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2009年9月

対話における、プロとしての矜恃を

最近、ツイッターとかフェースブックとか、コミュニケーションツールがものすごく増えていますね。

僕はこういうツールは全然使っていません。メーリングリストもなるたけ投稿は敬遠しています。まあ、これは好みの問題でもありますが。

さて、ツールそのものの属性もそうですが、使われ方についてはちょっと注意が必要です。特に感染症のプロであるならば、以下の2点には留意した方がよい、と僕は思っています。
1.陰口をたたかない。
2.匿名でコメントしない。

1については、閉鎖したコミュニティーで、そのコミュニティーの外にある人たちを嗤う態度を言います。これはプロとしては潔い態度ではありません。特に、本質的な批判ならともかく、単に態度やあり方、言葉の使い方を嗤う欠席裁判は一種のいじめと同じ構造です。言いたいことがあるなら、そしてそれを言わねばならないのなら、本人の耳に届くように言うべきです。

2も大事です。プロが匿名でコメントなんて、恥ずかしい。一般の方ならいろいろな事情があるでしょうから、このブログもニックネームのコメントOKでしょうが、プロが2chのような媒介でいやらしいコメントを残すのはまあ、生き方の美学の問題ですが、かっこわるいと思います。
 プロたるもの、まっとうな矜恃がなくてはいけないので、その矜恃は所属に対する矜恃、つまり自分はどこに所属しているとかどんなタイトルを持っている、という低いレベルでの矜恃であってはならない。矜恃は「生き方」や「ありかた」に示されなくてはいけない。そうでなければ、プロの看板は下ろした方がよいのです。

ACP journal club on suger

暫くサボっていて、ACPJクラブも読んでいませんでした。

http://www.annals.org/content/vol151/issue4/#ACP_JOURNAL_CLUB

この号は血糖関係の重大な発表が目白押し。

NICE SUGARとそのメタ分析でインテンシブな血糖コントロールに否定的な見解。これはMMJにも載っていました。

あと、面白かったのは糖尿病はcoronary disease equivalent「ではない」というのスタディー、そして糖尿病患者の新ワークアップはアウトカムを改善しないというもの。

あと、MMJ9月号ではタイプ2で血糖コントロールをしてもアウトカムを得られなかった、というNEJMのスタディーが紹介されていました。

この辺は、名郷先生の本とかでも時々紹介されていましたが、価値観がごろごろひっくり返ります。ほんと、医学は難しい。

研修医が作る、研修医教育

研修医対象のお昼のセミナーの責任者になったので(また仕事増えた泣)、研修医や学生の意見を聞いてできるだけ有意義なものに変化させていこうと思っています。まずは総合診療科の7年目O先生がショックのレクチャー。30分でコンパクトにまとまりました。病棟で今日から使えるノウハウとパールがあってよかったです。寺澤先生の「御法度」が大学病院のレクチャーで紹介される、というのもけっこう希有な話。こうやってどんどんレベルアップを図りたいですね。

大学病院の独自性も大事ですが、まずは基本的なことは基本的に出来るようにならないといけません。ショックの対応、ちゃんとできていますか?どの大学病院でも、、、、

青マンふたたび

アメリカの学会で注文しといたマンデルが届きました。表紙が気に入りました。

 僕は基本、面食いなので、本の表紙をとても大事にします。ちょっと薄くてくすんだ黄色と青のコントラストがとてもきれいです。正確には何色って言うんだろう。色見本とか見るほどマニアではないので、見て、きれいと思って、楽しむだけですが。中身はまだ読んでいませんが、これで当面の楽しみがまたできました。

 前のマンデルのデザインは正直言って、むむむ、、でした。赤マンデルや緑マンデルの方が風情があって好きでしたが、中途半端なモダンさがマンデルを安くしてしまったような、、、でも使っているうちに慣れちゃいましたが。アメリカの定番の教科書は意外にデザイン的には普通、というのが多いですね。ハリソン、セシル、ブラウンワルド、ケリー、ネルソン、セイビストン、、、いろいろ買ったなあ。

 学生の時はその領域の「定番」を必ず買うようにしており、グレイズアナトミー(ドラマにあらず)から始まってガイトンとかセルとかいろいろ買いました。ハーパーは生化学教室の輪読会に出席していて2冊くらい買ったし、勢いでストライヤーも買っていました。今にして思えばなんだったんだろう、というバカな金の使い方をしていましたが、本にはけちけちしない方がよいと今でも思っています。さすがに臨床に入って全ての科の「定番」を買うことは不可能になり、ハリソン、セイビストン、ネルソン(の海賊版、、、本当はいけないんだけど、もう時効か?)にとどまっちゃいましたが。あと、あの頃はワシントンマニュアルも読んでいましたが、これも現場にいない学生の時に読んでもなんの役にも立たず、、、いったい何だったんだろう、という感じです。
 インターネットとかメールが普及していない時代で、島根の片田舎でどこでどう勉強してよいものやら分からない。周りを見るとみんなイヤーノートを読んでいるけど、それではいけないんだろうなあ、、、という漠然たる感想しかない。かといってときどき上京して都会の友達に会っても、Where there is no doctorとか読んでいる熱心な人はいましたが、このように勉強して、というモデルを示していた人には生憎会えませんでした。いたんでしょうけどね。
 学生の時は本当に勉強のやり方が分かっていなかった。USMLEのステップ2を僕は1回失敗していますが、その失敗した1回目で初めて東大の学生さんたちがファーストエイドを読んでいるのを見て、「その薄い本は何ですか」と訊いて「何こいつ?」と言う目をされたことがありました。そのくらい、当時の中央地方の情報格差は大きかったし、海外の情報というとさらに少なかった。そういえば、何かの弾みで手に入れた古いFOOTBALLという英国の雑誌を何度も暗記するくらい読み直したこともありました。今は外国の情報なんて映像やネットでこれでもか、というくらい手に入りますから、あの当時の古雑誌を繰り返して読んで、、、なんてときめくことはもうあり得ないでしょうね。
 そうそう、たぶん、僕の世代を分水嶺にして、臨床医学の世界でもアメリカは「あこがれの理想郷」から「玉石混合の巨大な何か」に変貌していくのでした。今の時代、日本に絶望したからアメリカで理想を追っかけて、なんて変な夢の見方をしている人はさすがに皆無でしょう。

 分かっていなかった、といえば、当時は医学雑誌の意味すらよく分かっていませんでした。恥ずかしながらNEJMの存在を知ったのは渡米してからでした。冗談抜きでイギリスの雑誌と思っていて(!!!!)、そのくらい当時の僕のアメリカに対する知識関心は低かった。学生の時はサイエンスとネイチャーは名前くらいは知っていたけど読んだことはなく、臨床には興味が薄かったこともあって医学雑誌の存在も知らなかったです。大学1年生の時、サイエンティフィックアメリカンのマラリアワクチンの総説を輪読したのが初めての科学論文への曝露でした。そういえば、10代の時英国に住んでいて、普通のたばこ屋さんとかでネイチャーとかランセットとか売っていてびっくりしたものです。ナショナルジオグラフィックとかサン、デイリーミラーといったタブロイド、ポルノ雑誌なんかと一緒に売っていたのでした。イギリスのアマチュアサイエンティストって本当にすごいと思いました。日本なんてプロの内科医だってランセット(かそれに相当する雑誌)を読んでいる人は少数派に属するでしょう。
 沖縄県立中部病院に行ってからは朝仕事前に論文を一本読むのを日課にしていました。当時は、なんかアメリカの雑誌を読むのに抵抗があり、マニアックにBMJを定期購読していました。BMJの論文を頭から毎日1本読む、という今から思えば笑止としか言いようがないバカな読み方でした。臨床的な文脈や問題点からアプローチしていないし、関連や関心のない論文も無理矢理読む。朝は眠いから頭もぼおっとしている。当時は英語力もたいしたことない。結局頭に入らない。がんばったで賞以上の何者でもない無意味な時間を使いました。でも、研修医の時って時間がないようであるものなので、このようなバカな時の使い方は未来の自分への投資としてあきらめるよりほかないのでしょう。研修医時代にバカなことはやり尽くしておいた方がよい、と思います。研修医時代はほろ苦いものでしたが、バカなことをやり通した点についてだけは、割と自信あります。
 今は、神戸大の5年生にはNEJMの論文を読んでもらってきたりしています。大変上手に読んできます。僕も年を取ったということです。そういえば、NEJMの表紙も何年か前に大きく模様替えをしてあまり気に入らなかったのですが、慣れてしまいました。ランセットの模様替えには未だに抵抗感を覚えますが、BMJのドラスティックな編集方針の変更にはビートルズやジョージ・ベストに通じる英国ラディカリズムの矜恃を垣間見て、ひそかに拍手喝采を送っています。ここまで「飛べる」医学雑誌が果たして日本にあるでしょうか?日本の医学雑誌は、特に学会誌は本当に魅力がない。魅力的であろう、という意志すら感じられない。それは、表紙のレイアウトだけでなく、です。僕も結局、ただの面食いなだけではなかったので、「魅力」とは何かをこの年になってそれなりに理解し始めているのでした。もうそろそろ、四十郎なのです。Img_0030

プロカルシトニンに未来はあるか

PCTを使うと抗菌薬使用の抑制になる、というスタディーが多くなっていますが、これもその一つ。高感度のものですが、外来のセッティングでは意味があるかもしれませんね。鳥取大の研修生がまとめてくれました。

出し忘れていて、、

O先生がやった先日のMGH.これも難しかったです。興味深いケースでした。

HPVワクチンまとめ

先日承認されたHPVワクチンのまとめです。古い論文ですが、どたばたしている間に読み損ねていました。

HPV vaccination. NEJM 2009;361:271-

▼    臨床上の問題点
    •    米国では女性で、14-19歳の25%、20-24歳の45%がHPV陽性。
    •    米国全人口の80%の男女が生涯で一度はHPVに感染する。
    •    ある大学の研究だと、生まれて初めてセックスをした女学生で、パートナーは一人と言われている場合でも1年後には30%でHPV陽性になる(!)
    •    大抵は無症状だが、尖圭コンジローマや子宮頚癌などのがんの原因となる。
    •    世界では子宮頚癌は女性で2番目に多いがん。毎年49万人が発症し、27万人が死亡している。
▼    病態生理など
    •    HPVは二重鎖DNAウイルス。皮膚や粘膜上皮に感染
    •    2つのヌクレオカプシドタンパク(L1,L2)、少なくとも6つの初期タンパク(E1-E7)をコードするゲノムを持つ。
    •    病変からは130以上のHPVジェノタイプが見つかっている。L1の類似性で分類している。
    •    生殖器の粘膜を感染するHPVはジェノタイプで30-40。臨床像でハイリスクとローリスクに分類している。
    •    ローリスクタイプはイボの原因、ハイリスクは肛門生殖器のがんの原因。
    •    6と11が90%以上のイボと再発性呼吸器パピロマトーシスの原因に。
    •    ハイリスク感染はほぼ100%の子宮頚癌、90%の肛門癌、50%の外陰部癌、膣癌、陰茎癌の原因に、そして12%の口腔咽頭がんの原因となる。
    •    ジェノタイプ16と18で80%の子宮頚癌の原因に、さらに31,33,35,45,52,58を足すと、95%の原因となる。覚え方が分からない、、、、
    •    癌にならない場合、HPVのDNAは角質細胞内でホストのDNAとは別に動いている。しかし、悪性化するときはホストのDNAに組み込まれることが多い。図1
    •    癌化には、E6とE7の発現が関与している。がん抑制遺伝子のp53とretinoblastoma protein, pRbを抑制する。
    ▼    子宮頚癌の発生は組織学的な新興を伴う。
    •    cervical intraepithelial neoplasia, CINは子宮頚部の扁平上皮細胞の異常で、子宮頚癌の前駆段階である。
    •    CINはグレード1−3に分けられる。
    •    グレード1では軽度の異型性があり、下3分の1の子宮上皮を占有する。
    •    グレード2では中等度の異型性、下3分の2.
    •    グレード3では重度の異型性で子宮上皮全部を占有。
    •    CIN1の70−90%は自然に消退する。
    •    CIN2の癌化は57%
    •    3だと70%である。
    ▼    ワクチンは2種類。
    •    HPVのL1タンパクを抗原としている。
    •    リコンビナントワクチン。
    •    たんぱくはウイルスのように集合して、形態学的にはHPVと同じ形になる。しかし、コアDNAを有していない。
    •    これで、防御抗体こそできるものの、感染したり癌化したりはしないのだ。
    •    メルクが作っているのが4価のワクチン、商品名はGardasil, あるいはSilgard
    •    ウイルス様抗原は6,11,16,18の4種類。
    •    グラクソが作っているのが、Cervarixで、16と18の二価ワクチン。メルクよりも2ジェノタイプ少ないが、これらはイボを起こすので、癌の予防としては等価か、、、、日本で承認されたのはこっち。
    •    どっちもチメロサールは入っていない。抗菌薬も入っていない。
    •    液性免疫、細胞性免疫どちらも賦活する。
    •    L1に対する防御抗体が、毛細血管からしみだして陰部粘膜上皮でウイルスを中和すると考えられている。
    ▼    臨床的なエビデンス
    •    50000人以上の女性が臨床試験に参加している。
    •    セロコンバージョンは97.5%以上
    •    5年後でも有効(らしい)
    •    42ヶ月後の防御能(preventive efficacy)は94.4%。プロトコル通りなら。
    •    侵襲性子宮頚癌の発生や死亡率について見積もったスタディーは現在進行中。大規模で長期にわたるスタディーが必要なので、難しい、、、ですよねえ。それに、前がん病変の治療をすれば死亡率はさらに下がる、、これをやらないのは倫理的に問題、、、というわけでスタディーは困難、、、
    •    というわけで、多くのスタディーはCIN2と3発生の予防、in situ腺癌の予防をefficacy pointとしている。まあ、そうでしょう。
    •    で、efficacyは90%。HPV16か18に感染して、それらによる病変が予防できる可能性、、、という意味。
    •    ただし、予防接種時にすでに感染してしまっていると効果がない。ワクチンのメカニズムから考えると、当然。
    •    他のジェノタイプにも交叉反応があるかもしれないが、それはあまり大きな効果ではない。
    ▼    臨床使用
    •    FDAは4価ワクチンを2006年6月に承認。適応は2008年9月に拡大。
    •    9歳から26歳の女性に適応
    •    2価ワクチンは米国ではまだ承認されていない。
    •    理想的には初体験前にワクチンを打っておくことが望ましい。
    •    HPV感染のピークは初体験1年以内、、、
    •    米国では13歳未満での性交渉は6.2%で起きている。初体験の中央値は16-17歳。
    •    酵母菌に過敏反応がある場合は、禁忌
    •    免疫抑制者で接種可能
    •    妊婦には推奨されない。ただし、妊婦でだめ、というデータはいまのところない。よって、もし間違って妊娠女性に接種した場合は、その後の接種は分娩以降に延期した方がよい。
    •    対象者の場合、感染率が低いためにワクチン接種前のウイルス感染の検査は薦められていない。
    •    陰部疣贅やPAP異常のある女性でもワクチンは接種すべきである。他のタイプのHPVかもしれないし。
    •    性交渉を結婚までしない(abstinence)やコンドーム使用も効果があるが、レイプや結婚後の感染、防御能を考えると完璧ではない。
    •    二次予防としてはPAPやHPVのDNAテストがある。
    •    接種は0.5mlを筋注で4価は0,2,6ヶ月に。2価は0,1,6ヶ月に。
    •    投与間隔が狭まったらやり直し。投与間隔が広がった場合はそのままでよい(これは予防接種の一般原則)。
    •    他のワクチンと同時接種可能
    •    意識消失発作など(vasovagal)を考え、接種後15分間は経過観察を。非接種者は座っているか寝ていること???変な推奨。
    ▼    子宮がん検診は、やはり必要。
    •    30%の子宮頸癌はワクチンで防御できない。
    •    スクリーニングは初体験後3年、しかし21歳以前に行い、以降少なくとも3年おきに。
    •    ワクチンが普及したら、このスクリーニングプログラムも変更するかも。
    •    お値段は、米国で1回125ドル。トータルで375ドル。
    •    医療保険はカバーしたり、しなかったり。資金援助をする州も(そうでない州も)
    ▼    副反応
    •    局所反応、頭痛、筋肉痛、倦怠感など
    •    重度の副作用の頻度はプラセボと変わらず。
    ▼    発売後のサーベイでは、VAERS, vaccine adverse event reporting systemに11916の報告が。
    •    94%は非重篤、めまいや吐き気など。
    •    6%は重篤。ギラン・バレー、静脈血栓、死亡など。ただし、因果関係はないものとFDAやCDCは判断している。
    ▼    未確定な部分
    •    免疫の持続時間が不明
    ▼    男性への効果は不明
    •    4価ワクチンの少年への効果は少女と同様。
    •    肛門癌の予防は??
    •    コスト効果は?女性だけやれば男性にも効果がある?
    •    真のアウトカムはまだでていない。
    •    26歳以上の女性に対する効果は不明
    •    免疫抑制者への効果や安全性は不明
    •    子宮がん検診への影響が不明。これは大きい問題。
    ▼    WHOの推奨。原文のまま
    •    routine HPV vaccination should be included in national immunization programs, provided that:prevention of cervical cancer or other HPV-related diseases, or both, constitutes a public health priority; vaccine introduction is programmatically feasible; sustainable financing can be secured; and the cost-effectiveness of vaccination strategies in that country or region is considered. だそうです。

vaccine preventable diseasesの重み

肺炎球菌インフルエンザ菌について。前者は59ヶ月までの小児において、2000年に82万人以上の死亡の原因に、後者は37万人以上の死亡の原因になっているといいます。人口あたりの死亡者では、日本はどちらも少ないのですが、インド、中国、アフガニスタンなど多くの国ではこれが大きな問題になっています。本来ならワクチンで予防可能な(とくに後者は)疾患ですが。

本日のMGH

U先生のプレゼン。固形臓器移植後1週間で何が起きうるかの検討。あとは、イトリゾール予防のピットフォールト言うことで、勉強になりました。頭には行かないのだよ、、、、

http://content.nejm.org/cgi/content/extract/358/15/1604

「輸入ワクチン」はどんなものか

これも雰囲気だけで議論されている「輸入ワクチン」。NEJMの論文を神大5年生6人で読んでもらいました。みんな、ちゃんと読んでいたなあ。5年生6人の方がへたな後期研修医よりも論文読むのが上手だったりして、、、、、

・ノヴァルティスが開発したワクチンは、MDCK細胞培養により作られたワクチン。
・influenza A/California/7/2009のhemagglutinin, neuraminidase, polymerase PB1から採られている。
・アジュバントとしては、MF59というものを使っているが、これは1997年から季節性インフルでも使われており、臨床試験では16000例、現場では4000万以上の実績がある。
・今回は英国の健康な成人(英国の成人なので、「18歳から」50歳まで)を対象としたシングルセンター、フェーズ1のランダム化試験。プロトコルは少々異なるが、実質的にこの研究では、7.5マイクログラムのワクチン1回、2回同時接種、7日後に再接種、14日後に再接種で25人ずつ振り分け、HIとmicroneutralizationで抗体ができているかどうかを判定。
・二倍量のワクチンを同時にうった群のみが半分以上に筋肉痛を起こしたが、副作用はとくに群間で差は無し。全体的に副作用は少なく、重篤な副作用はゼロ。
・全群で14日後、21日後には抗体ができていた。1回打ちでも抗体はできていた。

本当は、アジュバントなしのグループもあったのだが、今回の論文では分析なし。

さて、プレリミナリーではありますが、ワクチンのおおざっぱな姿が見えてきました。日本でも臨床試験をやることでしょう。これから、どうなるか。

新聞、テレビの終焉

最近、新聞をめっきり読まなくなりました。読まなくても全然困らない。

つい先日、ある大きな新聞社の取材受けたのですが、全然前勉強をしていなくてびっくりしました。新型インフルエンザが話題になっているので、「先生、ワクチンについてはどう思いますか?」「輸入ワクチンって危ないらしいんですが、どう思いますか?」「タミフルってどうですか?」みたいな「雰囲気だけ」を問う取材です。

今、医療界の情報はロハスメディカルやMRICが詳細で深い情報提供をするようになり、大手新聞、テレビの情報はまったくといっていいほど役に立ちません。会議録も細かく読めるようになったのはロハスのおかげです。

アメリカの新聞を読むと謎が解け、日本の新聞を読むと謎が深まる。

と以前から言っていましたが、最近は特にその傾向が顕著です。社説も天声人語(のようなもの)も通り一遍のことしか言わないので、読む価値を感じません。結局、速報性ではネットに負け、分析力では専門メディアや新書に負け、日本型の新聞やテレビの意味は無くなってしまったのです。分析力を上げたNYタイムズやフィナンシャルタイムズのようなあり方ならまだ生きる道があるように思いますが、今の日本の新聞では衰退と撲滅しか残っていない、、、と僕は思います。

エビデンス主義

最近、この手の本が多くなってきました。EBMという言葉が医学界でようやく定着してきて、これが一般にも広がってきた、という感じです。

新型インフルエンザの話をするとき、雰囲気で決めないできちっとデータを見ましょう、とよく申し上げています。情報のあり方、受け止め方は10年前のそれとは同じであるはずもないのです。

政治の世界にもエビデンスが必要、というのは同感です。心理学、脳科学なども同様で、これからガセネタはどんどん淘汰されていくように予想します。

心理学に何ができないのか???

心理学に何ができるか、と言う命題は、何ができない、何ができていないのか、という問いに換言できます。内部にいるインサイダー、心理学者は心理学のオールマイティー性を主張しがちになりますが、門外漢には正当に評価ができない。誠実な学者がこのような検証を行うのはすばらしいと思います。

こどもへの「育て方」の寄与するところは小さい、フロイトの学説に根拠はない、暴力的映像が暴力を引き起こす可能性は小さい、、、、テーマ、表題だけが上滑りして一人歩きをするこの国のアカデミズムを厳しく批判しています。スクールカウンセラーのあり方についても厳しい目が向けられています。とても興味深い本でした。

感染症学会ガイドラインに求めるもの

感染症学会ガイドラインは大きな反響を呼んでいるようです。よいことです。

WHOやCDCの言うとおりに必ずしもしなくてもよいのです。オーストラリアはオーストラリア、イギリスはイギリスで独自の方針を示しています。正々堂々と自己の主張を示し、批判を受け、直すべきは直していけばよいのです。だから、各論的には異論もある感染症学会ガイドラインを僕はかなり前向きに好意的に受け止めています。自分と意見が異なるのは、別に悪いことではない。

特に、健康な方に対する抗インフルエンザ薬の使用の有無はエビデンスのない状態でノギロンなので、水掛け論、信念論争になりがちです。こういうところで何万回議論してもどうせ結論は出ないのですね。議論の仕方、は大事です。

さて、そこで感染症学会には3つの提案をしたいです。

1.制作者の氏名を公表する。これは今の時代、常識です。
2.彼らのconflicts of interestを公表する。これは大事です。そうしないと、「製薬メーカーの利益を主導するために薬を使えと言った」とない腹を(ないことを祈ってますが)探られるからです。自らの正当性を主張するには情報公開しかないのです。
3.ガイドラインの英語版公表。

これらがもたらすものは、感染症学会ガイドラインのcredibilityの上昇、それだけです。受けない理由はないはずですが、もし断るとすれば、、、、???

感染症学会の提言第2弾

もたもた、と言ったあとから感染症学会の提言第2弾、およびガイドラインががでています。

提言について。

全体的にはよくできていると思います。まず、HTMLとPDF両方で無料公開している点が高く評価できます。医師会のそれは会員以外は有料でしたし、厚労省の文章の多くはPDFでしか読めず、非常にユーザーアンフレンドリーでした。

次に、専門家だけではなく、国民全てが読めるように「ですます」調にしたことも好感を持てます。きちんと引用文献を示していることもすばらしいです。H5N1の国のガイドラインでは引用文献の紹介がゼロでそれはさすがにないだろう、と思いました。

また、controversialなエリアにも勇気を持って「こうすべき」と自らの見解を開陳している点、そしてCDCやWHOはこういっている、と異なる見解も無視・黙殺せずに紹介している点も国内のガイドラインとしては珍しい切り口です。

肺炎球菌ワクチンや新型のワクチンについても「こうするべき」と明快に推奨しています。国の政策にも大きな影響を与えることが期待されます。

たぶん、最大の議論になる点は抗インフルエンザ薬のあり方、マスクのあり方、そしてワクチンは本当に2回打ちなのか?という部分でしょう。とくにワクチン 2回打ちはNEJMで1回でもよいのでは、という論文がでた直後ですが、それについての言及はありませんでした。ここについてはきちんと説明しておけばさ らによかったと思います。まあ、間に合わなかったのかもしれませんが。抗インフルエンザ薬については、早期に投与するのが重症化を防ぐのに大事、という見 解を示していますが、これが「すべての人にタミフルを」というメッセージに転化してよいものかどうかは、まだまだ議論の余地があるものでしょう。

いずれにしても、日本の専門家集団として明快な見識を出したことは歴史的に見ても高く評価できると思います。願わくば英訳して世界にも「日本の見解」として示すとなおよいでしょう。

感染症学会提言

もたもた、と言ったあとから感染症学会の提言第2弾がでています。ガイドラインの名前こそ有していませんが、「こうあるべき」という指針を示しているので、事実上ガイドラインの役割も担っていると思います。

全体的にはよくできていると思います。まず、HTMLとPDF両方で無料公開している点が高く評価できます。医師会のそれは会員以外は有料でしたし、厚労省の文章の多くはPDFでしか読めず、非常にユーザーアンフレンドリーでした。

次に、専門家だけではなく、国民全てが読めるように「ですます」調にしたことも好感を持てます。きちんと引用文献を示していることもすばらしいです。H5N1の国のガイドラインでは引用文献の紹介がゼロでそれはさすがにないだろう、と思いました。

また、controversialなエリアにも勇気を持って「こうすべき」と自らの見解を開陳している点、そしてCDCやWHOはこういっている、と異なる見解も無視・黙殺せずに紹介している点も国内のガイドラインとしては珍しい切り口です。

肺炎球菌ワクチンや新型のワクチンについても「こうするべき」と明快に推奨しています。国の政策にも大きな影響を与えることが期待されます。

たぶん、最大の議論になる点は抗インフルエンザ薬のあり方、マスクのあり方、そしてワクチンは本当に2回打ちなのか?という部分でしょう。とくにワクチン2回打ちはNEJMで1回でもよいのでは、という論文がでた直後ですが、それについての言及はありませんでした。ここについてはきちんと説明しておけばさらによかったと思います。まあ、間に合わなかったのかもしれませんが。抗インフルエンザ薬については、早期に投与するのが重症化を防ぐのに大事、という見解を示していますが、これが「すべての人にタミフルを」というメッセージに転化してよいものかどうかは、まだまだ議論の余地があるものでしょう。

いずれにしても、日本の専門家集団として明快な見識を出したことは歴史的に見ても高く評価できると思います。願わくば英訳して世界にも「日本の見解」として示すとなおよいでしょう。

医師会ガイド、など

感染症学会がもたもたしている間に、医師会が先にガイドを作ってしまいました。

まあ、誰が作ろうが関係なく、よいものがユーザーに提供されればよいのです。その点では、会員以外閲覧できない、他は有料、というのはいただけません。無料でウェブ上にアップすればよかったのに、、、、僕も医師会の会員だけど、パスワードとかどうだっけ、、、、というわけでまだ読んでいません。

感染症学会にはinterim、暫定でいいから迅速にガイドラインを作れば、、、と提案していたのですが、よく分からない理由で未だに発表されていません。現場は混乱しています。厚労省が作ると命令性が強い、しかも机の上で作っているからへんてこなものに(なる可能性が高い)、、、、

内部の事情だけで動く人が増えてきました。自分の所属する部署の枠を越えて、俯瞰した目で、大局的に、もっと長いスパンで判断して欲しいなあ。

自国のワクチン産業を保護するために輸入ワクチンはだめ、みたいなロジックは、へんてこな農業保護やあの巨大な国の自動車産業保護を思い出させます。そして、その先にあるのは自産業の反映ではなく、没落なのでした。

自国の産業は愛国的に支援するものですが「保護」するものではないのです。あと、輸入ワクチンは危険で国産は安全、というのは「食べ物」でもよく使われるロジックですが、全然根拠がありません。外国人だと危なくて、日本人だと安全、、、、みたいだ。

傷はぜったいに消毒するな

ラップ療法はまあ分かったから、あまり期待しないで読んだ本

本当にすみません。僕はラップ療法、全然分かっていませんでした。

本書は実践的な話だけではなく、理路がしっかりと書かれた「考え方」を示した好著です。読んでいて目から鱗、細菌の話も気づきを与えられることが多く本当に勉強になりました。分かったつもりになった瞬間が一番危ないのだと、大反省です。スコアリングについてなどやや{?}な部分もありますが、そこはご愛敬。学会や医師に対する批判もおおむね当を得たものでした。お奨めです。

本日のJクラブ

Oropharyngeal cleansing with 0.2% chlorhexidine for prevention of nosocomial pneumonia in critically ill patients: an open-label randomized trial with 0.01% potassium permanganate as control

チェストの論文。インドで口をすすいだICU患者。介入してもあまりよくなかったけど、臨床試験そのものが効果ありました、というふかーい内容。

はじめての言語ゲーム

ヴィトゲンシュタインの入門書。言語ゲームと価値相対主義との接点、本居宣長や仏教の議論など、目からウロコの本。面白かったです。

あと、僕の中では第一次世界大戦という存在がとても大事になってきました。ヴィトゲンシュタインやヒトラーが参加した第一次世界大戦。ヘミングウェイ、フィッツジェラルドのいたその時代。そして、スペイン風邪。白洲次郎の伝記でも明治20年代にインフルエンザが流行り、、、というくだりがあり、あの頃の時代が僕にはとても近くなっています。

読んだ本

ワインの科学

 亜硫酸が入っていても大丈夫。水のあり方、など勉強するところの多かった本。ブルーバックス、もっと読まないと、、、と反省。

白州次郎 占領を背負った男

 白州次郎、、、かっこいいなあ。楽しくてあっという間に読んだ本でした。

たった1通で人を動かすメールの仕掛け

 意外に、だめではない本。でも、10分で読破しました。微妙やなあ。

会議で

ワクチンの意見交換会がありました。単なるコメントの羅列では困るので、厚労省からの意見も聞きたかったのですが、おおむねこちらの意図するやり方で議論は進みました。正林さんががんばっていいコメントを連打していました。さて、結果は何が出るか。

ウイルス感染の話

我がmacbook airが恐ろしくスローになって仕事になりません。こちらはいらちなので、もう困って困って、、、libera memoryを使っても速くならず、grand perspectiveを使ってもとくにぱっとせず、spring cleaning お試し版を使っていらんファイルを全滅させてもまだ遅い、、、、

もしや、ウイルス?と思い、あわててClamXavをダウンロード。かつてマックでウイルスにやられたことはなかったのですが。

結局、3つのウイルスが見つかり、こいつらを取り除いたら問題解決しました。ベータ版は雪豹にも使えるので大助かりです。もっとも、その雪豹はダウンロード失敗で今、アップルからDVD取り寄せ待ち中ですが、、、、、

まちがいを認めた方が信用される

間違っていたときは、さっさと認めて謝罪するのが有効。リスコミでは常識中の常識、初歩中の初歩です。

しかし、これができないのが厚労省です。どうしたって、できない。これは本当に不思議。たまーに例外がいることはありますが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090907-00000001-cbn-soci

報道が正しければ、と言う前提ですが、これはずいぶんまずい対応です。

感染症法に基づいて患者を強制的に入院させること▽新型インフルの患者数を把握すること—の2点を指摘し、「症例定義は決めざるを得なかった

この2点がそもそも矛盾していることにどうして気がつかなかったのでしょう。なるほど、患者に「強制入院を強いたりしている」限り、広い診断基準を設けたら入院患者であふれかえって大変なことになるでしょう。しかし、そうすると正しい患者数の把握は不可能になります。もともと両者の併存は無理な相談だったのですね。

発熱外来については、行動計画上は鳥インフルエンザ(H5N1)を念頭に置いていることを認めた上で

とありますが、昨年12月にすでに僕たちは、「そもそもその前提でいいの?」とパブコメで突っ込みを入れていました。

http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-8f6e.html

僕らの意見が取り入れられなくてすねているわけではありません。ただ、パブコメとかやっておきながら、どうして間違える構造に陥ってしまったのか、、、、そこにはとても興味があります。

いずれにしても、前提そのものが間違っているのですから、やはりとりあえず謝っておけばよいのに、と僕は思ってしまうのでした。

どこを見ているか?

先日、師を見るな、師の見ているものを見よ、という言葉を紹介しました。ミシェル・フーコーではないですが、「まなざし」って大事だと思います。

もう一つ、まなざしについての、好きな言葉

二人の囚人が牢に入っていた。一人は地面を見、もう一人は夜空の星を見上げた。

僕は神戸大学を世界の(必ずしもアメリカにあらず)誰が見ても恥ずかしくないレベルに上げたいと思っています。とくに学生、初期研修医と感染症、、、ここはレベルをぐっと上げたい。

そのために大事なのは、まずは己を知ること、そして目指すものを明確にイメージする、いわゆる「ビジョンを持つこと」が大事になります。

日本では「トップクラスの病院」と思われている、また自らも思ってきた亀田総合病院も世界の目から見るとまだまだであると悟ります。どころか、アジアの中でも全然負けていることを理解するのです。しかし、そのことは大きな問題ではありません。己の矮小さを知り、世界の大きさを知り、めざすゴールにおびえず立ち向かう勇気を持てばよいのです。

http://lohasmedical.jp/news/2009/09/04181021.php

大学病院が前に進むときも、大事なのはこの明確なビジョンを持つことです。己を知り、スタート地点を定め、目指すゴールたるビジョンを明確にします。そうすれば、あとは航路を定める知性と船をこぎ出す勇気を持つだけなのです。あまりに多くのプランと会議は、己の現状にも無自覚なまま、ゴールも不明確なままに、「ただなんとなくやっている」のです。会議がつまらない理由は明白なのです。

新型インフルエンザ広報

広報が足りない、と思っていたら、内閣府の情報です。

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2724.html

内容はよくできていると思いますが、ちょっとお利口さん用で、メッセージ性は弱いかもしれません。ちょっと詰め込み過ぎで、長過ぎるメッセージは伝わりにくい。短いバージョンもあるとよいですね。

あと、インターネットが使えないとだめなので、普通のテレビも重要でしょう。地デジよりこっちのほうがお金かけがいあると思いますが、、、

メッセージ伝達は、やはりアメリカの方が遥かに上手、、、、

http://www.flu.gov/psa/index.html#elmo

エコール・ド・パリとトキワ荘

 おととい土曜日は、昼から豊岡の医師会でお話。JRで神戸から姫路経由で。兵庫県はとても広いですね。新型インフルエンザの話で、たくさんの質問を受けました。ウイルスの質問も受けましたが、あいにくこちらはウイルス学は完全に素人なので、それは神戸大の専門の先生に聞いてください、という感じでした。その後車で鳥取駅に。日本海側の田舎道を久しぶりに懐かしく重いながら、景色を眺めていました。稲刈りの時期です。1時間30分かけてJR鳥取駅に。長いので退屈して、圓生の「子別れ」三部作を聴いていました。感慨深く聴いていました。その後「まつかぜ」で米子、「やくも」に乗り換えて久しぶりの実家。一晩泊まって、昨日は鈍行で宍道から松江。会議の後で、「やくも」、「のぞみ」、、、、てっちゃんが聞いたらさぞうらやましいでしょうが、こっちは大変だ、、、

 その会議は「山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラム」における4大学合同FDでした。島根大学、鳥取大学、神戸大学、兵庫医大の後期研修連携で、これをつかって、うちでも島根大と鳥取大から研修に来てくれました。

 文科省高等教育局医学教育課大学病院支援室(こんなところがあるなんて初めて知った)の小林万里子室長の基調講演。正直、当初は何も期待していなかったのですが、とてもよい話でした。採択のプロセスもそうなのですが、「自分の言葉」がしっかりしていて、プログラムの文章も長すぎる、分かりづらすぎる、という部分もきちんと指摘し、反省もされていました。反省する官僚は希有な存在です。最近は霞ヶ関でも世代交代が進んでおり、こういう「実のある」議論ができる人もでてきているのだなあ、と見ていて思いました。
 もう少し上の世代の人たちは文章の「てにをは」に執拗にこだわる人が多いです。俺たちは文章書きのプロ、と自負している人が実に多いし、「地方の役人は文章書くのがへたでしようがない」とくさす人もいます。にもかかわらず、その実、その中央官僚が書く文章の99%は、中身は空疎で読点がやたら多くて主語がない悪文なのです。どうしようもなく、へたくそな文章なのです。ヘミングウェイでも読んで勉強して欲しい。

 パネルディスカッションはパネルディスカッションの名前を借りた単なるショートプレゼンの羅列でしたが(日本はたいていそう)、鳥取大学のプレゼンは魅力的でした。教育の理念や理想、ヴィジョンがしっかりと描かれており、大学病院の発表では希有なことだと思いました。大学に人がいないから、もっと人を集めて循環型の医療復活、なんてヴィジョンもヘッタクレもない哀しいさびしい見解が多い中で、すばらしいと思います。そこで理想型として出されていたのがエコール・ド・パリとトキワ荘、というのもかっこよかったです。そうそう、教育やる人は、もっと、かっこつけなきゃ。

 エコール・ド・パリとトキワ荘こそは、教育におけるひとつの理想の形だと僕も思います。

 僕の理想の教室(ロールモデル)は島根大学の第一解剖学教室(今は名前が違うかも)です。あの自由闊達たる雰囲気、個が共を、共が個を生んでいくダイナミズム、一人一人が「自分の頭で考える」空気、こういう環境ができていくとすばらしい。エコール・ド・パリやトキワ荘、それに梁山泊みたいな場所になれたらよいな、といつも思っています。

 帰りの電車では、実家からがめてきた宮崎駿の「雑草ノート」を読んでいました。1992年に発行された本でたぶん、学生だった僕自身が買ったもの。とても、とても面白い。宮崎駿の絶頂期がこの頃です。PKOに反対しながら、共産主義・社会主義に共鳴しながら(ホルスを見れば一目瞭然)、それでも戦車や戦闘機が大好き、うしししし、という矛盾に満ちた、躍動感あふれる宮崎駿。自然、緑の美しさを誰よりも美しく描写するのに、その環境に悪い車やたばこが大好きな宮崎駿。politically incorrectな宮崎駿。本当に美しく、面白かった宮崎ワールド。

 この後、「もののけ姫」以降、宮崎駿は「正しいこと」しか言わない面白くもおかしくもない「巨匠」へと没落していくのでした。正しいことしか言わない、とは、何も言っていないのと同じなのでした。

秋らしいすてきな青空です。空が高い。空気がきれい。洗濯物を干すのが楽しい、そんな日です。

朝食を作って、洗い物をして、ちょっと車を運転して、車内ではノラ・ジョーンズやバド・パウエルを聴いて、シャワーを浴びて、身支度をして、アイロンをかけて、今日はいつもよりずっと遅めの出勤です。通勤途中でヘミングウェイの短編集を読みます。ヘミングウェイはマッチョなタフな小説家とよく言われますが、実は繊細で女々しくいじいじした小説を書いています。簡潔な文章がそれを巧みに覆い隠しているのですが、決して粗野な、無骨な小説家ではありません。セザンヌのような、と表現される美しい文章は、粗野な精神ではかけないのでしょう。人はすぐに表面的な見かけにだまされてしまうのです。「白い象のような山並みや」「十人のインディアン」などは本当に泣けてくる。「日はまた昇る」もよかったです。でも、あれって原題はThe sun also rises. で、「日もまた昇る」のほうが正しいんじゃないか?とどうでもいいことを考えてしまいました。

言葉について考えています。メッセージは届けなければならない。そのためには自分の言葉を持たなければならない。他人の言葉ではない、自分自身の言葉。もちろん、たいていの表現はどこかいつかで誰かが語った言葉のカーボンコピーに過ぎない、という見方もできるでしょう。たとえそうであっても、そこに自分の魂が乗っかっているかそうでないかは、すぐに聴き手には分かってしまうのです。感染症屋はコンサルタントなので、聴き手に自分の魂を運ばなければなりません。それができなければ、いくらばい菌や薬の知識を持っていても、プロとは呼べないのです。

魂が乗っているか乗っていないかは、見る人が見れば即座に分かります。けれど、「どのようにして魂を乗せるか」という方法は、決して他人には教えられません。自分で気がつくより他ない。それより前に、魂を持たない者はプロである資格すらない。技術的に表面的にこそこそやっても、それはプロでいる資格を与えない。

こういうことって研修医には教えづらいです。師を見るな、師の見ているものを見よ、と口の中でぼそぼそっと、つぶやくしか他に方法がない。

耐性季節性インフルとタミフル、リレンザ 統計的有意差、臨床的な「差」

日経メディカルオンラインを見ていたら、新潟大学の齋藤玲子先生たちが、「季節性インフルエンザの」H1N1について興味深いデータを示されています。例のタミフル耐性のソ連型のことです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/200909/512119.html

タミフル耐性インフルエンザに対しては、タミフルと無治療群では解熱の程度に全く差はでなかったようです。リレンザはこれに対して解熱していて、統計的にも有意差が出ている、、、と。

ただ、この図を見ていると、例えば3病日目の最高体温がタミフルあるいは無治療で37.3度位なのに対して、リレンザは37.0度くらいです。

統計的には有意差はありますが、臨床的にはほとんど差がないんじゃないの?と僕は思いました。結局、季節性インフルエンザはたいていの場合、何をやっても治ってしまうのでした。タミフルを飲むとすぐに熱が下がってしまう、とよく言われますが、タミフルを飲まなくてもすぐ熱は下がってしまうのがインフルエンザという病気なのでした。

新型インフルエンザに対してタミフルをどう使うか。いろいろな人からいろいろな見解が出されています。しかし、僕らは全然臨床データを持っていません。臨床データなしにものを言い切ってしまうのはとても危険です。これはワクチンも同様ですが。分からないことは分からない、と

Jクラブ

僕は会議ででれなかったJクラブ。CD4が100以下で、血清クリプト抗原で、髄膜炎のスクリーニングができるか?という南アフリカのスタディー

今週のMGH

これは面白かった。よいケースでした。ANA陽性、ライム陽性、というのが渋いです。つづきは本文をお読みください。

リーダーシップの旅

リーダーシップについて勉強していますが、ようやく納得いく本を見つけました。

リーダーシップ論は、本書で挙げられているように、the most studied and least understoodな領域です。リーダーとはこのような感じ、という「説明」はできても、どうやったらリーダーになれるのか、という条件は全くといってよいほど分からない。ところが、多くの本はこの未知の領域を「分かったふり」をして説明してしまい、credibilityを下げてしまう。心理学や脳科学の多くの本が陥るピットフォールです。オールマイティー性を謳うと、信用性が下がる。

その辺の不確定性や多様性にためらいを覚えながら、著者はダイアログを続けていきます。リーダーシップとその周辺は見えてきますが、明快にど真ん中に断言はできません。でも、そのように語ることができない、見ることができないものがリーダーの本質なのだと彼らは考えているように思います。とても勉強になりました。

県の会議は終わり

さっき兵庫県の検証委員会が終わりました。これから委員長が記者会見です。

全国に先駆けて今回の検証と県(そして国)への要望を出します。不備があれば、我々の責任でもあります。公表されるはずですので、そのときは是非読んでいただいて、忌憚ないご意見・ご批判をいただけると嬉しいです。国もぜひ今回の一連の行動をさらっと流さないで、検証、反省、改善して欲しいです。

昨日は大阪府庁でお話しし、知事にも面会できました。ご多忙の中、いろいろご説明できて良かったです。来週は国の集まりです。

ふと気がつくと、オバマ大統領の声明が載っていました。相変わらず上手ですね。

http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Remarks-by-the-President-on-2009-H1N1-National-Preparedness-and-Response/

その通り、だから余計に、、、、

その通り、だから余計に腹が立ち

という川柳があります。人間、本当のことを指摘されるのが一番むかつくものなのです。

さて、村重直子さんは10年以上の古い知己ですが、最近厚労省で大活躍をされています。彼女のような知性とヴィジョン、そして勇気を持った人間が霞ヶ関にいること事態が奇跡的ですし、日本にとってもよいことなのだと思います。外国の事情に詳しいのも強みです。例えば、このような見解も示しています。

http://medg.jp/mt/2009/01/-vol-4.html

さて、未確認情報ですが、彼女の動きを「いやらしく」阻害する動きが厚労省で出ていると聞きました。事実としたら、なんとも情けない話です。こういうネガティブなエネルギーが出てしまうのは、なんともつまらない。

http://www.kimuramoriyo.com/41/post_3.html

村重さんの指摘が事実であるならば、例え愉快な内容ではないとしても貴重なフィードバックとしてありがたく拝聴すべきです。それが自身の成長を助けてくれるからです。厚労省の一番いけないところは、反省しないこと、成長しないことです。いつも同じサイクルでしか、同じ価値観でしか回せていないのです。苦言は成長の糧として、喜んで耳に入れた方がよい。そして、もし事実でないなら、正々堂々反論すればよろしい。

ねちねちと裏で嫌がらせをするなんて、男だったらそんなみっともないことをするべきではない。自分自身を貶め、自分の価値を下げるだけです。もちろん、女だってそうですが。

なかなか便利、、、

感染症情報センターから以下のものがでています。とてもバランスのとれた良い内容で、簡潔明瞭、分かりやすいと思います。願わくば、著者名を出して欲しかったのと、もっと大々的に広報して欲しかった(欲しい)です。

9月2日 IDSC:パンデミック(H1N1)2009の臨床像(09/9/1)
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/case0902.html

9月2日 IDSC:新型インフルエンザの診断ガイダンス(09/9/1)
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/diagnosis0902.html

9月2日 IDSC:新型インフルエンザの治療(09/9/1)
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/treatment0902.html

本日のJクラブ

有名なモキシとエタンブトールの比較試験。結核治療はさらに短くできるか?という命題。

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2809%2960333-0/abstract

それにしても、フォローしていた患者が何人も銃殺されているとは、、リオデジャネイロ、侮りがたし。

昨日のJクラブ

偽膜性腸炎の再発。診断が遅いですよ、という論文。

Diagnostic and treatment delays in recurrent Clostridium difficile-associated disease
Journal of hospital medicine (Online)
2008 vol. 3 (2) pp. 156-9

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