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査読の話と英語の話

最近、学内外で査読をする機会が増えてきた。一円の得にもならなければ、名前が売れるわけでもないが、とても勉強になるので進んでやるようにしている。査読という体験そのものが素晴らしい勉強だし、他の査読者のコメントを読むのも(反面教師も含めて)よい体験だ。普通に論文を読むよりもずっと深い体験が出来る。

つまるところ、論文のレフリーも、サッカーのレフリーと同じである。全体像が俯瞰できて、論文や掲載雑誌の価値がどう高まるか、という高い視点から見るのが大切である。

もちろん、校正的なチェックも大事なので舐めるようにして読むが、かといってあまりに重箱の隅つつきなのは困る。特に、論文が議論していない部分に、「それに言及がない」とか「データがない」といちゃもんをつけるのは見苦しい。豚さんに空を飛べと言ってもねえ。

一度など、「学会が薦めていない検査法はよくないのではないか」とレフリーに言われたことがある。既存の知識のフレームワークの枠内だけで議論をするのなら、論文である意味がないのだが。

あまりに厳密に求めすぎて、本質的な議論がお留守になってしまうことも時々見る。ぴっぴぴっぴとなにかにつけてヒステリックに笛を吹くレフリーが、良い試合をつくらないのと同じだ。それぞれの雑誌にはそれぞれの許容レベルがある。科学といえども人間の営為である。全ての論文をNature, Scienceなみの要求度でばっさばっさ切りまくっても仕方がない。

論文に瑕疵があることそのものは問題ではない。それが瑕疵と認識され、なぜ瑕疵が生じたのかを議論でき、それでも言えることがあれば、臨床論文としてはまずよいのである。

そして、それがさらに説得力のある良い論文になるよう、提案をして、reviseしてもらう。言葉を尽くして、まだ見ぬ著者とコミュニケーションをする。これをinterrogationとしてではなく、accusationとしてではなく、上手にやるさじ加減を模索したい。ちょうど、サッカーのレフリーが試合の流れを切らないよう、選手がキレないようにレフリングするように。レフリーも良い論文作りのために一役買う、参加者としてのレフリーが好ましい。あちらの著者とこちらのレフリーという対立構造ではなく(同じことは、病院評価者と病院の関係においても同じだ、と主張したい。アメリカでも日本でも、病院監査が懲罰的すぎるのが問題なのだ)。

peer reviewも手放しで褒めて良いシステムではない。いろいろな問題がある。このような問題を飲み込んで、煮え切らない問題を煮炊きするのだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BB%E8%AA%AD

そう言う意味では、レターも大変意味の大きな営為である。これも出世とは何の関係もないけれど、知的トレーニングとしては価値の大きな行為だ(単にジャーナルクラブを内輪でやってあーだ、こうだというよりも、第三者に読まれる形でレターにする方がずっと知的レベルの高い作業である。そこでは、たんなるいちゃもんづけがずっと許容されにくくなる)。研修医にもだから、Jクラブで読んだものはレターにする気持ちでやって、と要求している。こないだ、一本書いてもらったけれど、残念ながら締め切りすぎていた。NEJMは3週間が限度です、、、、

できるだけ、論文や教科書は英語を使うよう、研修医や学生にも唸がしている。ただし、日本語がダメ、という意味ではない。日本語のアドバンテージはもちろん、ある。

HIVのガイドラインはDHHS、IASだけでは分からない「日本の事情」がある(それは生物学的にもあるし、社会学的にもある)。自分の主要テーマでない領域は、早読みできる日本語でさっと処理した方がタイムマネジメント的には賢い選択だ。今、RAの治療についてのオーバービューを故あってざっと復習しているが、これには岸本先生の「すぐに使える」が便利である。すぐに使える、というだけあって本当にすぐに使える。Kellyなんかを開いて読むとこれよりずっと時間がかかるし、コンセプトの理解の甘い僕には理解がぼんやりするだろうし、日本の添付文書では、みたいなペリフェラルな知識はさらに文献をあさらねばならないだろう。だから、はしょっちゃう。

でも、学生や研修医には英語をよめという。ここで泣き泣きがんばって読んでおくと、それが後々アウトプットできる良い貯金になるからなのです。大人はずるいんです。がんばって。

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