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薬害エイズを改めて考え直す

安部英医師 「薬害エイズ」事件の真実を読みました。とても感銘を受けました。また、自分の情報の得方やものを考える理路、特に10代から20代にかけての自分の考え方に強い反省を強いたのでした。

私がエイズと関わりを持つようになったのは1992年です。当時は啓発、予防、死者へのメモリアルキルトみたいなことに関わっていたのですが、どうしても違和感がぬぐえなかったのが「薬害」事件でした。だれが何の責任があるのか、報道を読んでもよく分からなかったので、誰が何に怒っているのかも、どう考えても理解できませんでした。でも、そのような話をすると皆にヒステリックに叱られるので、だんだんこの話はタブーみたいになったのでした。でも、今思い返すと、これをタブーにしてしまったのがそもそも行けなかったのだと思います。

今、自分が医師になって、フィブリノゲンや採血器具の問題も専門知識とリアリティを持って見つめなおすことができるようになったとき、薬害エイズを捉え直す機会を持ったのは貴重でした。私は90年代からHIVに入ったので、例えば抗体検査の持つ意味を考えたり悩んだりしたことがない世代です。80年代前半にはそれが非常に難問であった、というのは今冷静に考えてみればその通りだろうなと思います。

80年代のエイズの問題で、行政やメーカーのあり方に問題がなかったとは思いません。が、あれが刑事事件になってだれかが有罪判決になるのは、誰の何の責任に大してなのか、と言う点は今でも疑問に思います。本書もまた一側面の立場からの主張なので、すべて額面通りには受け取ることはできないかもしれませんが、それをいうなら「被害者」側の主張のみを額面通りに受け取ってきた多くのエイズに関わる人たち(私自身を含む)は、振り返りや反省の時間を持つべきでしょう。それをしなければ、情報垂れ流し、反省ゼロという悪しきメディアのやり方を、自らも踏襲してしまうことになるからです。学会などのシンポジウムではそのような話し合いも行われているようですが、あれだけ大々的に報道された大きな問題です。その情報はもっと開示されてしかるべきでしょう。誤報の1面記事の訂正が、裏の小さなマスだけでちょこっと書かれるだけでは、いけないのだと思います。

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コメント

医学生のころ(30年まえ、エイズ患者が日本でほとんどいなかったころ)、安部英医師が学生の特別講義でエイズの血液製剤でうつることを認識していながら、このことが広がると患者が安全な製剤の取り合いになって混乱するから公表しないと発言しました。その時、同級生がその考えはおかしいと安部英医師に質問して、講義に呼んだ教授も困っていました。結果的には薬害エイズが広がり、加熱製剤の普及を遅らすことになった。安部英医師はせめられてもしかたないと今でも思っています。ネット社会で、PUB-MEDがある現在では考えられないことですが。

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