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キニーネとアーテミシニン

キニーネとアーテミシニン
- 通常僕らはアメリカの教科書(サンフォード、Johns Hopkins ABX-guide、ハリソン、マンデル、UpToDateなど)を規範に抗菌薬を選択している。
- しかし、マラリア治療におけるそれは、アメリカに基準薬がない事もあり、なかなか難しい。
- なので、ここにまとめておく。治療は原則、熱帯熱マラリアに限定
- 現在、日本で市販されている抗マラリア薬はメファキン(塩酸メフロキン)久光、ファンシダール(スルファドキシン・ピリメタミン)中外、キニーネ(塩酸キニーネ)経口薬 純生、メルクなどの3種類。これに抗不整脈薬のキニジンやドキシサイクリンも適応外だがマラリア治療に用いる事ができる。
- 医学書院の「治療薬マニュアル」には熱帯熱マラリアには目フロキンが第一選択薬となる、と記載があるが、もちろんこれは真っ赤なでたらめ。
- その他、熱帯病治療薬研究班が保管病院に抗マラリア薬を提供している。
- www.med.miyazaki-u.ac.jp—index.html <http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/parasitology/orphan/index.html>
- 原則、薬剤保管病院での治療が必要だが、患者が重症で搬送できないときなどは、頭蓋病院に薬剤を提供する事も可能。
- 取り扱い薬剤は、クロロキン、アトバコン・プログアニル(マラロン)、アーテメター・ルメファントリン合剤(Riamet)、アーテスネート坐薬、グルコン酸キニーネ(Quinimax)点滴薬、リン酸プリマキンである。
- この中で熱帯熱マラリアに用いるものとして、アーテミシニンとキニーネを今回は取り上げる。
- アー テミシニン(チンハオス)誘導体の一つであるアーテメーターは、難溶性のアーテミシニンの側鎖をメチル基で置換したものである。ルメファントリン(旧名ベンフルメトール)はキニーネ、メフロキン、 ハロファントリンなどと同じくアリル・アミノ・アルコール族に分類される遅効性の抗マラリア薬である。英国のガイトラインでは、マラリアにかかったと思われる場 合に旅行者自身が行う「スタンバイ治療」の薬剤に指定されている。(以上、研究班HPより抜粋)
- アーテミシニン(中国名チンハオス)はArtemisia annuaというヨモギ属の植物から1972年に中国の科学者によって抽出された。でも、むかーしからマラリア治療に民間療法的に使われていた。和名はクソニンジン。本当です。
- その誘導体がアーテメター、arteether(読めない、、)、アーテスネートである。
- アーテミシニンはセスキテルペンラクトンで、原虫の膜に作用するアルキル化作用を持つ。
- クロロキン耐性のP. bergheiはアーテミシニン耐性。haemozoinを欠くため。
- アーテミシニンは油、水ともに解けにくい。脂溶性にしたのがアーテメター、水溶性にしたのがアーテスネート。アーテメターは筋注、アーテスネートは点滴、筋注が可能だが、日本にはない(研究用のみ?)
- もっとも活性が高いのがdehydroartemisininDHAで体内で加水分解を受けるとアーテミシニンはDHAになる。肝臓で代謝され、半減期は短い、40分だが筋注坐薬で長くなる。PKのスタディーはあまりないそうです。坐剤で点滴のキニーネ並みの効果があると研究班HPにはあるが、データに乏しい。腎不全でも投与量同じ。
- 妊婦や授乳に対する安全性は不明。
- 副作用は、動物実験では高容量で神経毒性。でも、人では副作用はまれ
- アーテスネートでは、
- 腹痛、嘔吐、下痢などの胃腸症状や眩暈、臨床検査で網赤血球や特に幼弱な好中球の減少、一過性のトランスアミナーゼ上昇などがみられるが、臨床的に問題になることは非常に稀とされる。
 ただし、動物実験ではアーテミシニン誘導体のなかでも、特にアーテメーターの注射による中枢神経系障害が知られている。研究班HPより
- 相互作用は、マクロライド、リファンピン、アゾール等。
- メフロキンとの併用はシナジーあり。耐性の多いタイではこれがスタンダード。
- ジョンズホプキンスでは、artesunate 2.4mg/kg/dose点滴で、0, 12, 24, 48時間おきに投与。を推奨。
- 日本の手引きでは、400mg分2を1日、後に200mg1日1回坐薬で4日間、合計5日。その後メフロキン15-25mg/kgの坦懐あるいは2−3分割服用とある。メファキン275mgだと、1日4−5錠。
- Essential Malariologyでは200mgを坐薬で0.4, 8, 12, 24, 36, 48, 60時間後(つまり、2日目からは1日2回。その後経口に変更。点滴がない場合の治療法らしい。ベトナムでは4mg/kgをロードして、2mg/kgを4,12,48,72時間後に。
-
- キニジンはキニーネの右回旋のジアステレオイソマー。抗不整脈薬。キニーネはマラリアの薬。どちらも、マラリアに用いる事ができる。抗マラリア作用はキニジンの方が強いとされるが、副作用も多い。
- こちらも、ペルーなどの木から見つかった自然の薬で17世紀から用いられていた。Cinchonaアルカロイドの効果が分かったのは19世紀。
- 原虫のヘミン合成を阻害する。
- 血中半減期は10−40分。AUCは筋注、点滴共に変わりなし。肝臓で代謝され、腎排泄は20%程度で腎不全の調整は不要とされる。透析時は透析後に投与。CVVHDのデータには乏しく、モニターが必要(CID 2004;39:288-9)。
- 副作用は耳鳴り、難聴、頭痛、悪心嘔吐、視覚障害などのcinchonismで多くの患者が体験する。減量を余儀なくされる事も多い。
- インスリン分泌作用があり、低血糖が多い。点滴の速度が速いと起きやすい。マラリアそのものも低血糖を起こすので、要注意。
- 2gから副作用が出やすい。
- 不整脈はまれだが、おきる
- 末梢血管拡張などで低血圧も起きる。
- けいれんや昏睡も
- 過量投与の場合は、経口ならチャコールで対応。星状神経節ブロックは無効。
- 相互作用、ジギタリス、フレカナイド、ワーファリン、糖尿病薬、メフロキンなど。
- 妊婦には安全。
- 点滴薬はアメリカではキニジンを用いている。点滴キニーネはない。これが話をややこしくしている。
    - サンフォードでは重症マラリアにはキニジンを生食にといて10mg/kgを1時間で点滴、次いで0.02mg/kg/min持続点滴か24mg/kg を4時間かけて点滴、その後12mg/kgを4時間かけてこれを8時間おき。原虫が1%以下になるか経口投与が可能になるまで継続。これにドキシサイクリン100mgIV12時間おきを7日間かクリンダマイシンを併用。これがファーストチョイス。
    - 国際的にはキニーネがより用いられる。
    - 我が国の研究班投与量は
        - 8.3mg/kgを5%ブドウ糖あるいは生理食塩水200-500CCに希釈、4時間かけて点滴。8−12時間おきに繰り返す。重症例は初回16.6mg/kgでもよい。とある。
        - Quinimaxが1アンプル250mgなので、60kgの大人ならだいたい初回4アンプル、次回から2アンプル8時間おきとなる。
        - Mandellやハリソンだと、20mg/kgを5%グルコースに入れ、4時間かけてローディング、その後10mg/kgを3−4時間かけて8時間おき(最大量1800mg/d)。これだと、最初に4−5アンプル、その後2−3アンプルとなる。
    -
    - 併用療法
        - Essential Malariology 4th editionには併用療法についての記載はあるが、アーテミシニンとキニーネの併用については特に記載がない。
        - Guptaらによると(AAC May 2002, 1510-)、in vitroではキニーネとアーテミシニンはadditiveあるいはsynergisticであった。
        -
    - 優劣
        - 点滴のキニーネとアーテスネートなら、アーテスネートの方が有効かつ安全。
        - www.thelancet.com—abstract <http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2805%2967176-0/abstract>
        - これをアメリカが無視?していることが混乱させている。なぜ?

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