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ナイチンゲールを問い直す

クリスマスのBMJは豪華絢爛。お茶目なBMJは大好きです。でも、明日からの診療にはほとんど役に立たない、、、、
 さて、その中で注目したいのが、ナイチンゲールの歴史的位置を問い直す論文です。

Keith Williams. Reappraising Florence Nightingale. BMJ 2008:337;1461-

 ナイチンゲールの伝説は、二次資料の問題、家族の脚色、伝記作家の脚色、その他の大人の事情のためにゆがめられている、と筆者は主張します。そして、ナイチンゲールは実は軍事医学(military medicine)の進歩を妨げたのだ、とまで言います。一体何が問題だったのでしょう。
 ナイチンゲールは裕福な家庭に生まれ育ちました。クリミア戦争時代の首相とすら親交があったのです。政府要人にも知人が多かったようです。
 そんな中、ナイチンゲールはnoblesse obligeから戦士のケアのために病院に赴きます。しかし、彼女はスノッブであり、クリミアの医師、これは大多数がスコットランド人かアイルランド人だったそうですが、には敵意を示したと言います。どうもこの階級は貧しい中産階級の出が多く、上流階級出身のナイチンゲールには軽蔑の対象だったのだそうな。
 ナイチンゲールは軍医とその制度を批判しました。特に軍医部門の部長であったAndrew Smithとは仲が悪く、これは彼が下流階層の出であったこととも関係していたそうです。また、クリミアの医療部長?であったJohn Hallとも不仲であったとか。
 Hallのほうはナイチンゲールを「政治家のためのスパイ」と酷評しています。ナイチンゲールはHallは医師としての適切な資格を持っていないと攻撃しました(これは事実ではなかったようです)。彼女は嫌った相手を攻撃する文章を認めたりして実際に「スパイ」と言われかねない活動をしていたそうですが、その彼女自身が当時の文書をみな破棄してしまったので、詳細は闇の中だとか。
 当時のナイチンゲールの評価は、メディアによってもずいぶんゆがめられたようです。どこでもそうですが、戦争中は読者の都合のよいように戦争記事は書き換えられがちです(日本の満州事変以降の愚行もメディアが後押ししていたと読んだことがあります)。クリミア戦争は、英国史上はじめてメディアが大きな参加をした戦争でした。センセーショナルにしてスキャンダラスな記事が読者に好まれるのは世の常です。政府はナイチンゲールを広告塔として利用した嫌いがあります。
 ナイチンゲールは、3200人の患者の待つクリミアの病院に、たった38人の看護婦しか連れて行きませんでした。ナース一人あたり担当する患者は84人で、これではまともな看護ができるわけはありません。患者は後に5000人にまで増えましたが、ナースの増員はなかったのです。どうもナイチンゲールの評判はあまりよくなかったようdすが、天使伝説は広がり、その人気が彼女を後押ししました。「国家は私と共にある」とナイチンゲールは言ったのです。神話も繰り返されると「事実」になってしまい、ナイチンゲールの現在の功績と称されたのだと筆者はいいます。彼女の功績とされる看護改革も、実は以前に他の人物が起草したものなんだそうです。例えば、医療統計学の部門を作ることを1857年にナイチンゲールから提唱されていますが、実は1855年にはSmithがすでに自分の部署に統計部門を作ってそれは機能していたのでした。医学校の設立、女性看護師の採用なども彼女が嚆矢ではなく、全例が英国に存在していたのでした。
、、とまあ、この論文ではナイチンゲールはけちょんけちょんにけなされています。どうなんでしょうかねえ。歴史的人物評価って難しいと思います。

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