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もうひとつ、BSLの成果その3

CMV網膜炎の治療とIRISについて。これも5年生にまとめてもらった。

(AIDS患者の) CMV retinitis について
CMV retinitis
AIDS患者に於けるCMV retinitisの頻度 = pre-HAART:~30%, HAART era:~5% or less 1)
症状: (1)無症状(15-50%) (2)飛蚊症, 光視症, 暗点, 歪み; (暗点/歪みは黄班病変に顕著) (3)無痛, 発赤, 羞明
・両側性(診断時35%)、診断時片側性の50% = 無治療なら6ヶ月以内に反対側発症 2)
網膜炎の病態: 中心黄班壊死(非可逆的)、視神経炎(可逆的)、黄班浮腫(時に可逆的)、網膜剥離(外科的処置可能) 3)
・HAARTにより網膜剥離は減少、しかしCD4が<50以下の場合は未だ高い(約33%)3) 
診断: 網膜所見と経過・症状から経験的に行われる(十分に経験を積んだ眼科医の診断による)3-4)
*CMVウイルス量の測定は診断価値に乏しい。(血液・硝子体からのPCRは一般に臨床利用されていない。稀に硝子体のPCRは他のヘルペス網膜炎やトキソプラズマ症との鑑別に有用)
再発(Relapse) 3,5)
定義:休止期のCMV網膜炎が活動性となること(以前の眼底像と比較して網膜病変が進行していること)
臨床所見:視野境界の不透明化(くすぶり型網膜炎)、病変部境界拡大、明確な新規病変の出現(しばしば視野境界の不透明化を伴わない)、出血像単独では再発を意味しない
・活動性か非活動性網膜炎かの判断は、経過を追って網膜写真を撮影し注意深くモニターすることが最も効果的
再発原因;服薬アドヒアランス低下、硝子体内薬剤濃度低下、薬剤耐性ウイルス変異

再発頻度に関する研究報告
Jabs DA, et al. Course of cytomegalovirus retinitis in the era of highly active antiretroviral therapy: retinitis progression. Ophthalmology 2004;111:12.
研究デザイン:多施設前向き観察研究
対象:271人のCMV網膜症を持つAIDS患者 
方法:3ヶ月毎に所見と眼底画像を評価
再発の評価基準:以前より750μm以上病変が進行している、または、視神経乳頭の1/4を含む新たな病変の出現

 結果 → 網膜活動性病変の再発率は  CD4<50     0.58/人・年
                    CD4<50-99   0.19/人・年
                    CD4<100-199  0.09/人・年
CD4>200        0.02/人・年

Serge Doan et al. Cytomegalovirus retinitis in HIV-infected patient with and without Highly Active Antiretroviral Therapy. Am J Ophthalmol 1999;128(2):250-251
研究デザイン:単施設後向き比較研究
対象:1995年までのHAART未施行HIV陽性者952人、1997年までのHAART施行HIV陽性者726人 
方法:不明
再発の評価基準:不明

結果 →       CMV網膜症の罹患率                 CMV網膜症の再発率     
1995年(HAART(-)) 84/952  (8.8%)         1995年(HAART(-)) 30/84  (36%)                
1997年(HAART(+))  47/726  (6.5%)          1997年(HAART(+))  8/47   (17%)             

【参考文献】
1) Jabs DA, et al. Characteristics of patients with cytomegalovirus retinitis in the era of highly active antiretroviral therapy. Am J Ophthalmol 2000;133:48–61.
2) Jabs DA, et al. Course of cytomegalovirus retinitis in the era of highly active antiretroviral therapy: 2. Second eye involvement and retinal detachment. Ophthalmology 2004;111:2232–9.
3) Johns Hopkins Poc-it center, James P. Dunn, wrote [HIV Guide - CMV retinitis 06-23-2009 up-dated] http://www.hopkins-hivguide.org/diagnosis/opportunistic_infections/viral/cmv_retinitis.html?&contentInstanceId=8743
4) Mark A Jacobson et al. Pathogenesis, clinical manifestations, and diagnosis of AIDS-related cytomegalovirus retinitis. Up to date
5) Bradley T. Smith et al. [How to Treat Cytomegalovirus Retinitis] Eye net magazine  http://www.aao.org/publications/eyenet/200510/pearls.cfm

免疫再構築症候群 IRIS(Immune reconstitution inflammatory syndrome) について

<IRISとは>
HIV感染症患者においてHAARTの開始に伴い、もともと存在していた感染症が悪化する過程による炎症関連障害、と考えられている。
注意 現時点では、明確な定義づけはなされていない。

<IRISの特徴>
HAART開始後、数週〜数ヶ月で起こる
治療開始時のCD4+T細胞数が50/μL未満で、治療後にウイルス量が急激に低下した患者で最もよくみられる
結核の患者でよくみられる
致死的となることがある

<CMV関連IRIS>
もともとCMV感染していることによるIRISは、様々な研究者によって“免疫回復性ブドウ膜炎”(IRU),または、“免疫回復性硝子体炎”と呼ばれていた。IRISはHAARTの開始に続いて起こる、CMV網膜炎を伴うHIV感染症患者の16~63%の中から報告されている。CMV関連のIRISは通常IRUあるいは網膜炎の悪化として発現する。治療の努力にも関わらず、IRUを持つ患者は高い割合で、数ヶ月から数年に及ぶ重篤な視覚の合併症を引き起こす慢性炎症に発展する。

IRUの諸症状:無痛性フローター(硝子体に生じ視野中に現れる物体)、霞目、明所視、視力低下、眼痛
もともとCMV網膜炎をもつIRIS患者に起こりうる合併症:広範囲の硝子体炎、乳頭炎、白内障、網膜上膜形成、類膿胞黄斑水腫、まれに肺炎、大腸炎、膵臓炎、下顎骨炎など
検眼鏡検査:CMV患者に通常見られる程度を遥かに超えた強い炎症反応  
HAART開始前に抗CMV療法を行えば頻度が減らせるといわれている。

<治療>
HAARTを継続。(ただし、眼、神経、肝臓その他の臓器が特に悪化したり、ステロイド抵抗性を持つ場合には1〜3ヶ月間の一時的中断を考慮する)
CMV網膜炎が併存する場合は、抗CMV抗ウイルス療法を行う。
眼科学的なフォローアップに応じて、インプラント、局所点眼、眼内注射、または全身にcorticosteroidを投与(代替薬として、局所または全身にNSAIDs を使うことも可能)。
硝子体黄斑牽引が起こる場合は、硝子体切除術を考慮する。

<予後>
一般的に良好。ただし、長期にわたると、視力の悪化を来す合併症が起こる恐れがある。

参考文献:up to date、ハリソン内科学 第3版、
          Infectious Disease Vol.1,2 (Mandell Bennett Dolin)

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