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青マンふたたび

アメリカの学会で注文しといたマンデルが届きました。表紙が気に入りました。

 僕は基本、面食いなので、本の表紙をとても大事にします。ちょっと薄くてくすんだ黄色と青のコントラストがとてもきれいです。正確には何色って言うんだろう。色見本とか見るほどマニアではないので、見て、きれいと思って、楽しむだけですが。中身はまだ読んでいませんが、これで当面の楽しみがまたできました。

 前のマンデルのデザインは正直言って、むむむ、、でした。赤マンデルや緑マンデルの方が風情があって好きでしたが、中途半端なモダンさがマンデルを安くしてしまったような、、、でも使っているうちに慣れちゃいましたが。アメリカの定番の教科書は意外にデザイン的には普通、というのが多いですね。ハリソン、セシル、ブラウンワルド、ケリー、ネルソン、セイビストン、、、いろいろ買ったなあ。

 学生の時はその領域の「定番」を必ず買うようにしており、グレイズアナトミー(ドラマにあらず)から始まってガイトンとかセルとかいろいろ買いました。ハーパーは生化学教室の輪読会に出席していて2冊くらい買ったし、勢いでストライヤーも買っていました。今にして思えばなんだったんだろう、というバカな金の使い方をしていましたが、本にはけちけちしない方がよいと今でも思っています。さすがに臨床に入って全ての科の「定番」を買うことは不可能になり、ハリソン、セイビストン、ネルソン(の海賊版、、、本当はいけないんだけど、もう時効か?)にとどまっちゃいましたが。あと、あの頃はワシントンマニュアルも読んでいましたが、これも現場にいない学生の時に読んでもなんの役にも立たず、、、いったい何だったんだろう、という感じです。
 インターネットとかメールが普及していない時代で、島根の片田舎でどこでどう勉強してよいものやら分からない。周りを見るとみんなイヤーノートを読んでいるけど、それではいけないんだろうなあ、、、という漠然たる感想しかない。かといってときどき上京して都会の友達に会っても、Where there is no doctorとか読んでいる熱心な人はいましたが、このように勉強して、というモデルを示していた人には生憎会えませんでした。いたんでしょうけどね。
 学生の時は本当に勉強のやり方が分かっていなかった。USMLEのステップ2を僕は1回失敗していますが、その失敗した1回目で初めて東大の学生さんたちがファーストエイドを読んでいるのを見て、「その薄い本は何ですか」と訊いて「何こいつ?」と言う目をされたことがありました。そのくらい、当時の中央地方の情報格差は大きかったし、海外の情報というとさらに少なかった。そういえば、何かの弾みで手に入れた古いFOOTBALLという英国の雑誌を何度も暗記するくらい読み直したこともありました。今は外国の情報なんて映像やネットでこれでもか、というくらい手に入りますから、あの当時の古雑誌を繰り返して読んで、、、なんてときめくことはもうあり得ないでしょうね。
 そうそう、たぶん、僕の世代を分水嶺にして、臨床医学の世界でもアメリカは「あこがれの理想郷」から「玉石混合の巨大な何か」に変貌していくのでした。今の時代、日本に絶望したからアメリカで理想を追っかけて、なんて変な夢の見方をしている人はさすがに皆無でしょう。

 分かっていなかった、といえば、当時は医学雑誌の意味すらよく分かっていませんでした。恥ずかしながらNEJMの存在を知ったのは渡米してからでした。冗談抜きでイギリスの雑誌と思っていて(!!!!)、そのくらい当時の僕のアメリカに対する知識関心は低かった。学生の時はサイエンスとネイチャーは名前くらいは知っていたけど読んだことはなく、臨床には興味が薄かったこともあって医学雑誌の存在も知らなかったです。大学1年生の時、サイエンティフィックアメリカンのマラリアワクチンの総説を輪読したのが初めての科学論文への曝露でした。そういえば、10代の時英国に住んでいて、普通のたばこ屋さんとかでネイチャーとかランセットとか売っていてびっくりしたものです。ナショナルジオグラフィックとかサン、デイリーミラーといったタブロイド、ポルノ雑誌なんかと一緒に売っていたのでした。イギリスのアマチュアサイエンティストって本当にすごいと思いました。日本なんてプロの内科医だってランセット(かそれに相当する雑誌)を読んでいる人は少数派に属するでしょう。
 沖縄県立中部病院に行ってからは朝仕事前に論文を一本読むのを日課にしていました。当時は、なんかアメリカの雑誌を読むのに抵抗があり、マニアックにBMJを定期購読していました。BMJの論文を頭から毎日1本読む、という今から思えば笑止としか言いようがないバカな読み方でした。臨床的な文脈や問題点からアプローチしていないし、関連や関心のない論文も無理矢理読む。朝は眠いから頭もぼおっとしている。当時は英語力もたいしたことない。結局頭に入らない。がんばったで賞以上の何者でもない無意味な時間を使いました。でも、研修医の時って時間がないようであるものなので、このようなバカな時の使い方は未来の自分への投資としてあきらめるよりほかないのでしょう。研修医時代にバカなことはやり尽くしておいた方がよい、と思います。研修医時代はほろ苦いものでしたが、バカなことをやり通した点についてだけは、割と自信あります。
 今は、神戸大の5年生にはNEJMの論文を読んでもらってきたりしています。大変上手に読んできます。僕も年を取ったということです。そういえば、NEJMの表紙も何年か前に大きく模様替えをしてあまり気に入らなかったのですが、慣れてしまいました。ランセットの模様替えには未だに抵抗感を覚えますが、BMJのドラスティックな編集方針の変更にはビートルズやジョージ・ベストに通じる英国ラディカリズムの矜恃を垣間見て、ひそかに拍手喝采を送っています。ここまで「飛べる」医学雑誌が果たして日本にあるでしょうか?日本の医学雑誌は、特に学会誌は本当に魅力がない。魅力的であろう、という意志すら感じられない。それは、表紙のレイアウトだけでなく、です。僕も結局、ただの面食いなだけではなかったので、「魅力」とは何かをこの年になってそれなりに理解し始めているのでした。もうそろそろ、四十郎なのです。Img_0030

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