各段階ごとにやり方を変えるのか、などなど。
・いくつどこに配置するのか、その機能やどのような人をどのように配置するのか、ハード面などをもう少し具体的に示してほしいと思います。例えば、診療も相談もするのであれば、保健所との役割分担はどうなるのでしょうか。
・広報について、ポスターや広報誌だけで十分なのか?という点が疑問です。第1段階に入る前に、発熱相談センターがいつ、どこにできて、電話番号は何番で、ホームページのURLは何でという情報を提供して頂きたいと思います。
例えば, HIV検査・相談マップのように,全国の発熱相談センターの場所と電話番号がすぐ確認できるようなシステムもご検討いただきたいです。新聞などの夜間休日の医療体制の欄に発熱相談センターの連絡先を入れる等も検討してもよいでしょう。
・ 1病原体のスクリーニングのために、国、都道府県の予算を削って、大量にプレハブつくりの外来を作ることには意味はないと考えます。発熱患者用の外来を各病院に作り、その中で原因不明の重症肺炎の流行がないか、通常のインフルエンザ検査では陰性だが、発熱、咽頭痛、咳、くしゃみを主症状とする病気の流行がないかを常にチェックできる体制を作ることを検討して頂くのが得策と考えます。感染症指定病院だけでなく、地域毎に一定以上の規模の病院には陰圧の発熱・感染症外来を作るよう予算を配分した方が、新型インフルエンザだけでなく、新たな感染症の流行をいち早く察知するという立場からみると、その場しのぎの発熱外来を作るより有効と考えます。呼吸器感染症全体の対策という観点からこの問題を捉えた方が、「新型インフルエンザ」の場当たり的な対応よりも遠回りなようで一番の近道なのだと思います。
・ 新型インフルエンザ患者を電話で診断し処方箋をFAXで送るという件がありますが、軽症か重症かの判断は可能としても、新型インフルエンザかどうかを電話で判断するのは難しいのではないでしょうか? 
・ 更にいえば、発熱外来においてさえ判断は非常に難しいと考えます。
また、電話でとなった場合,軽症患者に貴重な抗ウイルス薬を使用することになると考えますが、軽症患者に乱用するのは如何なものでしょうか。
抗ウイルス薬の対象者についても具体的にガイドライン上で示して頂きたいと思います。
・68ページ。曝露者で感染の可能性のある医療者を指定医療機関に送るのは、全く非効率的です。どのような症状であれば、という部分をしっかり明示すべきです。自家用車で移動できるくらい元気なひとがどうして指定医療機関に行かねばならないのでしょう。自宅待機が妥当だと思います。感染症法が壁になっているのかもしれませんが、本末転倒な議論に陥るのではなく、本質的に誰がどのように利益を得るのか、という観点からこの問題を捉え直すべきでしょう。診断まで患者を6時間弱も待たせる、というのも現実的ではないと思います。

 

・ここで、発熱相談センター、発熱外来、病原診断についての一つの案をここに提案します。

外国人対応について
・外国人に対する記述が一切なく、外国人に対して不親切な印象を受けます。外国人に対する対応もガイドラインに入れ、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語、韓国語等の多言語に訳して公表することも検討してください。
・発熱相談センター等について、各地域で多言語対応するのは困難であり、中央で一括して多言語対応の相談センターを設置することも検討して頂きたい。
(英語以外の言語について)

個人情報保護について
・67ページ、下の「当該者の個人情報保護には、、」の文章は意味不明です。保健所に患者の情報を提供しなくてよいのかどうか、どこまで提供すべきなのか、してはいけないのか、もう少し明快に記載してください。
・68ページ。名簿を作成する、とありますが、これは個人情報保護上どういう扱いになるのでしょうか。感染症法1類ということであれば名前などすべて保健所に提出はできるでしょうが、「疫学調査のために」その情報をどこまで利用できるかは、感染症法、個人情報保護法ともに不明確だと理解しています。感染症法が純粋に公衆衛生的な目的に活用され、それゆえに個人情報保護よりも優先する場合があることは理解しますが、その実態は、しばしば純粋な学術的目的にそれが利用されていることもあります(例えば、結核)。その場合は患者本人の同意(インフォームド・コンセント)を必要とすると思いますが、いかがでしょう。

保健所の役割について
・保健所の役割を明確化してください。積極的疫学的サーベイランスを主体にするのか?発熱相談センター及び患者の振り分けのセンター(トリアージセンター?)を主体にするのか?おそらく両方を同時にするのはマンパワー的に厳しいと考えます。
・すでに述べましたが、封じ込めの段階については各地域に任せるのではなく、国が主導権を取って対策をとり、そして各地域(保健所を中心)はパンデミック期に向けての対応を取るという形の方がよりスムーズに対策がとれると考えます。FETPなどの役割もより明確にすべきでしょう。
・第1段階に入る前に、各保健所はトリアージセンターの設置場所、担当者、連絡先を医療機関に伝えておくことという文言を入れてください。

治療について
・「抗インフルエンザ薬のガイドライン」は、何も語っていないのと同じで、根本的な改善をお願いします。どの患者にどの薬を何ミリグラム、何日間投与するのか、曝露後に対してはどのくらい投与すべきか、時期によって変更すべきか、まったく不明瞭です。アマンタジンなど併用薬として期待されている薬についても全然言及がありません。経口摂取ができない患者に対する投与方法は?腎機能が悪い場合は?小児は?発症48時間以上たった場合は?治療をwithdrawする基準は?など臨床現場では山のような疑問がわいてくるはずです。本ガイドラインは、率直に申し上げて、全く役に立ちません。
・処方の方法についてですが、FAXで処方できるのは抗インフルエンザ薬のみでしょうか?

抗インフルエンザ薬について
・ 一般医療機関では備蓄しないでも、国がそのすべてをまかなうように書かれていますが、実際の現場では、本当に備蓄が不要なのか、不安を感じているという声を聞きます。もっと具体的に、これら薬剤の、段階に応じた支給システムを示すべきと考えます。

季節性インフルエンザについて
・103ページ、シーズナルなインフルエンザワクチンの運用についても不明瞭です。どのフェーズで誰が接種を受けるべきなのか、いつ接種をうけるべきなのか、一回なのか2回なのか、全く分かりません。添付文書には基礎疾患があるときは接種を控えるように、ととられる文章になっていますが、本当にそれでいいのか、新型インフルエンザ流行時は基礎疾患のある患者こそシーズナルのワクチンを打つべき、という厚労省の姿勢、態度、意見も明示すべきです。

防護用具の備蓄に関して
・用意すべき、具体的数量の算定例を示してください。

食料など
・食料品についても、どのようなものをどのくらいの量備蓄すればいいのか具体的に明示すべきです。確か、WHOの災害ガイドラインでは、備蓄しておく水の量など具体的に記載されていたと記憶しています。

リスクコミュニケーションガイドライン
・読点を使いすぎ、一文が長すぎるのでは?ちゃんと効果的なコミュニケーションの模範を示さなければ、ガイドラインの意義が半減すると思います。
・具体的なコミュニケーションのあり方、情報公開の原則や程度、コールセン
ターの具体的な役割など、ガイドラインと呼ぶには、かなり内容が希薄といわざるを得ません。
今後充実していくのだと想像します。

以上、かなり直言させていただきましたが、パブリックコメントとは、本来そういう性質のものと存じます。的を外れていることがございましたら、ご寛容ください。

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