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archeo-epidemiologic に考える。

NEJMから、archeo-epidemiologyという観点から過去のパンデミックを疫学的に分析し現在の対策に光を当てる提言が為されています。この論文は興味深かったです。感染の「波」waveの問題や、実は過去のパンデミックでも地域によって死亡率など特徴が異なっていた、など、なるほど人間、過去から学ぶことはたくさんあるのだな、と感じさせました。以下は、訳文ではなく、サマリーです。

perspective H1N1 NEJM
- The Signature Features of Influenza Pandemics — Implications for Policy
- content.nejm.org—NEJMp0903906 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMp0903906>
- Mark A. Miller, M.D., Cecile Viboud, Ph.D., Marta Balinska, Ph.D., and Lone Simonsen, Ph.D.
- Dr. Miller is the associate director for research, Dr. Viboud a staff scientist, and Dr. Balinska a research associate at the Fogarty International Center of the National Institutes of Health, Bethesda, MD. Dr. Simonsen is an adjunct professor and research director of the Department of Global Health, George Washington University School of Public Health and Health Services, Washington, DC.

This article (10.1056/NEJMp0903906) was published at NEJM.org on May 7, 2009. It will appear in the July 2 issue of the Journal.
- powered by OmniOutliner 3.8
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- 過去のインフルエンザパンデミック、A/H1N1 1918-19, A/H2N2, 1957-63, A/H3N2 1968-70を考古疫学的(archeo-epidemiologic)に調査。
- 過去のパンデミックはウイルスサブタイプのシフト、若年者の高い死亡率、くり返しおきるパンデミックの波、季節性インフルエンザよりも高い感染力、そして地域によって異なるインパクトに特徴付けられる。最初の特徴のみが強調されるが、残り4つの特徴が鑑みられることは少ない。
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    - 別の可能性としては、免疫の強化(immune potentiation)がおき、これが特定の年齢層に高い死亡率をもたらしたのかもしれない。
- 2つ目の特徴は20世紀のパンデミックの特徴である。若い人が死にやすい。1873年のA/H1の曝露が45歳以上の成人に、1918年からのパンデミックに対する防御能を与えたのかも知れない。似たようなメカニズムで、1968−1970のパンデミックで77歳以上の死亡率が低かったことが説明できるのかも知れない。1892年のH3の抗体が残っていたのかも知れない。
- あるいは、ことなるキャリアをもつ細菌による二次感染の可能性もあるだろう。
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- 3番目の特徴、流行の波は20世紀の3つ全てのパンデミックでおきている。死亡率も高まっていく。
- 1918年、最初の波はヨーロッパとアメリカで、相対的には死亡率は低かった。この波で部分免疫がつき、死亡率は下がったのかも知れない?。
    - Andreasen V, Viboud C, Simonsen L. Epidemiologic characterization of the 1918 influenza pandemic summer wave in Copenhagen: implications for pandemic control strategies. J Infect Dis 2008;197:270-278.
- 1957年のA/H2パンデミックでは3つの波があったが、1959年と1962年の冬に死亡率は高まっていた。
- 1968−70では、ユーラシア大陸で最初に軽いインフルエンザが起き、その後の波で死亡率は高まっている。
- 何故波が起きるのか?ウイルスがホストに適応しているからか?地理的な理由か?季節の理由か?人の免疫によるのか?いずれにしても、次にくる波を予測させ、政策決定に価値を与えるかも知れない。
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- 第4の特徴は感染力の強さ。免疫ができていないので、感染しやすい。これも過去のパンデミック全てに見られる特徴。再生産数(reproductive number)はある一人が平均何人に感染させるか、の数であるが、これはスタディーやパンデミックによってまちまちである。細菌の研究では、1918−19の初期の軽い波では、R0は2−5くらい、通常の季節性インフルエンザでは平均1.3である。現在のパンデミックコントロールではより低いR0を想定しており、これは楽観に過ぎる見方といえるかも知れない。
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- 地域により発症率や死亡率がことなる、heterogeneityが大きいというのもパンデミックの特徴だ。これはその地域の免疫状態やインフルエンザの株、地理的な感染に与える影響、社会的な交流のあり方、気候などが影響しているのだろう。
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- A/H5N1の鳥インフルエンザは30カ国以上に広がり、400人以上に感染し、case fatality rateは50%以上であるが、パンデミックの可能性については専門家の間で意見が一致していない。このくらい毒性が強いとホストに適応できないであろう。他の鳥のサブタイプもパンデミックの可能性があるだろう。鳥のウイルスは呼吸器細胞受容体へのトロピズムがヒトと鳥では違うのだが、突然変異がちまちまくり返されたり、遺伝子の並べ替えが、ほ乳類の媒介(mixing vessels)でおきれば、新しいタイプの感染力の強いウイルスになってしまうかもしれない。これが、現行のブタH1N1株でおきたのかも知れない。
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- ウイルスの毒性のみならず、どのくらいすばやくわれわれが予防法や治療法を開発できるかにも将来のパンデミックの死亡数は影響されるだろう。サイトカインストームが起きるまえに、抗ウイルス薬や肺炎球菌ワクチンによってこれらの影響を小さくできるかも知れない。
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- 波はくり返しおきてきたので、地球規模でアクティブなサーベイランスを行うのが重要である。国家間の協力も大事。ワクチンの開発や治療法もそうやって開発されていくだろう。次の波が来るまえにワクチンを開発すれば影響は小さくできるかも知れない。もし、1968年のA/H3N2が現れた翌年にワクチンができていれば、ヨーロッパやアジアの死亡のほとんどは防ぐことができたであろう。
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- パンデミックの年齢特異的死亡のパターンはワクチンの優先度に影響を与えるべきであろう。それは年齢に応じたワクチンの効果にも依存する。余命を考慮する、といった倫理的な議論も必要だろう。すでに高齢者には抗体が存在しているかも知れず、またその免疫反応は強くないかも知れず、小児はより感染力が強いかも知れない。若い人ほどワクチンのターゲットとすべきなのかも知れない。もし1918年のようなシナリオなら。
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- 医学的でない介入、人と人との距離をとること、social distancingはR0が2以下では有用である。しかし、過去のパンデミックではそれ以上だったのだ。
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