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2009年5月

ひさしぶりに

ひさしぶりに仕事以外の話題を

昨夜はサッカー日本代表とチリのAマッチでした。日本の出来がとても良かったです。チリも個々の力は決して弱くなく、日本も崩されかけましたが、よくしのぎました。前回の同じカードよりはずっとよかったです。縦への突破が効果的でした。これまではパスはつながるけど得点の可能性が見えない、というサッカーだったので、一つ進歩したと思います。

その、縦への突破が世界一破壊力のあるマンチェスターユナイテッドはバルセロナに完敗でした。まったく勝てる空気が見いだせず、後半ロナウドやスコールズたちが要らないファウルをし出したところで自ら勝機を放棄した形になってしまいました。それにしてもバルセロナは素晴らしいチームです。シャビ、イニエスタがとくに効いていました。いつも効いているのですが。それと、何と言っても今年のバルサがいつものバルサと違うのは守備の強さと思いました。ManUは自分たちの槍をほとんど突き立てることが出来ませんでした。

まあ、もともとManUは中盤構成力の強いヨーロッパのチームに弱いのです。やはり中盤のスキルは(最近強くなったとは言え)プレミアは少し劣るのでしょう。過去にも、ジダンが全盛期のレアルや、モウリーニョ時代のポルトに似たような形で完敗しました。(全盛期ならともかく)ギグス、スコールズ、フレッチャー、アンデルソン、パクチソン、キャリックなど、みなプレミアでは通用するのですが、バルサと比べるとかなり落ちて見えてしまいます。前線と守備はほぼ互角だったので、ここの差が勝負を分けたと思いました。

古い話ですが、1991年にカップウィナーズカップ決勝で両チームが対戦したとき、ManUは完全にアンダードッグでした。あのときぼくはまだ十代でイングランドに住んでいて、マーク・ヒューズの得点やブライアン・ロブソンのアシストに興奮したものでした。隔世の感があります。

品位を下げないように

人が立っている場所なんて、そんなにどこという違いはありません。しかし、大きな違いは見ているまなざしの方向にあります。

二人の囚人が牢の中にいた。一人は足元を見、一人は夜空の星を見上げた。

詳細は忘れましたが、こんなことばがあったように思います。

自分のエゴ、権益、功名など、「わたし、わたし」を主張するのは結局は自分自身の品位を自ら下げてしまうことになります。もっと大きなピクチャーでものを見なくてはならないのに。厚労省はがんばっています。しかし、そのがんばりが小さなピクチャーでの自己満足、自己の権益保持、自己弁護のためでなければよいのですが、、、、

http://lohasmedical.jp/news/2009/05/25145547.php

こういう危機下にあると、普段はすましている人間の本質が見えてきます。意外に頼りになる人、いざとなると自分のことしか考えていない人。患者の話ができるひと、「わたし」の話しかしない人。人間観察に於いては、今、ベストポジションにいますね、私は。

本当の踏ん張りどころは、今

 ばたばたとした毎日が少し和らいで、{日常}という久しく忘れていたお友達がすこし顔を出したような気がします。

 本当の踏ん張りどころは、今です。

 緊急時、危機時はがんばれるのです。眠らなくても、食べなくても大丈夫。皆同じ目標に向かい、私心も邪心も振り捨ててがんばるものなのです。

 少し、魂が弛緩できるようになった今こそ、本当に精神を奮い立たせてがんばらなければならないのです。最終ラウンド直前にベンチに座ったボクサーのように、、、、身体はそのまま休んでしまうことを強く欲求しますが、がんばって立ち上がらなければならないのです。

 厳しい検証と反省、改善の作業が行われなければなりません。こういうときは、「よくがんばった」ことのみが自己目的化し、がんばったね、ですべてをちゃらにしがちです。糾弾するのではなく、冷静に自分たちの振る舞いを振り返って、次に生かせるよう学ばなければなりません。そうしなければ、これまでがんばった意味も半減なのです。

 発熱外来でがんばって診療している間はみんなも同情し、励ましてくれますが、検証作業は孤独な作業です。他人が褒めてくれなくてもがんばれるか、他人に批判されても必要な仕事を続けられるかが、プロとアマを分けてくれます。

 では、今週も気合いを入れて。入れ直して

発熱外来患者さんへ 

以下、必要な方は自由にご活用ください。

平成21年5月20日
神戸大学病院発熱外来
発熱外来を受診された患者さんへ

 受診、ご苦労様です。新型インフルエンザについては大きく報道されていることもあり、さぞご心配だったのではないかと思います。
 新型インフルエンザの緊急対策として、神戸大学病院は神戸市の要請を受けて発熱外来を開設しました。通常、診療室ではないところを使用しており、また緊急の開設だったこともあり皆様にはご不便な点もあったかもしれません。今後の改善に役立てたく思いますので、ぜひ忌憚のないご意見をお聞かせください。
 さて、発熱外来は新型インフルエンザ、とくに入院の必要な重症患者さんを早期に発見し、治療に結びつけることを目的にしています。そのため検査も行いますが、検査だけが新型インフルエンザの診断に必要なわけではありません。検査は鼻や喉を長くこすって行う、あまり快適な検査ではありませんし、検査キットにも数に限りがあります。医師が必要ないと考えた場合は検査を行わない場合もあります。どうかご了承くださいませ。
 医師がお願いした場合は、他人に感染症をうつさないように7日程度自宅にて外来を控えていただくかもしれません。これは新型インフルエンザであっても他の感染症であっても他人にうつさない配慮です。その間、症状がよくなっているかの確認で、当院感染症内科医師が電話でご連絡差し上げることがあります。
 一度帰宅となっても、息が苦しい、症状がどんどん強くなるなど不安な点などがありましたら、下記までご連絡ください。場合によっては再受診が必要なことがあります。
 自宅での療養方法、家族の健康を維持するための方法については別紙にまとめました。ご帰宅になったらお読みください。
 その他、ご心配なことなどございましたら、最寄りの職員まで遠慮なくお問い合せください。
            発熱外来担当 感染症内科診療科長 岩田健太郎
お問い合わせ先  

自宅療養中の健康管理方法について
感染症内科 岩田健太郎

1.水分を多めに取り、可能なら食事もきちんととり、栄養管理に努めましょう。
2.充分な睡眠を取りましょう。
3.よく手を洗いましょう。
4.咳やくしゃみをするときは、手やティッシュで口をふさぎましょう。そのときは手をこまめに洗いましょう。ティッシュは丸めてゴミ箱に捨ててください。ゴミは普通の燃えるゴミに捨てていただいて構いませんが、家人がゴミに手を触れたときはよく手を洗いましょう。ゴミからインフルエンザに感染する可能性はとても低いです。患者さんが吐いたり下痢をしたときは、マスクをつけてその処理をした方がよいでしょう。そのときもしっかり手を洗ってください。
5.患者さんのお世話をする人数は少ない方がよいでしょう。お世話のときはマスクをしてください。
6.患者さんも他の家族と接するときはマスクをしましょう。ひとりでいるときはマスクをしなくても結構です。
7.はし、コップなどの食器は共有しないでください。普通に洗えばそこから感染する可能性はとても低いです。
8.患者さんの衣類は普通に洗濯してください。脱いだ衣類をさわったら手を洗いましょう。洗濯したあとの衣類からは感染しません。
9.体温は1日2回程度測りましょう。熱は大抵、数日続きますので、受診翌日熱が下がらなくてもそんなに心配しなくてもかまいません。
9.患者さんの言っていることがよく分からなくなった。体温が急に変化した、息が苦しくなったなど症状が新たにでてきたら危険信号です。お子さんでしたら、いつもと様子が違う、という親御さんの直観も頼りになります。そういうときは発熱相談センターなどに相談されるのがよいでしょう。
10.症状が始まってから7日経ち、症状もおさまってきたら日常生活に復帰し自宅療養を止めてもよいでしょう。もし7日経ってもよくならないようだったらご相談ください。

臨床像

ようやく臨床像の速報が発表になりました。参考になります。迅速キットの意義もよく考えて、ということになります。

これをうけて、発熱外来の目的や意義、規模も再設定してもよいでしょう。

http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/09idsc8.html

専門家チームでのコメント

舛添大臣の専門家チームの会合に東大の畠山先生、自治医の森澤先生、感染研の森兼先生と出席しました。そこでいろいろ話し合ったのですが、メディアの前で読み上げたのが以下の原稿です。全部は紹介されないと思うので、こちらに出しておきます。

新型インフルエンザウイルス対策から、新型インフルエンザ対策へ

神戸市はあの震災を乗り越えたタフな街です。その神戸市があっぷあっぷになって喘いでいます。

インフルエンザは、ほかの病気同様、重症なものと軽症なものがあります。重症なインフルエンザは由々しき事態で全力をでの医療が必要になります。軽症者は自宅で安静にしていれば自然に治ります。本来、インフルエンザは自然に治る病気なのです。

したがって、新型インフルエンザに対して、その重症度を無視して、一律の医療サービスを提供するのはいかにも理にかなっていないことです。無限の泉から医者や看護師が湧き出てくるなら話は別ですが、この日本はずっと前から医療崩壊に片足を突っ込んでいたのです。

神戸大学病院では循環器など他科の先生もご協力いただき、全力でこの問題に取り組んでいます。しかし、鼻水、のどいただけで自然に治る病気に入れ込み、命にかかわる心筋梗塞の治療がおざなりになるのは、本末転倒です。

インフルエンザとは本来、病人/患者からアプローチすべきものです。世界の専門家はすでに気道感染症として病原体から切らないまっとうなアプローチをしています。RSウイルスもコロナウイルスもインフルエンザウイルスも原則的なアプローチは同じなのです。

日本は古来病原体からのみ感染症を扱っていました。感染症法がその象徴です。しかし、同じ病原体でも患者によってアプローチは異なるのです。患者中心の医療とはそういうことなのです。「患者中心」とは、単なるスローガンではないのです。

我々日本の医療者も、すぐに病原体探し、まずは検査という病原体中心の医療を行ってきました。それを真摯に反省しなくてはなりません。行政だけがけしからん、と主張したいのではないのです。しかし、この危機を乗り越えるとき、指定感染症の規制が現場を苦しめていることもまた事実です。

検査、治療、入院/外来サービスの提供は患者の状態から決定されるべきです。病原体だけがそれを規定してはいけません。臨床現場とはもっと柔軟でしなやかなものです。

H5N1の致死的なインフルエンザが消えてなくなった訳ではありません。1918年のパンデミックも第一波は軽症でしたが、夏に消えて冬に戻ってきました。もし、このような真に恐ろしい感染症が神戸にやってきたら、我々はぶっ倒れてしまうでしょう。

我々も全力でがんばります。この国とそこに住む人たちのために全力を尽くします。ですから、ぜひ我々が道半ばでダウンしてしまわないよう、皆様のお知恵とお力をお貸しください。

情報は自分で咀嚼

岡部先生のお話です。ちょっと不適切な見出しがついている部分はありますが、内容はとても参考になります。

クライシス・コミュニケーション

http://www2a.cdc.gov/podcasts/player.asp?f=11509

CDCのpodcastで簡単なレクチャーを受けることが出来ます。良い内容だと思います。オランダでも、米国でもコミュニケーションの専門家がいるのが凄いと思います。新型インフルエンザ対策室にはおいでですが、、、、

CERCのトレーニングはここから受けることが出来ます。

http://www.bt.cdc.gov/cerc/

Crisis and Emergency Risk Communications(CERC): Best Practices

uncertainties are expected.

we're still in the initial stage of the emergency communication lifecycle.

In this phase, there are typically more questions than answers.

Expect the public to immediately judge the content of an official emergency message in the following ways: "Was it timely?" "Can I trust this source?" and "Are they being honest?".

five common mistakes in crisis communication.

• Mixed messages from multiple experts,

• Information released late,

• Paternalistic attitudes,

• Not countering rumors and myths in real time, and

• Public power struggles and confusion

You can help avoid these mistakes by using the six CERC principles.

1. Be first.

2. Be right.

3. Be credible

4. Express empathy

5. Promote action

6. Show respect.

分かりやすく、理解しやすいために

リスクコミュニケーションはアウトブレイク時には重要です。分かりやすく、簡潔に伝える技術が必要になります。CDCのガイドラインはその点、非常に明解で具体的なメッセージが強くて素晴らしいです。

日本の厚労省も、YouTubeを使ったり、メッセージの出し方についてはだいぶ工夫するようになってきました。でも、やはり通知は分かりづらい。以前から分かりづらいが、ここはあまり改善されていません。「下記のように整理」とありますが、あんまり整理されていませんねえ。同義反復しているし、、、、二重否定もわかりづらい。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090513-01.html

平成21年5月9日健感発第0509001号厚生労働省健康局結核感染症課長通知「新型インフルエンザに係る症例定義及び届出様式の改定について」を発出したところ、多くの都道府県等から問合せを受けた項目について、下記のように、整理したので、参考とされたい。

なお、患者の発生状況や検査体制の整備状況などを踏まえ、症例定義を見直すことがあることを再度申し添える。

1.疑似症患者について、地方衛生研究所で、PCR検査を実施するまで届出を要しないということか。

疑似症患者であって、法第8条第2項に基づき、新型インフルエンザに感染していると疑 うに足る正当な理由があるものについて、新型インフルエンザ患者とみなし、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項の規定に 基づいて届出がなされるものであり、PCR検査を実施するまで届出を要しないというものではない。

僕の対案

ー>そうではありません。PCRを実施していなくても届け出が必要な場合もある。要するに、新型インフルエンザに感染していると疑うに足る正当な理由があれば届け出の対象となるので、PCRがなくても症状や旅行歴から強く「疑えば」届けるべきである。

2.「当該感染症にかかっていると疑うにたる正当な理由」とは何か。

通知に示しているとおり、「疫学的に感染の疑いが濃厚であるかどうか等を勘案して判断することとなる」が、具体的には以下のような観点を総合的に加味して判断いただくこととなる。

(1)疫学的な情報から、感染の疑いが濃厚であるか

(2)他の疾患に罹患している可能性について除外したか

(3)臨床的に、インフルエンザを疑わせる症状等があるか

僕の対案

ー>これは総合的な臨床判断になるので、こうだ、と簡単には明記しづらい。しかし、流行国からの最近の旅行歴や熱、咳などインフルエンザを思わせる臨床症状があり、他の疾患でない場合、それをもって「疑うに足る正当な理由」といえよう。しかし、これは一例であり、このような単純な条件付けで複雑な臨床判断を安易に簡素にしてしまうのは危険であろう。

疑いとは0%から100%までの量的な概念であり、「ある」「なし」といったカテゴリーでは分類できない。当該患者の疑いの重み付け(検査前確率)を行うことが大切だと考える。

気がつけば、OIガイドライン

バタバタしているうちに、4月にOIのガイドラインがでていました。膨大な量ですが、Sax先生が3分足らずでサマライズしています。もっとも忙しい方は、これをどうぞ。

http://www.medscape.com/viewarticle/702007?src=mp&spon=1&uac=46045PX

HBVとの共感染についてたくさん記載があるのがさらっと見ていて気がついた点でした。でも、CIIIばかりだなあ。

読み応えがありそうなので、ちゃんと読んでまとめたいと思います。

米のとぎ汁には、米のとぎ汁?

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19370638?dopt=Abstract

コクランより。グルコースよりも米や小麦のようなポリマーベースの糖の方がよりよいORS。コレラでも、、、

論文より

Influence of vasopressor agent in septic shock mortality. Results from the Portuguese Community-Acquired Sepsis Study (SACiUCI study)*

Crit Care Med 2009 vol. 37 (2) pp. 410-416

ノルエピネフリンよりもドーパミンのほうがよかった?さらなるデータ必要。

Oral Sexual Behaviors Associated with Prevalent Oral Human Papillomavirus Infection

J Infect Dis 2009 vol. 199 (9) pp. 1263-1269

オーラルセックスと開口を伴うキスがHPV感染のリスク

mexicoでのインフルエンザ 暫定的なまとめ

が載っています。R0やCFRが計算されていて、参考になります。アブストラクトしか読めませんでしたが、、、

Pandemic Potential of a Strain of Influenza A (H1N1): Early Findings
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1176062

今月のThe Lancet Infectious Diseases

The Lancet Infectious Diseasesはお気に入りの雑誌で毎号有用な総説が載っています。5月号は特に注目していたウイルス感染症の潜伏期間、トキシックショック、そしてStenotrophomonas multophiliaの特集です。なんと、著者には太田西ノ内病院の成田雅先生の名前が!私の中部病院時代の二年先輩で、スーパーマンのように優秀な憧れの存在でした、、、

とくに問題となる感受性試験の解釈と治療について、、、、

- in vitro 感受性試験は問題ありあり
- Both the British Society for Antimicrobial Chemotherapy (BSAC) とUS Clinical Laboratory Standards Institute (CLSI) はSTについては感受性のスタンダードを定めている。
- MIC 2 mg/L
- CLSIはticarcillin-clavulanic acid, ceftazidime, minocycline, levofloxacin, chloramphenicol,のブレイクポイントを定めている。
- しかし、Expert Rules (Antimicrobial Susceptibility Testing of the European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)ではstenoはintrinsicにceftazidimeに耐性と考えている。
- モキシの感受性はlevoをみれば分かる。
- ESBLの判定にはS. maltophiliaについては様々な交絡因子があるので、専門家による判定が必要。
- BSACはStenoについて、ラボの感受性試験と臨床効果には相関があると指示するデータはない、と身も蓋もない勧告をしている。
- 複数併用によるシナジーもin vitroではあるが、シナジーをテストすること(たとえばcheckerboardやtime-kill curveを使うなど)の臨床的な意義はよく分からない。
-
- というわけで、治療についてはよく分からない。
- とりあえず、感受性のあるものから選んだ方がよいだろう。
- 難治例では、併用療法も考慮
- 単独ではco-trimoxazole(ST)が第一選択。静菌的。重症例ではPCPと同じ量を使った方がよい。15mg/kg/day
- STは末梢の単球からのTNFα産生を抑制するが、これが臨床的にどういう意味があるのかは分からない。
- 大抵のペニシリンやセフェム、そして全てのカルバペネムは使えない。β−ラクタマーゼ阻害薬を噛ませればOKかも。
- STが使えないときのセカンドチョイスは、in vitroから得られたデータを元に、ticarcillin clavulanic acid。面白いことに、これはstenoには静菌的
- aztreonam とclavulanic acid (2/1か1/1)もよい。ticarcillinを加えるとさらによい、ということはTimentinとアザクタムか。
- ceftazidime単独療法、cefoperazone, cefepimeにも報告あり。ただし、ceftazidimeとcefepime曝露そのものがsteno感染のリスクファクター。セフェムにβ−ラクタマーゼ阻害剤を入れてもダメみたい。
- シプロやlevoよりもclinafloxacin, gati, moxi, trovaのような新しいキノロンはよい。どのキノロンがベターかについては不明。耐性もおおい。
- minocycline, doxycyclineなどのテトラサイクリンやtigecycline(glycylcycline)もin vitroではよい。
- アミノグリコシドは大抵ダメ。
- polymyxinはOK.
-
- STがダメなときは併用療法が推奨される。併用レジメンに決まりはないが、、、

archeo-epidemiologic に考える。

NEJMから、archeo-epidemiologyという観点から過去のパンデミックを疫学的に分析し現在の対策に光を当てる提言が為されています。この論文は興味深かったです。感染の「波」waveの問題や、実は過去のパンデミックでも地域によって死亡率など特徴が異なっていた、など、なるほど人間、過去から学ぶことはたくさんあるのだな、と感じさせました。以下は、訳文ではなく、サマリーです。

perspective H1N1 NEJM
- The Signature Features of Influenza Pandemics — Implications for Policy
- content.nejm.org—NEJMp0903906 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMp0903906>
- Mark A. Miller, M.D., Cecile Viboud, Ph.D., Marta Balinska, Ph.D., and Lone Simonsen, Ph.D.
- Dr. Miller is the associate director for research, Dr. Viboud a staff scientist, and Dr. Balinska a research associate at the Fogarty International Center of the National Institutes of Health, Bethesda, MD. Dr. Simonsen is an adjunct professor and research director of the Department of Global Health, George Washington University School of Public Health and Health Services, Washington, DC.

This article (10.1056/NEJMp0903906) was published at NEJM.org on May 7, 2009. It will appear in the July 2 issue of the Journal.
- powered by OmniOutliner 3.8
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- 過去のインフルエンザパンデミック、A/H1N1 1918-19, A/H2N2, 1957-63, A/H3N2 1968-70を考古疫学的(archeo-epidemiologic)に調査。
- 過去のパンデミックはウイルスサブタイプのシフト、若年者の高い死亡率、くり返しおきるパンデミックの波、季節性インフルエンザよりも高い感染力、そして地域によって異なるインパクトに特徴付けられる。最初の特徴のみが強調されるが、残り4つの特徴が鑑みられることは少ない。
-
    - 別の可能性としては、免疫の強化(immune potentiation)がおき、これが特定の年齢層に高い死亡率をもたらしたのかもしれない。
- 2つ目の特徴は20世紀のパンデミックの特徴である。若い人が死にやすい。1873年のA/H1の曝露が45歳以上の成人に、1918年からのパンデミックに対する防御能を与えたのかも知れない。似たようなメカニズムで、1968−1970のパンデミックで77歳以上の死亡率が低かったことが説明できるのかも知れない。1892年のH3の抗体が残っていたのかも知れない。
- あるいは、ことなるキャリアをもつ細菌による二次感染の可能性もあるだろう。
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- 3番目の特徴、流行の波は20世紀の3つ全てのパンデミックでおきている。死亡率も高まっていく。
- 1918年、最初の波はヨーロッパとアメリカで、相対的には死亡率は低かった。この波で部分免疫がつき、死亡率は下がったのかも知れない?。
    - Andreasen V, Viboud C, Simonsen L. Epidemiologic characterization of the 1918 influenza pandemic summer wave in Copenhagen: implications for pandemic control strategies. J Infect Dis 2008;197:270-278.
- 1957年のA/H2パンデミックでは3つの波があったが、1959年と1962年の冬に死亡率は高まっていた。
- 1968−70では、ユーラシア大陸で最初に軽いインフルエンザが起き、その後の波で死亡率は高まっている。
- 何故波が起きるのか?ウイルスがホストに適応しているからか?地理的な理由か?季節の理由か?人の免疫によるのか?いずれにしても、次にくる波を予測させ、政策決定に価値を与えるかも知れない。
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- 第4の特徴は感染力の強さ。免疫ができていないので、感染しやすい。これも過去のパンデミック全てに見られる特徴。再生産数(reproductive number)はある一人が平均何人に感染させるか、の数であるが、これはスタディーやパンデミックによってまちまちである。細菌の研究では、1918−19の初期の軽い波では、R0は2−5くらい、通常の季節性インフルエンザでは平均1.3である。現在のパンデミックコントロールではより低いR0を想定しており、これは楽観に過ぎる見方といえるかも知れない。
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- 地域により発症率や死亡率がことなる、heterogeneityが大きいというのもパンデミックの特徴だ。これはその地域の免疫状態やインフルエンザの株、地理的な感染に与える影響、社会的な交流のあり方、気候などが影響しているのだろう。
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- A/H5N1の鳥インフルエンザは30カ国以上に広がり、400人以上に感染し、case fatality rateは50%以上であるが、パンデミックの可能性については専門家の間で意見が一致していない。このくらい毒性が強いとホストに適応できないであろう。他の鳥のサブタイプもパンデミックの可能性があるだろう。鳥のウイルスは呼吸器細胞受容体へのトロピズムがヒトと鳥では違うのだが、突然変異がちまちまくり返されたり、遺伝子の並べ替えが、ほ乳類の媒介(mixing vessels)でおきれば、新しいタイプの感染力の強いウイルスになってしまうかもしれない。これが、現行のブタH1N1株でおきたのかも知れない。
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- ウイルスの毒性のみならず、どのくらいすばやくわれわれが予防法や治療法を開発できるかにも将来のパンデミックの死亡数は影響されるだろう。サイトカインストームが起きるまえに、抗ウイルス薬や肺炎球菌ワクチンによってこれらの影響を小さくできるかも知れない。
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- 波はくり返しおきてきたので、地球規模でアクティブなサーベイランスを行うのが重要である。国家間の協力も大事。ワクチンの開発や治療法もそうやって開発されていくだろう。次の波が来るまえにワクチンを開発すれば影響は小さくできるかも知れない。もし、1968年のA/H3N2が現れた翌年にワクチンができていれば、ヨーロッパやアジアの死亡のほとんどは防ぐことができたであろう。
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- パンデミックの年齢特異的死亡のパターンはワクチンの優先度に影響を与えるべきであろう。それは年齢に応じたワクチンの効果にも依存する。余命を考慮する、といった倫理的な議論も必要だろう。すでに高齢者には抗体が存在しているかも知れず、またその免疫反応は強くないかも知れず、小児はより感染力が強いかも知れない。若い人ほどワクチンのターゲットとすべきなのかも知れない。もし1918年のようなシナリオなら。
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- 医学的でない介入、人と人との距離をとること、social distancingはR0が2以下では有用である。しかし、過去のパンデミックではそれ以上だったのだ。
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TRSIV

Triple-reassortant swine influenza A(H1)ってなに?という疑問を持ったので、読んだ論文。現行の問題とは直接はリンクしていないので、臨床的に意義の小さい部分ははしょりました。

triple-reassortant flu NEJM
- Triple-reassortant swine influenza A(H1) in humans in the United States, 2005-2009
- content.nejm.org—NEJMoa0903812 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0903812>
- powered by OmniOutliner 3.8
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- 鳥、ひと、ブタのtriple-reassortant swine influenza A(H1) virus(以下、岩田の独断でTRSIVと略す)は1990年代から北アメリカのブタ家畜で見つかっている。
- この報告は2005年から2009年2月までにおこったスポラディックな11例を報告するものである。
- 中央値は10歳(16ヶ月から48歳)、4人に基礎疾患。9人がブタの曝露。5人は直接接触、4人はさわらなかったがブタのいるところに行った。1例ではヒトヒト感染が疑われている。潜伏期は3−9日。熱が90%、咳が100%、頭痛が60% 、下痢が30% に起きている。白血球減少、リンパ球減少、血小板減少が見られることがあった。4人は入院し、2人が挿管を必要とした。4人はタミフルを処方。全員元気になった。
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- もともとブタは鳥、ひとのインフルエンザウイルスを感染することが知られており、reassortmentの媒体となりうると考えられてきた。
- 1930ー90年代、ブタのブタインフルエンザウイルスは主に、古典的なH1N1であり、ほとんど変化がなかった。
- しかし、1990年代後半、H1N1, H3N2, H1N2のTRSIVが北アメリカのブタ家畜で主流となってきた。人や鳥のウイルスの断片も含まれていた。
- ブタの発熱の原因としてのインフルエンザは1931年から知られてきた。これは人の病気の原因として同定される3年前のことである。
- 1970年代から、ブタインフルエンザのヒト感染が報告されてきた。
- 世界的には50例以上の報告があり、たいていは古典的なSIVであった。ブタ関連の職業上の曝露が多かった。
- 古典的なSIV感染では7死亡例が報告されている。既往歴のないものも、妊娠など既往歴のあるものもいた。
- 症状は通常のインフルエンザと同じである。
- 持続するヒトヒト感染の報告は2009年4月まではなかった。
-
- 米国以外では、人のTRSIV感染の報告は二つある。
- 2005年以前、CDCは年間1−2例の古典的なSIVヒト感染の報告を受けていた。
- Emerg Infect Dis 2006;12:1132-1135
- J Clin Microbiol 2009 April 1 (Epub ahead of print).
- 2005年12月、CDCは米国初のTRSIV感染を見つけた。
- 2007年6月、動物由来を含む、新型インフルエンザAウイルス感染は届け出感染症と米国で定められた。
- 2005年12月以降、11例の報告があり、そのうち8例は2007年6月以降のものである。
- ちなみに、2007年以降このシステムで報告を受けたのは、TRSIV感染のみ、、、
-
- 報告やラボの詳細は省略、、、、
-
- アブストラクト以外の情報
    - 8人は18歳以下
    - 7人は男性
    - 全員、米国中西部あるいは南部に住んでいた。
    - 36%は8月、9%は10月、18%は11月、18% は12月、そして9%(1例ずつ)は1月と2月に報告されている。
    - 8例では、ブタにも症状があった。
    - 潜伏期の中央値は3.5日(3−9日)
    - 基礎疾患は、よくわからない免疫不全、湿疹
    - 少なくとも3人は季節性インフルエンザのワクチン接種あり。
    - 一人には結膜炎あり
    - 体温の中央値は39.7度(38.5−40.4)
    - 迅速検査陽性例もあり 詳細は不明、、、
    -
    - 挿管では、48歳の女性、喫煙、GERD、喘息、吸入ステロイドあり。気道からインフルと緑膿菌みつかる。19日の入院で元気に退院。タミフルは入院11日で使用。
    - 他には、26歳既往歴なしの男性が、肺炎、敗血症で入院。挿管、低血圧、短期の昇圧剤使用あり。抗菌薬とタミフルで治療。タミフルは入院後19日目に使用。30日で退院。
    -
    - ウイルスの属性としては、人のH1との交叉反応はなく、ワクチンは効かなそう
    - タミフル、リレンザには感受性あり。
-
-

アメリカの新型インフルまとめ

日本人患者が発生しました。報道を見る限りでは、国内流行の可能性は(今は)少ないようですね。

さて、

NEJMでH1N1特集をやっており、米国での疫学調査を報告しています。まとめてみたので(翻訳ではなく、サマリーです)、ご覧ください。図や表はきれいなので、原典をご覧ください。例によって固有名詞などの翻訳の厳密性は適当です、、、

これを見ると、米国でH1N1が同定されたのは、けっこう偶然の賜物だったようです。ただし、CDCやWHOに検体を送るプロトコルができていたり、ブタ用のプライマーがあらかじめ準備されていたなどの、普段の準備がしっかりしていたからとも言えます。その後の全国調査への動きも素早かった、、、、、フレミングがペニシリンを発見したように、偉大な発見は準備されたこころ(prepared mind)に訪れる、というところでしょうか。

サマリーなので、著作権は問題ないと思うけれど、NEJMさん、大事な情報なので許してね、、、

H1N1 NEJM powered by OmniOutliner 3.8

- Emergence of a novel swine-origin influenza A(H1N1) virus in humans
- content.nejm.org—NEJMoa0903810 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0903810>
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- アブストラクト
- S-OIVが米国で同定されたのが、2009年の4月15日、17日。それぞれ異なる場所から。
- これはメキシコやカナダで見つかったのと同じもの
- この総論では人S-OIV感染642症例を叙述するものである。確定診断はCDCのRT-PCRで行われた。
- 4月15日から5月5日まで642症例が41の州で見つかっている。
- 年齢は3ヶ月から81歳。60%が18歳以下。
- 18%にメキシコの旅行歴。16%は学校でのアウトブレイク
- 94%に発熱、92%に咳、66%に咽頭痛。25%に下痢。25% に嘔吐。下痢か嘔吐は38%(これは季節性インフルよりおおい)
- 399人で入院の有無が確認され、そのうち39人(9%)が入院している。
- 22人の入院データがあり、12例では重症季節性インフルエンザの症状。11例で肺炎、8例でICUケア、4例で呼吸不全、2例は死亡。
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- triple-reassortant swine influenza virusは人、ブタ、そして鳥のA型インフルエンザウイルスの遺伝子をもっている。
- このウイルスは1998年から米国のブタに見つかっており、2005年から2009年には人で12例が見つかっている。ただし、2009年にCDCが同定したのは過去のものとは異なる、新型。
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- 3月30日、カリフォルニア、San Diego Countyで、喘息をもつ10歳の男の子が発症。4月1日に受診して治療を受けた。1週間で回復した。鼻咽頭検体から診断検査の臨床試験のために検体は用いられた。外部のラボで、人H1とH3陰性のA型インフルエンザとRT-PCRで同定された。4月15日、CDCはこの検体を受け取り、ブタ由来の新しいインフルエンザウイルスを同定した。同日、CDCはカリフォルニア州department of health(DOH)に連絡し、州と地域、動物保健担当者による疫学調査が開始された。このウイルスはtriple-reassortant swine influenza virusで北アメリカのブタ家畜に蔓延していると知られているものと同じ遺伝子を持っていた。2つの遺伝子はノイラミニダーゼとマトリックス蛋白をコードしており、ユーラシアの有症状のブタから得られた遺伝子によく似ていた。
- 3月28日、カリフォルニア、Imperial countyで9歳の女の子が発熱、咳をした。先の男の子とはなんの関係もない子であった。2日後、外来にいって、インフルエンザサーベイランス計画にこの子は参加することになった。鼻咽頭検体がここでとられた。アモキシシリン・クラブラン酸で治療され、そのままよくなった。この献体は海軍のHealth Research Center, San Diegoに送られ、サブタイプや同定の不可能なAインフルエンザウイルスが見つかった。その遺伝子は先の患者(patient 1)によく似ていた。4月17日、両症例はWHOに報告された。これはInternational Health Regulationsに則ったものであった。
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- 疫学調査によると、両患者には最近のブタとの接触はなかった。プロトコルに則り、新型のS-OIV感染についてサーベイランスの強化が行われた。
- CDCは発熱患者についての推奨を発表した。その報告クライテリアは以下の通り
    - S-OIV感染のあった地域に住んでいる、あるいはその旅行歴
    - その地域で病人と接触した(発症7日以内)
    - 疑ったら、鼻咽頭検体をとって、州や地域の保健担当者に報告すること。
    - 州の公衆衛生担当のラボはサブタイプできないAインフルエンザを全てCDCに送るよう指示された。
    - 米国では急性発熱性呼吸器疾患でS-OIVがRT=PCRか培養で同定されたものを症例定義とし、これを報告させた。
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- CDCはRT-PCRで同定を開発しており、これは季節性H1,H3,とりH5,とBインフルエンザを同定できる。
- ブタインフルエンザA(H1,H3)を同定できるプライマーとプローブは最近開発され、これはブタインフルエンザのヒト感染を見つける目的であった。
- これらを活用して、今回のS-OIV同定アッセイも素早く開発された。
- 詳細は以下に
- www.who.int—CDCrealtimeRTPCRprotocol_20090428.pdf. <http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/CDCrealtimeRTPCRprotocol_20090428.pdf.>
- 49のウイルスが13の州から培養された。これを遺伝子同定に用いた。
- 詳細は以下に
- content.nejm.org—DC1 <http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0903810/DC1>
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- 学校でのアウトブレイクは、サウスカロライナ(7例)、デラウエア(22例)、テキサス(5例)、ニューヨーク(70例)で見つかった。
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- 40%が10−18歳の間、51歳以上はわずか5%。
- 入院患者は19ヶ月から51歳。18%が5歳以下。1患者は妊婦。41%に慢性基礎疾患。自己免疫性疾患で免疫抑制剤を飲んでいたり、ダウン症で先天性心疾患があったり、喘息、RA、感染、重症筋無力症、VSD、えん下障害、慢性低酸素血症など。入院患者では32%にメキシコの最近の旅行歴。50% (11例)で肺炎、1例で縦隔気腫、1例で壊死性肺炎、1例で膿胸あり、ドレナージ。ただし、培養は陰性。8例がICU,、4例は挿管。14例(74%)はタミフルを処方されている。
- 5月5日までに、22例(82%)は全快。
- 22ヶ月の重症筋無力症のこと、33歳の妊婦が死亡。23ヶ月と30歳女性で既往歴なしが、いまだに重篤な状態。
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- ウイルス
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- 6つの遺伝子のセグメントはPB2, PB1, PA, HA, NP, NSは以前から知られていたtriple-reassortant swine influenzaと同じ。これは北アメリカのもの。
- NAとMたんぱくはユーラシアにあるブタのインフルエンザAに似ている。ここが、以前とのちがい。図3にきれいにちがいが比較されている。
- 37のウイルスではおそらくタミフル、リレンザに感受性あり。ただし、臨床効果は現段階では不明。でも、CDCはいまのところ使用を推奨。FDAは1歳以下の使用を緊急承認した。
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- なぜ若い人に多いか、の議論
    - 感受性のちがい?
    - 社会構造のちがい
        - 高齢者ではもっとあとになって感染?
    - 以前からのS=OIVからの交差防御?これは1976年のブタインフルエンザワクチンの血清学的スタディーから示唆されている。
    - バイアス?若い人でより検査?
    - 確定例は過小評価?

GVHDのまとめ

ランセットのGVHDのまとめです。よく見るのに、あまりまとめて勉強してきませんでした。それにしても、OmniOutlinerを使うようになってこのようなサマリーの作成時間が激減です。助かってます。

GVHD
- Lancet 2009;373:1550-61
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- 造血細胞移植(HCT)の合併症としてGVHDは有名
- HCTは年間25000例行われている。
- graft versus tumor, graft versus leukemia effectにより悪性疾患は治療される。
- ドナーの白血球注入と骨髄を破壊しない(non-myeloablative)は状況、臍帯血移植を行うことで、ここ数年で同種HCTの適応は広がった。特に高齢者に広がった。
- 感染症の予防、サポーティブケア、DNAに基づく組織のタイピングもアウトカムを向上させている。
- それでも、GVHDは問題だ。
- この5年間で、血縁関係のないドナーの移植は倍増するだろう。つまり、GVHDも増えるということだ。
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- 50年前、BillinghamはGVHD成立に必要な3つの条件を挙げた。
    - 1.グラフトに機能している免疫細胞がある。
    - 2.レシピエントが組織抗原を発現しており、それは移植ドナー側にはない
    - 3.移植細胞を除去する能力が患者にない。
- 免疫細胞は、今ではT細胞だと分かっている。T細胞が含まれている組織を除去できないときに、GVHDがおきる可能性がある。免疫抑制がある場合に特にリスクは高い。
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- ホストのタンパク質にドナーのT細胞が反応するとき、GVHDがおきる。
- 特に重要なたんぱくは、人白血球抗原HLA。これをコードするのがMHC
- クラスI HLA(A,B,C)は遊郭細胞のほとんどで発現される。
- クラスII(DR, DQ, DP)は造血細胞(B細胞、樹状細胞、単球)で発現されるが、炎症や外傷があると他の細胞でも誘導される。
- 急性GVHDの頻度は、HLA蛋白のミスマッチの程度と直接相関している。
- だから、ドナーとレシピエントは、HLA A,,B,C,DRB1をマッチさせておいた方がよい(これを8/8マッチと呼ぶ)。しかし、臍帯血移植ではこのミスマッチは寛容される。
- にもかかわらず、HLAをマッチさせた移植でも40%程度で急性GVHDを発症し、高容量のステロイドを必要とする。
- これはHLA以外の遺伝子のちがいによるものだ。minor histocompatibility antigenと呼ばれる。この抗原のうち、HYやHA-3はほとんどの組織で発現され、GVHDやgraft versus leukemiaのターゲットとなる。HA-1やHA-2は造血細胞(白血病細胞含む)で多く、graft versus leukemia effectを高め、GVHDを減少させることが可能になるかも知れない。
- GVHDのリスクファクターにはサイトカインの多様性があり、これが古典的なサイトカインストームに関与している。TNFα、IL10、IFNγがいくつかのスタディーでは関与している、とされた。innate immunityを司るたんぱくの多様性、例えば、nucleotide oligomerisation domain 2とかkeratin 18受容体も関与している。ドナーの最適化にはHLAとHLA以外、両方の遺伝子の因子が重要なのだ。
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- 臨床症状
- 急性GVHDは移植100日以内、慢性GVHDはそれ以降と定義されてきた。
- で、最近ではNIHの定義でlate-onset acute GVHDを100日後に設定し、overlap syndromeというacute, chronic両者の性格を持つものも規定している。
- 急性GVHDに多いのは皮膚、消化器、そして肝の症状である。
    - maculopapular rash
    - 悪心、嘔吐、食欲不振、水溶性下痢、強い腹痛、血便、イレウス
    - 高ビリルビン血症
- 皮膚所見がいちばん頻度が高い。かゆい。水疱や潰瘍を作ることもある。病理的にはepidermal rete pegsのアポトーシスが見られる(?)。dyskeratosis, exocytosis of lymphocytes, satellite lymphocytesがdyskeratotic epidermal kerainocytesの側に、血管周囲のリンパ球浸潤も真皮に見られる。
- 腹部では下痢、嘔気、嘔吐、腹痛など。分泌性の下痢で1日2l以上になる大量の水様便。血便は予後不良因子で、潰瘍形成に伴う。画像では内腔の拡張や腸牆壁の肥厚があり、ribbon signと呼ばれる所見がCTで見られる。air fluid levelがあればイレウスを考える。crypts のそこにアポトーシスがあったり、膿瘍があったり、表面上皮の平坦化や損失があったりする。
- 肝機能異常は、veno-occlusive disease(VOD)や薬剤性、ウイルス感染、敗血症、iron overloadとの区別が困難である。病理ではendothelialitis, リンパ球浸潤を門脈周辺に、胆管周囲炎、胆管破壊が認められる。肝生検は、血小板減少があったりして滅多に行われない。GVHDは除外診断になるのだ。
- 重症度はIからIVまで、mild, moderate, severe, very severeと呼ばれる。IIIでは5年生存率が25%、IVだと5%。
- 完全にHLAがマッチしていてもGVHDは35−45%で発症。ミスマッチが一つあれば60−80%。臍帯血であればリスクは減る。35−65%、、、、
- 慢性GVHDは再発の次に死亡に関与している。
- 急性GVHDが慢性化する進行性(progressive)、急性は治って、その後に発症する慢性型(quiescent)あるいは急性抜きで発症するde novoの3種類がある。
- リスクファクターは急性GVHDの既往と、年齢
- だから、急性GVHDを予防するのは慢性GVHDの予防に有用。
- 症状は自己免疫性疾患みたい、、、
    - 皮膚の色素剥奪、脱毛、多形皮膚萎縮症、扁平苔癬、強皮症
    - 爪の破壊
    - 口腔内潰瘍や硬化による開口制限、扁平苔癬様の病変、口腔乾燥
    - ドライアイ、シッカ症候群、結膜炎
    - 筋膜炎、筋炎、関節拘縮など
    - 膣硬化、潰瘍
    - 食欲不振、体重減少、食道ウェブ、狭窄
    - 黄疸、トランスアミナーゼ上昇
    - 閉塞性、拘束性障害。閉塞性細気管支炎、胸水
    - ネフローゼ症候群(まれ)
    - 心外膜炎
    - 血小板減少、貧血、白血球減少
    -
- pathophysiology
    - 読んだけど、書くのは大変なので省略、、、
    - ホストの組織障害、APC活性がドナーのT細胞を刺戟、Th1がCD4細胞、CD8細胞のCTLを介してTNFαやIL1をだし、ターゲット細胞の炎症やアポトーシスを促す。IFNγを介してマクロファージを経由するパスウェイも、、、
    -
- 予防
    - むずかしい
    - GVHDを予防しようとすると、グラフト不全や原疾患再発、感染症、EBV関連リンパ増殖性疾患のリスクを高めてしまう。
    - partial T-cell depletionはまだ研究段階。
    - 抗CD54モノクロナル抗体alemtuzumab。GVHDは減ったが再発と感染症が増えた、、、生存率に差はなし、、、
    - ex-vivo antibodyでドナーtT細胞のアナジーを誘導する方法。追試がない、、、
    - in vivoで抗T細胞抗体を投与するスタディーも。副作用がおおい。rabbit anti-thymocyte globulinはGVHDは減らしたが、生存率には差が出なかった。
    - 細胞内酵素のcalcineurinを阻害するcyclosporineやtacrolimus。副作用は、低マグネシウム血症、高K血症、高血圧、腎毒性。microangiopathyや神経毒性も。microangiopathyがおきるとあまり血漿交換に反応せず、死亡率は高い。posterior reversible encephalopathy syndromeもcalcineurin inhibitor投与で1−2% におきる。2,4ヶ月後に投与量を減らすと副作用も減る。
    - 通常、calcineurin inhibitorはメソトレキセートなど他の免疫抑制剤と共に使う。これが好中球減少や粘膜障害の原因となるため、mycophenolate mofetilを代わりに使うことも。こっちのほうが同じ予防効果で副作用は少ないかも。
    - sirolimusはtacrolimusに似ているが、calcineurinは阻害しない。tacrolimusと併用すると効果が大きい。ただし、thrombotic microangiopathyが問題。
    - reduced-intensity conditioningは、免疫抑制を通じて、ドナーT細胞がうまく生着し、リンパ球系の造血を抑えることを目的としている。従って、myeloablativeという言葉はちょっと間違い。炎症を促すサイトカインは減り、GVHDが減り、急性GVHDオンセットも遅れるかも。ただし、慢性GVHDの発症に急性がかぶる、overlap syndromeはおきるかも知れない。
    -
- 治療 急性
    - ステロイド。
    - grade Iでは局所のステロイド
    - 重症度が増せばステロイドも増やす。
    - ただし、ステロイドで反応するのは半分以下。重症では治りにくい。
    - anti-thymocyte globulinの併用で反応は増えなかった。この効果は限定的か
    - mesenchymal stromal cellsの点滴(ドナーや第三者からもらって培養)はいいかも。ステロイド抵抗性GVHDの55%で反応あり。
    - たいがいphotopheresis。白血球をたいがいに集め、DNA-intercaating agent 8-methoxypsoralenと一緒にインキュベートし、紫外線に当てる。細胞のアポトーシスを促し、抗炎症作用が強く、固形臓器移植の拒絶予防に有効である。RCT待ち。
    - TNFαブロック。TNFαはAPCを活性化させる。etenerceptはステロイドと併用して、急性GVHDの70% に効果あり。
    -
- 治療 慢性
    - よく分からない
    - ステロイド?
    - ステロイド±calcineurin inhibitorのRCTでは差なし
    -
- 合併症
    - 細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、薬の副作用など数多い。graft failureも。
    - フルコナゾールなど真菌予防を
    - PCP予防も。
    - CMVpreemptive treatmetnも考慮
    - 帯状疱疹
    - ケアするものにワクチンを
    - IgG2, G4欠損があるので、施設によっては免疫グロブリンが投与されることもある。
    - カテ感染に注意
    - ステロイドの副作用も注意。
    - calcineurin inhibitorの腎不全を考え、経口で水分励行を
-
- 将来
    - GVHDのバイオマーカーが見つかれば、preemptive txも?

DICの治療、、

すでに英国のガイドラインは紹介したのですが、

エキスパートコンセンサスなるものができてます。血栓止血誌20(1):77-113, 2009

ウェブでちょっと探したのですが、閲覧できず。将来的には公開予定らしい。
www.jsth.org
でも、正直言って、これを読んでもどうしてよいのかよく分からないなあ、というのが正直な感想です。ずいぶんと変な内容でした。

さらに、メディカル朝日に製薬メーカーのスポンサーつきで記事が載っていて、こちらはさらにへんてこな内容です。ものすごく、変な内容です。
メディカル朝日 2009年5月号 28−29

「DICおよびその基礎疾患となる敗血症は生死にかかわる病態で、医療倫理的にもRCTには馴染まない。従って、エビデンスが乏しいということになる」
と書いてあるのに、
「DICおよびその基礎疾患である敗血症はATIIIなどの薬物療法の進歩で、予後の改善が期待できるようになっている」
なーんて書いてあります。どうなってるの?こういう露骨なのは、やめてほしいなあ、もう。

緊急性が高くて死亡率が高い疾患でも、心筋梗塞のようにいくらでもRCTが行われている疾患はあります。日本独自の事情はさておき、国際的にまったくエビデンスがないことを、それを理由にするのは解せないですね。

いずれにしても、大切なのはまっとうな情報開示であってエビデンスの質はその次です。健全なlimitation, concessionが説得力を高めてくれるのです。それを欠いていると、よけいに萎えてしまうのでした。

本日のJクラブ

Polymerase chain reaction of secA1 on sputum or oral wash samples for the diagnosis of pulmonary tuberculosis

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口ですすいで、結核診断できるか?というもの。リソースプアな場所なら使えるか、、、

Impact of continuous venovenous hemofiltration on organ failure during the early phase of severe sepsis: a randomized controlled trial

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重症敗血症・敗血症性ショックで腎機能正常なのにCHDFまわしても意味ない、どころかむしろ有害、、、これは知っておいて良い、、、

CMV quantitative PCR in the diagnosis of CMV disease in patients with HIV-infection - a retrospective autopsy based study

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CMVの定量PCRは診断に使えるか???特異度は高いかも、とくにタイターが大きいか繰り返して陽性なら、、ただし、死亡例ばかりが対象で、applicabilityが、、、、

鼻咽頭サンプルの採取の仕方(NEJM)

鼻咽頭サンプルの採取の仕方。10−15秒とは結構大変ですね。モデルの女性の方、ご苦労様でした(けっこうつらかったでしょう)。

http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMe0903992/DC1

グーグルを使ったマップも出ています。これも数が多くなりすぎて、あまり意味をなさなくなってしまいましたが、、、

http://www.healthmap.org/nejm/

もうひとつ、NEJM

NEJMの新連載(?)です。議論の余地のある話題で、それぞれ専門家の異なる見解から投票しましょう、というものです。答えは一つとは限らない、、、、

さて、今回のお題はC型肝炎です。本当、肝炎のマネジメントってよく分からない、という事実をよく表現していると思います。

NEJM

http://h1n1.nejm.org/

NEJMが新型インフルエンザ特集をやっています。まだ読んでいませんが、これをまたまとめてみたいと思います。

quote of the day

スペイン風邪の話をしたので、そのときのフランス首相、クレマンソーの言葉

A man who has to be convinced before he acts is not a man of action. You must act as you breathe.

納得しなければ行動できない人は、行動力のある人ではない
呼吸をするように行動すべきだ。

ことばの根源的な意味を

雑誌のインタビュー記事を校正していてびっくりするのは、自分の意図していない内容がいとも簡単に折り込まれていることです。まあ、ある程度は仕方がないとはいえ、ものすごいフィクション性を感じます。

「大学への異動にいっぺんの迷いもためらいもなかった、、、」

いやいや、迷いまくり、ためらいまくりましたよ。

「壮絶な日々の中で貴重な指針をつかんだ満足感が、笑顔の端々ににじむ、、、」

べつに壮絶な日々なんて送ってないし、満足感なんて一度も抱いたことはないなあ。ぼくは飢えて、乾いています。今の自分に常にとても不満です。

ぼくの周りには、「ぼくはちゃんとやっています」と声高に主張する人たちはいます。が、そういう人間に「ちゃんとやっている人間」は一人もいない。

「ぼくだって努力しているんです」とも言われます。でも、だれだってみんな努力をしているのです。自分なりにベストを尽くしているのです。ベストを尽くすのは前提であって目的ではないのです。

すくなくとも、プロは一所懸命やっていることを自己正当化の根拠にしてはいけないと思います。「ぼくだって誰よりも一所懸命練習しているんです」と打率の上がらない打者は口が裂けても言わないはずです。

ちゃんとやっている人は、今の自分に絶対に満足できない、乾いた、飢えた人たちなのだから。満足した瞬間に、大きなものが失われてしまうのだから、、、これは根源的なパラドックスなのです。

結局の所、人間とは自分の耳に入れたい情報しか耳に入れない存在なのでしょう。逆にリスク下においては、そのような聞き手の恣意性を十分に勘案しておかないとうまくいかないのでしょう。「ちゃんといったつもりです」では通用しないのです。

「19時までには参ることができるよう、最善を尽くします」
「じゃあ、19時には絶対にお見えになるのですね」
「いえいえ、そうは言いませんでした。、、、最善を尽くす、といったのです」
これは最近経験したこと。本当に、人間とは自分の都合の良いようにしか言葉を解釈しないようですね。

ある新聞社の取材

「先生は、新型インフルエンザについて国民はどのくらいリスクの意識を持っておいた方がよいと思いますか」
「人の意識は、その人が決める問題だと思います」
「、、、、」

僕たちはリスクについて、情報を開示することができるでしょう。何が怖くて何が怖くないのか説明することもできるでしょう。でも、今あるリスクをどうとらえるべきか。それは各人各様であり、メディアや国や専門家が、「このくらい怖がりなさい」と上から目線で規定すべきものではないはずです。

なるほど、自動車事故を怖がって家から一歩も出ないでひきこもることは極端に不健全な態度でしょう。家からででてくれば、よい。自動車事故などありえない、とシートベルトもせず、脇見運転で70kmオーバーも極端でしょう。もうすこしリスク意識をもったらよい。けれども、その間は大抵グレーゾーン。自動車事故と日常生活の利便性はトレードオフの関係にあり、トレードオフの関係にしかないのです。それが、リスクとつきあっていく基本中の基本なのです。だから、リスク0%かリスク100%を目指さない限り、その間のどの辺に線を引っ張るかは、各人で決めるしかないのです。僕たちにできるのはその判断の根拠になる情報を提供するだけ。どう飲み込むかは、その人次第。その時に大切になるのが、言葉に対する感受性。

自分の感受性くらい、自分で守れ、ばかものよ
茨木のり子

こんなときだからこそ

こんなときだからこそ、本を読んでおきたい。新型インフルとはなんの関係もない本がよいです。できれば、言葉の美しさが再確認できる本ならなおさらよいでしょう。言葉に対する感受性を高めておかないと、こういうときは乗り切ることができないのです。

待ちに待ったチャンドラーの村上訳がいつの間にか発売されていて、本屋さんで偶然気がつきました。偶然の邂逅って素晴らしいですね。

さよなら、愛しい人

村上春樹はどちらかというと直訳調、英語が透けて見えるような翻訳をします(彼の小説も英語的ですが)。今回はさらに、わざと木訥な訳語を使って異化作用を狙っているような気すらします。気のせいかも知れませんが。

前作、ロング・グッドバイの装丁が素晴らしいと(軽装版じゃない奴)感心したのですが、今回はハードボイルドの通俗的なたばこの煙でちょっとがっかり(内装はきれいです)。本も見た目が大事です。そういえば、最近出した感染症診療Q&Aも通俗的な教科書的な装丁で、そこが気に入りませんでした。中身はそんなに悪くないのに、、、手に取る気が、しない。よだれのでない装丁なのです。

スペインかぜと、今の新型インフルと、そして今後の感染症界を考える

アルフレッド・W・クロスビーの「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」は西村秀一氏の美しい訳文もあって重厚な素晴らしい内容の本です。残念ながらいろいろな現実的制約のなかでこの本を精読する余裕は今はないので、移動時間を利用して、ざっと流し読みしました。

 2000万から4000万という途方もない数の命をたった1年足らずで奪ったspanish flu。実際には世界中で猛威をふるっていたのでスペインには申し訳ないのですが、しかし第一次世界大戦でやはり大量の命が失われていた世界にとって、命はあまりにも軽く、死はあまりにも日常的だったようです。だから、スペインかぜが世界にもたらした影響はその悲惨なエピソードの数々にもかかわらず、「軽い」ものだったのではないかとクロスビーは指摘します。第一次世界大戦というと「西部戦線異状なし」という胸にしみいる映画を思い出します。確かに当時は人の命はずっと今より軽かったのでしょう。カンボジアのような途上国に行くと、そこでは人の命がずっと日本やアメリカよりも軽いことが実感されるように、死に身近な環境であればあるほど、死は軽くなっていきます。

 特に興味深かったのが、パリ和平条約におけるウイルソン米国大統領の葛藤とインフルエンザが外交上もたらした影響でした。今では考えられないことですが、1910年代のアメリカは世界的には「外交下手」で有名で、英国やフランスにいいようにあしらわれていたようです。司馬遼太郎の小説で大久保利通がやはり外交で大いに苦労したエピソードを紹介したことがありましたが(タイトル失念)、アメリカも又、冷静になって考えてみれば世界の新興国のひとつで、発展途上だったのでした。ウイルソンは国内のとりまとめに苦労し、外交に苦労し、そしてインフルエンザに苦しめられたのでした。

 また、スコット・F・フィッツジェラルドが第一次世界大戦に従軍したのは有名ですが、彼の小説「楽園のこちら側 、This side of paradise」にでてくるダーシー神父はのモデル、ウェイ神父はスペインかぜで命を落としていたのでした。さらにおどろくことに、ヘミングウェイが従軍していた時ミラノで知り合った女性、アグネス・フォン・クロウスキーもインフルエンザで命を落としたのでした。クロウスキーはあの「武器よさらば」のキャサリン・バークレーのモデルだったのでした。なんという驚きでしょう。

 西村氏のあとがきも秀逸です。学ぶところのおおい本書の、日本語版への序文にはこう書いてありました。アメリカの公衆衛生関係者のあいだで流行っているジョーク。

「19世紀のあとには20世紀が続いたけど、20世紀のあとに続くのは何かわかるかい?・・・・19世紀さ」

 今回の新型インフルエンザの問題でぼくが新聞記者やテレビに聞かれる頻出質問があります。
「今回の国・政府の対応についてどう思いますか」
 ぼくはそれを語る立場にはないし、あまり語る気もありません。彼らが一所懸命でやっているか。もちろんやっているでしょう。使命感に燃えているか?もちろんです。勇気を持ってやっているか。相当な覚悟を持って取り組んでいるはずです。心も体もぼろぼろにすり減らしているはずです。彼らのプラン、思考、アクションは妥当であるか?それをほんとうに知るには、あと数年を要するでしょう。
 今の段階で言えるのは、総じて、ぼくは国や自治体(ここでは神戸市)の対応に満足している、ということです。彼らは本当によくやっていると思う。決意を持って仕事に取り組み、勇気を持って事に取り組んでいる。

 決意と勇気

 思えば、これこそが日本の感染症界に決定的に欠如した問題点なのでした。日本の感染症界は世界から見ると20年は取り残されていますが、それは技術や知識の問題というよりは、決意と勇気の欠如なのでした。今の問題点を直視し、それを自分の問題として受け止め、逃げずに取り組む決意と勇気が行政にも学術界にも医学会にも製薬業界にも足りないのでした。「ぼくではない、誰かの問題」にされてしまっているのです。
 去年、厚労省の役人といろいろ話をしましたが、90% 以上の人たちはこの「ぼくではない誰かの問題」病にかかっていて、真剣に我が事としてぼくの話を聞いてくれませんでした。結核感染症課に行くと、「それは別の○○課の問題」といわれ、○○課に行くと××課に行けと言われ、××課ではそれには担当者がいない、などと言われたのでした。彼らの目は腐った魚のように濁っており、なるほど超過勤務で肉体が疲れている(国会答弁の原稿書き?)ことは理解しましたが、そこに崇高な精神や勇気をかけらほども見つけることはできませんでした。ぼくは彼らに心底失望し、がっかりしたものでした。
 地方自治体も似たようなものでした。千葉県で麻疹が流行した時、抜本対策を提案した(「やってください」という要望ではなく、「いっしょにやろう」といったのです)とき、担当者は「となりの茨城県でもやっていないのに、どうして私たちが」と言ったのでした。千葉県では麻疹は毎年のように流行していましたが、その県の感染症担当者にとってはそれは「ぼくではない誰かの問題」なのでした。2008年、神戸大学での麻疹対策で一番最初にやったのは、「これは僕たちの問題です」と全てのひとに納得してもらうことでした。

 でも、新型インフルエンザはあからさまに今の問題で、二年後に別の部署に異動する人たちにとってもとてもとてもさらっと流せる問題ではありません。あまりに圧倒的な問題で、「ぼくには関係ありません」とも言いづらい。海外は緊張しており、国内も緊張している。インターネットの普及も一因でしょう。CDCやWHOがどのように考え、どう判断し、どう動いているか、われわれのような市井の人間でもすぐに分かります。数十年前とちがい「日本だけが世界と違う」ことに寛容ではない社会なのです。

やれば、できる

 条件さえ整えば、日本人も決意や勇気を持って事に取り組むことはできるようです。なんでもかんでも「日本独特の文化や考え方」に転嫁することで逃げ回ることはできず、その必要もないことは分かります。願わくば、この、今の気持ちを失わないように、その他の問題についても取り組んでいきたいということです。また、「ぼくではない誰かの問題」なんて言い出さないようにしてほしい。

 さて、ぼくたちは最低数ヶ月、あるいは数年のスパンでこの問題とやり合わないといけないかも知れません。張り切りすぎると燃え尽きます。疲れ切ったボクサーは一度腰を下ろしてしまうと立ち上がるのが苦痛で仕方がありません。今は使命感と高揚感がわれわれを突き動かしてくれますが、使命感と高揚感だけではいつまでもうごけるものではありません。休息できる時に休息しましょう。笑える時は笑顔を見せましょう。眠れる時は眠りましょう。深刻で張り詰めて、ヒステリックな声ばかりに耳を傾けず、時には美しいささやき声にも耳を傾けましょう。あと数ヶ月経っても、数年経っても、この努力が続けられるように。

新型インフルマニュアル改訂

「51.pdf」をダウンロード

改訂版です。どんどん変わるかも知れません。ただし、これは未知の疾患に対するマニュアルなので、このマニュアルが絶対的な正当性を保障したり主張したりするものではありませんし、副作用など患者に対する有害事象のリスクが皆無というわけでもありません。使用に際してはくれぐれもご注意ください。

新型インフルエンザ・マニュアル(暫定版)

神戸大学病院のマニュアルです。感染制御部の阿部泰尚先生が中心になって作成されました。まだ暫定版なので今後変更はあるかと思いますが、文字情報をアップしておきます。

新型インフルエンザ感染対策・診断・治療マニュアル
平成21年4月28日改定

Ⅰ 感染対策マニュアル
1.    感染経路
現時点では, 新型インフルエンザの感染経路について不明なところが多く,季節性インフルエンザの感染経路を参考に示す.
1.1 季節性,新型インフルエンザの感染経路
季節性インフルエンザの潜伏期間は1-3日間で, 感染者は発症1日前から,発症後3-5日目まで感染性を持つとされる.子供の場合は7日目まで感染性を持つとされる.
季節性インフルエンザの主な感染経路は飛沫であるが,粘膜・結膜への直接的な接触や,環境を介する間接的接触も感染経路となりうる.また,エアロゾルが発生しうる処置(気管内挿管や気管内吸引・ネブライザー・気管支鏡検査など)を行った場合の空気感染の可能性も示唆されている.
1.2    新型インフルエンザの感染経路
今回発生した新型インフルエンザの潜伏期間は現時点では不明であるが, 潜伏期間は長い場合で7日-10日と想定され, 感染者は発症1日前より発症後7日目まで感染性を持つと考えられている .
新型インフルエンザの感染経路は現時点で不明であるが,感染経路もしくは毒性が判明するまでは,飛沫,接触,空気の全ての感染経路を想定しておく必要がある. 

2.    感染対策(附録図参照)
2.1 感染対策の種類
2.1.1 標準予防策
 特定の病原体,もしくは診断の有無にかかわらず,全ての患者に対して全ての職員が行うべき感染予防策である.患者の血液・体液(汗を除く)・分泌物・排泄物・粘膜に対して適応され,曝露が予想されるときには適切に個人防護具(PPE)を使用し,適切に手指衛生を行う.
 標準予防策には以下のことが含まれる.
①    咳,鼻水,くしゃみを伴う患者の診療,ケアに当たる場合医療従事者は、手袋,サージカルマスク,ゴーグルを着用する.
②    患者と接する前後,手袋を外した後には手指衛生を行う.手指衛生は流水による手洗いと擦式アルコールによる手指消毒の2種類があるが,患者の排泄物を取り扱った後や目に見える汚染があるときには,必ず液体石鹸と流水による手洗いを行う.
以下に述べる感染経路別予防策(接触,飛沫,空気)は全て標準予防策に上乗せして行う.
2.1.2 接触予防策
  患者との直接,間接的(患者周囲の医療器具や環境)接触により容易に感染することが知られている病原体に罹患している患者に対して行う感染予防策.
①    患者は個室隔離することが望ましい.難しければコホート隔離も検討する.
②    入室前にPPEを装着し,退室前に処置した患者の室内でPPEを脱ぎ廃棄する.
③    環境整備を適切に行う
④    患者の移動を制限する
2.1.3 飛沫予防策
  飛沫によって感染する病原体に対して適応される.
①    患者は個室隔離することが望ましい.難しければコホート隔離も検討する.
②    やむをえず,他の疾患の患者と同室で管理する場合は,ベッド間の間隔を2m以上開け,必ずカーテンを引いておく.
③    患者の1m以内に接近する可能性がある場合には,サージカルマスクを着用する.
2.1.4空気予防策
飛沫核が空気中に飛散することによって感染を生じる病原体による感染.元来,結核,麻疹,水痘のみを対象とされてきたが,近年SARSやインフルエンザでも稀に空気感染が成立することが知られている.
①    患者を陰圧個室(陰圧個室には緩衝エリアとしての前室を設ける)に隔離する
②    前室に入室する前にN95マスクを着用し,前室で必要なPPEを着用する.退室前に室内でPPEを廃棄してよいが,N95マスクは退室後(前室の外)で外す.
③    患者の移動は基本的に禁止.やむを得ず室外に出すときには患者にサージカルマスクを着用させる.

2.2 新型インフルエンザの感染対策
2.2.1 封じ込めの段階(第3段階感染拡大期まで)
患者と1m以内,あるいは密室で診察,処置を行う場合については,標準予防策に加えて,接触,飛沫,空気感染予防策の全てを行う.
但し,季節性インフルエンザの感染経路は飛沫,接触が主な感染経路と考えられており,空気感染が起こるのは極めて例外的な事象であると考えられるため,患者と1m以上離れていて,密室でない場合についてはサージカルマスク着用でも十分と考えられる.
また,エアロゾルを発生する可能性のある処置(気管内挿管や気管内吸引・ネブライ
ザー・気管支鏡検査など)を行う際は空気予防策を追加する.
2.2.2 パンデミック期(第3段階蔓延期)
新型インフルエンザの詳細が解明されるまでは、患者と1m以内,あるいは密室で診察,処置を行う場合については,封じ込めの段階と同じ接触,飛沫,空気感染予防策の全てを行う.その他の場合は標準予防策+接触,飛沫予防策で対応する(予定).

Ⅱ. 診断・治療マニュアル
新型インフルエンザウイルスは現時点で出現していない.よって以下の項目はWHO, 厚生労働省等より新たなガイドラインが示された場合, 随時更新することを前提に作成している.
新型インフルエンザ発生後の診断方法・治療・曝露後予防の適応は, 発生段階もしくは抗ウイルス薬の供給量によって異なってくる.
ここではWHOのフェーズ4, 発生段階感染拡大期までとフェーズ5以降, 蔓延期以降に分けて述べる.
1.1 ワクチン接種
 現段階では新型インフルエンザに有効なインフルエンザワクチンは存在しない. 但し,従来型の季節性インフルエンザが同時に流行していると判断された場合については, 従来の季節性インフルエンザワクチンの職員への再接種も検討する. 
1.2 臨床症状
臨床症状は不明であるが, 季節性インフルエンザと似た症状(発熱, 咽頭痛, 呼吸器症状(咳, 呼吸困難等),下痢, 嘔吐)を呈する可能性が高いと考えられる.新型インフルエンザに対して誰も免疫を持たないため, 通常の季節性インフルエンザに比べ肺炎等を合併する患者が増える可能性や, A/H5N1のように肺炎やARDSを合併する重症例が出現する可能性も念頭に置いておく.
1.3 患者の振り分け及び診断
新型インフルエンザ発生後,初期には症例定義を用いた患者の振り分けを行い, 疑い患者に対しては保健所との連携のもと検査を行う.
フェーズが進行した場合, 全例に対する病原体別の患者の振り分けはほぼ不可能となるため重症度による患者の振り分けがより重要になる.
1.3.1 早期(WHOフェーズ4まで, 発生段階第3段階感染拡大期まで)
この段階では新型インフルエンザの患者数は少なく, 罹患するリスクのある患者は限定されている.よって疑い例は海外(流行地域)から帰国した患者, 感染患者もしくは疑い患者と接触があった者に限定される.
但し, 上記の患者および接触者のサーベイランスで網羅しきれるかどうかは不明で, この段階から発熱患者, 咽頭痛, 呼吸器症状(咳, 呼吸困難, 等)を呈した患者, 原因不明の肺炎や, 呼吸困難を呈した患者, もしくは原因不明の死亡例も必要に応じて疑い症例として扱う必要がある.
新型インフルエンザ患者もしくは疑いの患者と, それ以外の患者の動線を分けるため, この段階で外来におけるトリアージを開始する.
 * 東京都新型インフルエンザ対応マニュアルでは新型インフルエンザ要観察例と定義しているが, この段階で発症患者とのつながり以外でトリアージを行うことは現実的には困難と考える.

1.3.1.1トリアージの方法
38℃以上の発熱があり, 咽頭痛・咳・呼吸困難のうちの何れかの症状を呈し
+下記のうち何れかの条件を満たす.
新型インフルエンザ流行国, もしくは発生地域への渡航歴
もしくは
新型インフルエンザの確定例と濃厚な接触のある者(医療従事者等)
上記の条件を満たす患者を疑い例と定義し, トリアージ室に移動させた後, 担当医師が症例定義に基づいた問診と診察を行う. 
 [現時点での症例定義]










接触:確定及び疑い患者の約2m以内に十分な防御なしにいたこと.
  急性呼吸器症状:鼻汁または鼻閉, 咽頭痛, 咳のうち少なくとも2つを満たすこと.
(神戸市保健所の症例定義を一部改変)
問診で症例定義①を満たした者は新型インフルエンザ疑い例となる。疑い例に対しては担当医師がインフルエンザ迅速診断キットで検査を行い, Aが陽性となった場合は新型インフルエンザのprobable case, Bが陽性もしくはA,Bとも陰性の場合はsuspected caseとして扱う.
この段階においては疑い例が出た時点で速やかに保健所に連絡をとり感染症指定医療機関等へ搬送する.
上記に該当しない患者については, 一般医療機関の受診を促すか, 軽症者は帰宅を促す.
但し入院を要する重症患者は, 検査結果に関わらず, 空気感染予防策が可能な陰圧個室に入院させることが望ましい.他に原因がみつかるまでは新型インフルエンザ疑い患者として扱う.

1.3.1.1 搬送における注意事項
感染症指定医療機関等への患者の搬送が決定した場合、担当した医師は保健所に患者の搬送方法について確認をとる。原則的には保健所の搬送車での搬送になるが、状況に応じては自家用車での移動が必要になることもある。(公共交通機関での移動はできる限り避ける)
患者が自家用車で移動する場合、患者の電話番号を感染症指定医療機関等に伝え、また感染症指定医療機関等の電話番号等の連絡先を本人または家族に伝え、受診する時刻及び入口について感染症指定医療機関に問い合わせるように指導する。

1.3.2 後期(WHOフェーズ5以降, 発生段階第3段階蔓延期以降)
日本国内で患者が発生し, 既に流行し始めている段階である. この時期に病原体による診断を行うのはほぼ不可能であり, 病原体による鑑別よりもむしろ重症度による患者の振り分けがより重要になる.

1.3.2.1 トリアージの方法
38℃以上の発熱があり, 咽頭痛・咳・呼吸困難のうちの何れかの症状を呈した者は,一般外来を受診せず発熱外来を受診するよう指導する.(但し軽症者には, 自宅待機を推奨する)
1.3.3.2 重症度分類
鳥インフルエンザでは肺炎の合併例の予後が悪いことが知られている.発熱があり, 呼吸器症状を呈した患者が来院した場合, 当院では肺炎の重症度分類(SMART-COP)を用いて重症者と軽症者の振り分けを行う.
軽症者(ステップ1で該当項目の無い患者)には自宅待機を推奨し, 重症者については入院も考慮する必要がある.
下記のステップに従って軽症から重症に振り分けを行う.
ステップ1(1つでもチェックが入れば次に進む)
□    脈拍 >125/分(1 point)
□    収縮期圧 <90mmHg (2 points)
□    新たな意識障害 (1 point)
□    基礎疾患(悪性疾患, 肝疾患, 脳血管障害, 冠動脈疾患, 腎疾患,
慢性閉塞性呼吸器障害, 免疫不全, アスピリン内服中の小児, 妊娠中の女性)
50歳以下            □ 50歳以上
□    呼吸回数 ≧25/分     □ 呼吸回数 ≧30/分 (1 point)
□    SpO2 ≦93%        □ SpO2 ≦90%    (2 points)

 ステップ2(採血, 血液ガス, 最後に胸部レントゲン施行)
□    Alb 3.5g/dl未満(1 point)
□    pH  <7.35 (2 points)
□    大葉性肺炎(1 point)

最後に括弧内のpointsを集計する.
0-2 points  外来加療
ステップ1で1項目もチェックが入らなかった者は, 肺炎を併発している可能性は低く, 軽症者として扱う.
3-4 points  入院加療を検討
5-6 points  入院の上, ICU入室要検討, 場合によっては挿管を検討
≧7 points   ICU入室適応, 挿管を検討
注1)基礎疾患のある患者, 50歳以上の高齢者はpointsが3-4点でも入院をする.(今後変更する可能性あり)
注2)感染拡大期の段階では, 軽症者も含め全例, 感染症指定病院に入院させる必要あり.

2.3.3 病原診断
 今回の新型インフルエンザはA/H1N1型のインフルエンザウイルスであり, 季節性インフルエンザの診断キットが有効である可能性はある. 但しこの検査を行っても,新型インフルエンザの確定診断に取って代わる訳ではないことを留意しておく.








 Probable CaseとSuspected Caseについては全例保健所に連絡し, その後の対応を仰ぐ.
確定診断のためにはRT-PCR法, もしくはウイルス培養での確認が必要となる.
トリアージ室では咽頭, 鼻腔ぬぐい液, 鼻汁, 喀痰および血清を採取し保冷剤入りの容器に入れ, 神戸市の場合は環境保健研究所に検体を提出する.
 感染拡大期までは 疑い患者を含め全例入院の対象となっており, 感染症指定病院もしくは発熱外来で検査を行う.
 蔓延期以降は, 重症例, 職員で患者との濃厚な曝露のあった症例などに適応をしぼって提出する.

2.4 治療
治療は季節性、鳥インフルエンザの治療に準ずる.感染拡大期までは全例治療の対象となるため, Probable case及びsuspected caseで疑いの強い症例に対してタミフル(75mg)を処方する.その後は重症度に応じて下記の要領で投与量を決定する.
蔓延期以降では, 入院が必要な症例にのみ抗ウイルス薬を投与する.
軽症例(蔓延期に入った時点で, 基礎疾患のない軽症例への投与は中止)
タミフル(75mg) 2カプセル分2 5日間
入院が必要な症例
タミフル(75mg) 2カプセル分2 5日間
  ICU入室症例(肺炎合併例, 敗血症疑い例)
タミフル(75mg) 2(-4)カプセル分2 5日間
に加えて, 市中肺炎, 敗血症性ショックのガイドラインに準じた抗菌薬の投与開始, 速やかにICUに入室させ, 全身管理を開始.
当院では新型インフルエンザに関しては48時間以上経過した症例に対してもタミフル®を処方することを推奨する.

2.5 曝露後予防
高危険接触者(濃厚接触者)には予防内服を開始させ,10 日間自宅待機とする.高危険接触者(濃厚接触者)以外の接触者についても予防内服の対象とし, 最後に曝露があってから10日間経過するまで予防内服を継続させる.
但しフェーズ5, 第3段階(蔓延期)に入った場合には曝露後予防の対象を制限する.
当院での推奨投与量
タミフル(75mg) 1(-2)カプセル 分1  7-10日間
または
リレンザ(10mg)1回2ブリスター 1日1回 7-10日間
この推奨は, A/H5N1ウイルスの薬剤耐性について新たな知見が得られた場合は変更する.

3.検査, 検体の搬送について
3.1 X線(胸部単純), CTの撮影
 基本的に入院患者のX線(胸部単純)はポータブル撮影とする.診断上CT撮影が必要な時には撮影室に連絡の上, 他の患者の撮影, 感染曝露に影響のない時間帯(16時頃)に最短距離の動線で患者を移動する.対応に関しては感染制御マニュアルを参照.

3.2 検体の提出
•鳥インフルエンザ, 新型(豚)インフルエンザ疑い患者の検体を提出する場合, 必ず事前に検査部微生物検査室へ連絡する.  担当医が提出する検体をバイオハザード容器に梱包し, トリアージ室前室(病棟の場合にも前室)に保管しておく.微生物検査室スタッフがトリアージ室で回収し, 検体の処理は安全キャビネット内で行う.
 平日(8:30~15:00)
    CBC, 臨床化学, 血清学的検査, 微生物学的検査, インフルエンザ迅速検査など
夜間, 休日
    緊急検査(CBC, CRP, CPK, AST, ALT, BUNなど), リンパ球数

•鳥インフルエンザ, 新型(豚)インフルエンザの検査が必要な場合は, 検査部より神戸市環境保健研究所に連絡し検体の回収を依頼する.

4.抗インフルエンザ薬の使用方法
4.1抗インフルエンザ薬の投与量
抗インフルエンザ薬治療薬は,現在ノイラミニダーゼ阻害剤としてタミフル®,リレンザ®の2種類,抗A型インフルエンザ薬としてシンメトレル®,計3剤が承認されている.年齢毎の投与量については表1を参照。

表1 年齢毎の抗インフルエンザ薬の投与量
  リレンザ®, タミフル®は鳥, 新型インフルエンザ発生時に倍量投与可能. 但しシンメトレル®については副作用の問題があり投与量は変更しないこととする.
腎機能障害を有する場合の投与量については表2に示した.

表2 腎機能障害時の投与量











4.2 段階毎の抗インフルエンザ薬の使用方法
下記に、フェーズあるいは発生段階ごとの抗インフルエンザ薬の使用方法をまとめた。
新型インフルエンザ発生後, 抗ウイルス薬の供給量の不足が生じる可能性があるため, これまでにもまして適正使用が重要となる.
フェーズ
(WHO)    発生段階
(厚生労働省)    新型インフルエンザ    鳥インフルエンザ    季節性インフルエンザ    曝露後予防の適応
3    前段階    -    ◎    ○    鳥 ◎
季 △
4A-6A    第1段階    ◎    -    ○    新 ◎
季 ×
4B    第2段階
(遠隔地)    ◎    -    ○    新 ◎
季 ×
4B    第2段階
(近畿)    ◎    -    △    新 ◎
季 ×
5B    第3段階
(感染拡大期)    ◎    -    △    新 ○
季 ×
6B    第3段階
(蔓延期)    軽症 △
重症 ◎    -    △    新 ○
季 ×
◎:積極的に投与,  〇:適正使用を心掛ける,  △:場合によっては使用も検討,
×:使用してはならない -:想定に入らない
季:季節性インフルエンザ, 鳥:鳥インフルエンザ, 新:新型インフルエンザ

 

参考文献
1    Arnold S.Monto. The Risk of Seasonal and Pandemic Influenza: Prospects for Control,CID,2009,48(S1),S20-S25
2    新型インフルエンザ専門家会議 医療施設等による感染対策のガイドライン 平成19年3月26日
3    Prevention and Control of Influenza, recommended by the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP), MMWR, 2007,56:RR6-
4    Stephanie A.C. Mark A.V., et.al. Does this patient have Influenza? JAMA,2005,293(8):987-997
5    Thomas RE., Jefferson TO,et al., Influenza vaccination for health-care workers who work with elderly people in institutions: a systemic review. Lancet Infect Dis 2006,6:273-279
6    Glezen W.P. Preventin and treatment of seasonal influenza, NEJM 2008,359:2579-85
7    厚生労働省医薬食品局安全対策課 . タミフル服用後の異常行動について(緊急安全性情報の発出の指示)平成19年3月20日
8    Saito R, Suzuki Y, et.al. Increased Incidence of amantane-Resistant Influenza A(H1N1) and A(H3N2) Viruses During the 2006-2007 Influenza season in Japan, JID 2008,197:633-635
9    IASR, Oseltamivir-resistant strain of influenza A/H1N1's H275Y caused domestic First Report
10    Writing Committee of the Second World Health Organization Consultation on Clinical Aspects of Human Infection with Avian Influenza A (H5N1) Virus, Update on Avian Influenza(H5N1) Virus Infection In Human, NEJM 2008,358(3):
11    第10回新型インフルエンザ専門家会議,新型インフルエンザ対策における サーベイランス等ガイドライン
12    兵庫県医師会, 兵庫県, 兵庫県新型インフルエンザ対応マニュアル(案)
13    神戸市保健所予防衛生課 新型インフルエンザ対策実施計画(第2版)・ガイドライン(フェーズ4以降)
14    WHO Clinical management of human infection with avian influenza A(H5N1) virus, Updated advice 15 August 2007
15    Dellinger
16    http://www.hhs.gov/pandemicflu/plan/sup5.html#nov
17    David A. Boltz,1 Jerold E. Rehg,et.al.Oseltamivir Prophylactic Regimens Prevent H5N1 Influenza Morbidity and Mortality in a Ferret Model. JID,2008,197:1315-23
18    James D.C., Aran S, et al. Predicting the Need for Mechanical Ventilation and/or Inotropic Support for Young Adults Admitted to the Hospital with Community-acquired Pneumonia CID 2008,47:1571-1574
19    U.S. Department of health and human services, Department of homeland security Guidance on allocating and targeting pandemic influenza vaccine
20    Occupational Safety and Health Administration(OSHA) : Pandemic Influenza Preparedness and Response Guidance for Healthcare Workers and Healthcare Employers 2007

UpToDateのUpdate

UpToDateでもすでにまとめが出ています。さすがに、早い。

Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis of swine H1N1 influenza A


Treatment and prevention of swine H1N1 influenza A

Patient information: Influenza symptoms and treatment

一番最後のは患者さん用です。アクセスのある方は、どうぞ。おそらく数週のうちにメジャーなジャーナルでもreviewが出ることでしょう。

Jクラブ

日常診療もストップできません、、、今年は医局員が増えたので、だいぶ楽になりましたが。

Long-term suppressive antimicrobial therapy for intravascular device-related infections
11678518

よくある、「カテの抜けない」患者さんへの長期抗菌薬投与。とても現場的な、、、

Antimicrobial therapy for Stenotrophomonas maltophilia infections
17334747

治療という観点からのまとめ。これも面白かったです。

Gram-negative bacteremia upon hospital admission: when should Pseudomonas aeruginosa be suspected?
19191643

いきなりカルバペネムで行くのか?という問い。90歳以上、尿カテあり、中心静脈カテあり、最近抗菌薬入ってる、、、では考えましょう。日本でも追試が必要か。

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