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2010年6月

すりガラス様陰影のアプローチ

これも役に立つ。多彩な疾患群を画像からアプローチ。

「20100630095008.pdf」をダウンロード

憩室炎のアプローチ

「20100630094812.pdf」をダウンロード
分かりやすいようで分かりにくい、よく見逃される憩室炎。

本日のJC

Googleドキュメントのおかげでチームの文書管理は楽になったが、備忘録のためにここにも

学生さんの発表

Effectiveness of five different approaches in management of urinary tract infection: randomised controlled trial
BMJ 2010 vol. 340 pp. c199

非妊婦女性のUTIに対する5つのアプローチを評価したRCT。症状と抗菌薬使用がアウトカム。症状改善に差はなく、試験紙、尿検、抗菌薬を遅らせると抗菌薬使用は減る。48時間以上待つのはよくない。尿検査ができないようなプライマリ・ケアのセッティングではテストテープでもOKか。尿検査が出来ないような大学病院のセッティングでは?

Randomized, multicenter trial of antibiotic prophylaxis in elective colorectal surgery: single dose vs 3 doses of a second-generation cephalosporin without metronidazole and oral antibiotics
Arch Surg
2007 vol. 142 (7) pp. 657-61

短期研修のA先生のプレゼン。大腸癌の予防抗菌薬は1回か3回かという日本のがんセンターからの発表。使ったのはセフメタゾール。皮膚のSSIは3回のほうが少ない。ARRで10%くらい減る。評価者が主治医(attending)なのとか、3時間後の追加投与が術中にないことなどが突っ込みどころ。まあ手術は3時間以内の方が多いので、、、フラジール点滴の意義も議論されている。

Comparison of 2 doses of liposomal amphotericin B and conventional amphotericin B deoxycholate for treatment of AIDS-associated acute cryptococcal meningitis: a randomized, double-blind clinical trial of efficacy and safety
CLIN INFECT DIS
2010 vol. 51 (2) pp. 225-32

クリプトコッカス髄膜炎の治療におけるリポアムホテリシンとデオキシコレートを比較する古典的な論文。治療効果は同じ。副作用は3mg/kgのリポが(6mg/kgやデオキシコレートより)いちばん少なかった。データは1995-1998年までのもの

Beta-blockers may reduce mortality and risk of exacerbations in patients with chronic obstructive pulmonary disease
Arch Intern Med
2010 vol. 170 (10) pp. 880-7

COPDの患者にβブロッカーを用いるとむしろ予後はよい?というコホート研究。オランダはGPのデータベースがこんな素晴らしいのがあるんですね。僕がよく理解していないpropensity scoreでバイアスを調節。

How many lumens should be cultured in the conservative diagnosis of catheter-related bloodstream infections?
CLIN INFECT DIS
2010 vol. 50 (12) pp. 1575-9

CRBSIの血液培養はどこまでのルーメンで行く?全てのルーメンから、、、というスタディー
ダブル、トリプルルーメンでは1ルーメンからのみ培養だと15ー20%以上見逃してしまう。

世界は驚いた

Impressive の文字がBBCのサイトに踊る。世界は驚いたはずだ。カメルーン戦は勝ったけど世界はがっかりした。オランダ戦も良い試合だったがオランダのプラン通りだった。この試合はブックメーカーを困らせ、デンマーク関係者を苛立たせた。パラグアイもこの試合を見て「ラッキー」とは思わなかったろう。

この内容、この結末を予想した人は、専門家にもほとんどいなかったはず。僕も予想してなかったけど。世界中のサッカージャーナリストはマラドーナが言うように謝罪するか、過去に自分の書いた記事のことはなかったことにしてしまうしかないだろう。

本田はいざというときに本当に落ち着いていた。3点目のクライフターンは見事でした。最後までばたばたせず、むしろデンマークのほうが焦り、苛立っていた。

この勝利は日本のサッカー史に確実に残る大きな勝利だ。そして今後何年もの日本サッカー界に大きな未来を与えたはずだ。

そしてパラグアイ戦でよい試合をすれば、この大会は東アジアが躍進した大会として記憶されるかもしれない。90年のカメルーンがそうだったように。

落ち込んでいる 本の紹介、そしてWC

ある事情で非常に落ち込んでいる。もともと落ち込みやすいのだ。研修医に「基本、自分が好き」と言う人がいてうらやましく思う。基本的に自分は嫌いだ。

多田富雄の「独酌余滴」を読んでいる。10年以上前の執筆だ。心にしみいる素敵な随筆である。なかに、マラリアにかかったのに東京の病院ではだれも相手にしてくれなかったかわいそうなNYタイムズの記者の話が出ている。あいにく、10年以上たっても事情は全然改善していない。多田富雄と言えば、沖縄時代の盟友、本村和久くんが書棚に「免疫の意味論」を置いていたのを思い出す。当時、あの過酷な研修中に哲学書を読む余力があったのは(そして病棟のナースにケーキを作って持って行くような気の利いた配慮を示せたのは)本村くん以外にありえない。僕らは必死こいてDKAの対応法とか肺炎の時の抗菌薬の投与量とか暗記していた時代である。自分の器の小ささを痛感したものである。

その他、最近良かった本。

青木眞先生が編集されたレジデントノート増刊号。これはよいです。感染症専門医がいないところでどうしよう、という話だが、各執筆者がかなり工夫を凝らしている。感染症界もいろいろ多様な切り方ができるようになってきた。素晴らしいことだと思う。

黒田龍之助さんの本にはまっていて、よく読んでいる。言葉の恣意性やいいかげんさなど、我が意を得る言説ばかりでした。ロシア語勉強したくなっちゃいましたが。今、書き下ろしの本を3冊ばかり用意しているが(翻訳とか連載のまとめを入れるとさらに多くなってohmygo!!だが)、おかげで一冊はめどがたった。キーワードは言葉だ。

少し古い現代のエスプリだが、これは面白かった。西條さん、池田先生、竹田さん、養老孟司、内田樹さんなど、豪華メンバーのオンパレードだ。心理療法についての総まとめにもなった。これも押しだ。それにしても、あちこちつながっているなあ。

これから内田さんの「若者よ、マルクスを読もう」を読もうと思う。

さて、落ち込んだムードを払拭できるか否かは今夜にかかっている。がんばってください、日本代表。第三戦はドラマの連続。がんばっても上手くいかないこともある。世界最高峰の大会で、ここで半分に削られるのだから当然だ。ウルグアイは素晴らしい。アルゼンチンはもっと素晴らしい。マラドーナファンとしては溜飲を下げるような内容だ。でも、メディアは絶対反省しないんだろうな。イングランドも少し持ち上がった。ドイツとは常に良い試合をしているから、とても楽しみだ。韓国はくやしいし、むかつくが非常によいチームだ。韓国は嫌いだが、パクチソンは素晴らしい。オランダもよいが、98年ほどではない。もちろん、74年ほどではない。ブラジルも良いが、過去のブラジル(70とか82とか)ほどではない。スペインはよい。でも優勝は無理なような気がする。どこが勝つのかは全く分からない。まだまだ饗宴は続く。

カンジダとアスペルギルスとクリプトコッカスの違い

カンジダについて、アスペルギルスについて書け、ではない。違いを書け。別化性能を問う問題。こういうのは教科書を丸写しするだけではダメなので学生は苦手。一度やり直しをだされちゃいましたが、がんばりました。「20100624073415.pdf」をダウンロード

アスペルギルスが起こす病気

これも定番のお題「20100624073318.pdf」をダウンロード

抗真菌薬のまとめ

これも何度もやってるけど。繰り返しが大事。「20100624073234.pdf」をダウンロード

CMV感染の診断

これは医者でもよく間違えている。「20100624073059.pdf」をダウンロード

喀血の鑑別診断

これも、使える。使えるレポートを作ってもらってます。「20100624072958.pdf」をダウンロード

リウマチ熱

リウマチ熱のまとめです。「20100624072710.pdf」をダウンロード

ヘルペス属の分類

これもよく分類していました。質問にも上手に答えていたし。「20100623143110.pdf」をダウンロード

IE予防AHA

これもレポート、抜歯でなく、抜糸でも抗菌薬必要なんですね。「20100623142938.pdf」をダウンロード

腎細胞癌が起こしうる臨床症状(学生レポート)

がんばっています。よくまとめ、よく調べてきました。「20100623142635.pdf」をダウンロード

まるで違う世界

今、勉強しながらBGMにスカパーの日本対オランダを流している。

まるで違う世界だ。

4年前のオーストラリア、クロアチア、ブラジルの試合はとても二度と繰り返して見たくなるような試合ではなかった。くやしくて、みじめで。実際あれから見てないし。みじめ。この言葉が2006年を集約している。昨日の試合はもう一度見直してもよいものだった。良い負け方ってあるのだ。

いま、結果の分かっている段階で冷静に見直しても日本はよくファイトしている。日本の持てる武器を最大限に活かし、一人一人が何をやらなければならないかを理解している。チームとして機能している。オランダは結構イライラしていたな。すくなくとも、イメージしていたゲームは出来なかったはずだ。僕は先に、オランダには負けても良いがぼこぼこにされては困る、と書いた。これで日本をなめてかかるチームはもういないはずだ。

事前に問題山積みだったことが、けちょんけちょんに非難されたことが、ここにきてチームをよくしている。不思議なことだ。アルゼンチンと日本がちょうどこれに当たる。逆に期待されたパフォーマンスが全然出来ていないチームもある。イングランドみたいに。もちろん、まだ一次リーグなので、ここからだんだんパフォーマンスを上げていくのかもしれないが(イタリア人監督だし)。あまり最初から飛ばすところっと負けてしまうことも多い。アルゼンチンはとても期待しているのだが、毎回最初はパフォーマンスよいだけにどうだろう。

チームがひとつになっていないといいゲームは出来ない。当たり前のことなのに、このクラスなのに、それができないカメルーンとフランス。人間とは不思議なものだ。

チームとかリーダーシップ、コミュニケーションをテーマに最近お話することが多いが、ワールドカップ一つ見ていても、定型的なチーム作り、定型的なリーダー、定型的なコミュニケーションなんてありえない。何が災いし、何が幸いするかは後付で説明は出来るが、予定して物語を作ることは出来ない。伝説のチームも名監督も、偶然の積み重ねがそうなっちゃった的な要素も大きい。20世紀最大の監督といわれるミケルスだって、「あの」伝説の74年のチームを率いたのは、その年になってからだった。ほんと、できちゃったチームなのだ。

オシムはしかし相変わらず的確なコメントだ。守備はよい。攻撃は物足りない。だが、今のままでやるべきだ。、、、だそうです。あとは幸運の女神がちょっとほほえんでくれれば。

まだ空席あります。

まだ若干空席がございます。ふるってご応募ください。

●第3回新型インフルエンザ・リスクコミュニケーション・ワークショップ●ご案内
Kobe University Risk communication on Influenza Virus Outbreak WorkShop III, KURIVOWS III (クリボウズIII)

 2009年、世界的な新型インフルエンザA(H1N1)感染症のアウトブレイクが起きました。リスク・コミュニケーション、クライシス・コミュニケーションの重要さが改めて確認されました。患者情報の開陳、記者会見のあり方、報道のあり方、発熱相談センター・発熱外来におけるコミュニケーションなど、全てのセクションで良質で効果的なコミュニケーションが必要とされます。
 今年も神戸大学都市安全研究センターでは、全国の感染症を担当する行政 関係、保健関係、医療、報道関係者を対象に、現場で行うリスク・コミュニケーションの実践を習得するためのワークショップを企画いたしました。名付けてKURIVOWS III。2008年、2009年に続き3回目です。今回はスペシャル・ゲストもお招きして、さらにパワーアップ。また、昨年要望があった、「リスク・コミュニケーション以外のインフルエンザの基礎知識」のおさらいレクチャーも企画しました。ワークショップなので、議論の時間もたくさんとりたいと思っています。楽しく実りの大きな会にしたいです。ぜひ、ご参加ください。なお、申し訳ございませんが、定員に限りがございますのでご応募いただいた方も御参加いただけない場合がございます。ご了承ください。

主催 神戸大学都市安全研究センター 
協力 NPO法人 HAICS研究会
会期 平成22年8月31日(火)、9月1日(水)
会場 神戸ポートピアホテル
〒650-0046 神戸市中央区港島中町6丁目10-1 TEL.078-302-1111(代表) FAX.078-302-6877    http://www.portopia.co.jp/
参加対象 全国の感染症に関係する行政、保健、 医療、報道関係者

内容(敬称略。講師、内容には変更の可能性があります)
平成22年8月31 日
===12:00より受付開始===
13:00 開会のあいさつ

第1部 復習とお勉強編
13:05 おさらいレクチャー1 インフルエンザウイルスの基礎知識 神戸大学 新矢恭子
13:25 おさらいレクチャー2 インフルエンザ診療の基礎知識 神戸大学 大路 剛
13:45 おさらいレクチャー3 インフルエンザと感染管理 神戸大学 李 宗子
14:05 休憩
14:35 サーベイランス 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース(FETP-J) 具 芳明
15:45-休憩

第2部 リスコミ・プレイバック 振り返り編
16:00 臨床現場におけるリスコミ 神戸医療センター中央市民病院 林 三千雄
16:30 地方行政におけるリスコミ 神戸市保健所 白井 千香
17:30 日本のリスコミ、世界のリスコミ 近畿医療福祉大学 勝田 吉影
18:00 休憩
18:10 総合討論 2009年のパンデミック リスコミ的に振り返ると
司会 岩田健太郎 特別ゲスト 神戸女学院大学 内田 樹
19:20 意見交換会 記念撮影

平成22年9月1 日
第3部 アップグレード編 明日からどうする?
8:30 コーチングとコミュニケーション  佐々木 美穂
10:00 休憩
10:10 リーダーシップとは何か 岩田健太郎 洛和会音羽病院 土井朝子
11:10-総合討論とまとめ
12:00ー閉会の挨拶 修了書授与

参加費  35,000円(宿泊費込み)              当日受付時にお支払ください。
申込方法  下記の項目に記入の上、e-mailでお申込ください。
定員 60名(7月9日に選考結果をお伝えします)
締め切り 平成22年7月2日(木)
申込先 新型インフルエンザ・リスクコミュニケーション・ワークショップ事務局
    担当:鍵田祐子(神戸大学附属病院感染症内科)
TEL:078-382-6297                         
e-mail:kurivows@gmail.com

平成22年8月31日より開催される第2回新型インフルエンザ・リスクコミュニケーション・ワークショップに参加申込します。
フリガナ:
氏名:
所属施設:
役職:
志望動機:
その他御質問など:
お知らせいただきました個人情報は当研究会活動の目的のみに使用し、第三者に開示することはありません。

感染症は実在しないの書評

気がつけば、構造構成主義研究に「感染症は実在しない」の書評が載っていた。なるほど。書いていただいた京極真さんに感謝である。

本は出版されてしまえば読み手のものなので、どういう感想をいだいても僕にはどうしようもない。どちらかというといろいろな感想を持ってもらえる本のほうが幸せだと思う。

今、4年生にチュートリアルで講義(というか対話)をしているのだけど、その多くはこの本で書いた内容が基盤になっている。1週間という短期間でどこまで通じるかは分からないけど。

チュートリアルはなんとかしたい。TBLのほうがやりやすいと思う。基本的に、教えるコンテンツに長けていないサブジェクトを教えるのは大学生に対して随分失礼な話である。そんなに甘いものではないのだが、この領域は(どの領域もそうだと思うけど)。付け焼き刃で勉強したくらいではある学問体系のチューターは勤まらないし、ましてや勉強ゼロでは有害ですらある。それをやろうと思えば、内田さんみたいに「街場の」ゼミでやるしかないのだが、こっちのほうが実は難しい。

いずれにしても、神戸大学の学生は目ざめつつある。もう少しだ。


ダブルバインドなジャーナリズム

山内雄司という人のコラムを読んだ。

http://wsp.sponichi.co.jp/column/archives/2010/06/post_1613.html

勝っただけではダメで、勝ち方が大事だという。しかし、その直前にはこう言っている。

http://wsp.sponichi.co.jp/column/archives/2010/05/post_1585.html

「ただ、もはや本大会から逃れることはできない。ならば、もう気取ることだけはやめて欲しい。ベスト4だの、やるからには優勝を目指すだの戯言は抜きにし て、自らの弱さを認め、サッカーに謙虚に、今できることのすべてをぶつけて欲しい。壮行試合ですら何もできなかったチームに、本大会で多くを望むのは無理 がある。世界を相手に今できることがほとんどないのも分かっている。だから無様でも良いから、むしろ虚栄を脱ぎ捨て、無様なまでにカッコ悪い代表が見た い。」

そうやってかっこ悪く勝ったのだよ。

こういうベイトソンのダブルバインド状態になるようなコメントを出すのはメディアの常套手段となっている。どっちに転んでも文句をいう。見解が変わったのならばそれでもよいが、そうならばそうと表明するのが誠実なやり方だろう。山内氏は彼はサッカーダイジェストという専門誌の元編集長である。サッカー界のメディアがいかに質が低いかがよく分かる。選手の質よりもこちらの方が問題だ。岡田解任論はあちこちからでた(僕も出した)が、自分の発言に落とし前をつけているジャーナリストをまだ知らない。

98年の岡田監督は、1勝1敗1引き分けを目標にして「そんなやる前から負けるような話をして」とメディアにかなり叩かれた。これはベスト16の目標に換言できる。かといって、ベスト4を目標にすると、「そんな無茶な目標立てやがって」と文句を言われる。同じ基準でどっちに転んでも文句を言うのだから、メディアというのはお気楽な商売だ。

ワールドクラスのカメルーンと、ワールドクラスの選手がいない日本で試合をするのだから、勝つためにはあれしかなかったと思う。バルサに対してモウリーニョがやったことを思い出せば分かる。彼はこれで欧州チャンピオンになったのだ。文句なしの勝者である。引いて守るのか前に出て責めるのかは、手段であって目的ではない。手段を目的化できるのはクライフのような希有な巨人だけである。

カメルーンのコンディションが悪くて、日本のコンディションがよかったから勝てたというのはそうだと思うが、4年前はその条件すら満たせなかったのだ。だから、日本は前進している。満足できる状態ではない。今でも一流の監督であればベターなチームになっていた可能性は高かったと思う。いいチームが作れなくて、ぼこぼこに叩かれて、逆説的にタフなチームになったのだ。しかし、カメルーン戦でもし負けていたらこの4年間は完全に水泡に帰したことになるので、やはり非常に価値の大きな試合だった。

オランダ戦に勝つ必要はないと僕は思う。120%の力を出してデンマーク戦でへとへと、ではアトランタオリンピックの二の舞である。ただ、ぼこぼこにやられるのも困る。すでにオランダにはテストマッチやオリンピックの借りがあるのだから、今度やられたら負け癖がついてしまう。日本は甘くみれないぞ、と驚異を覚えられるような試合が必要になる。韓国も北朝鮮も、「なめたらいかんぜ」というメッセージを送ることに成功しているが、カメルーン戦の日本を見てオランダは驚異に思ったりはしていないだろう。

そのためにはカメルーン戦とは逆に「後半に目覚めるチーム」になることだと思うのだが、さてどうなることだろう。

やりました

日本にとってこれ以上ないという展開。大久保と松井の両サイドの効果的な動き。オフサイドが多かったが、それだけ裏をつく動きに執心していたということだ。本田のゴールはラッキーなトラップからだが、それでも慌てず落ち着いていたところが、素晴らしい。ラッキーといえば、カメルーンのチーム作り失敗があったり、クロスバーも守ってくれた。しかし、それを込みにしても価値の高い初めてのアウェーでの一勝。スタミナを考えて、あえてサイドのディフェンスが上がらなかったのも今回は正解。

前回大会の反省を活かし、コンディション作りをしっかりとしていたのが印象的。冬の大会というのも走るチームの日本にはよかった。

選手の選抜、フォーメーション、コンディション作りと全ての面でうまくやった日本。僕も含めてさんざんに叩かれていた岡田監督だが、してやったりだろう。98年と06年の教訓が十分に活きていた。三敗の予想が濃厚だっただけに、素直に反省、謝罪、感謝である。ごめんなさい。ありがとございます。

このやり方ではオランダには通用しないかもしれないが、デンマークになら行けるかも。どのように体力を分配するのか、興味深い。

別のところでも総括

高山、石川、平川さんの元厚労官僚の新型インフルエンザ総括が日系メディカルオンラインに載っている。大変参考になる。僕らの総括会議よりも的確なポイントを突いているところも多い。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t093/201005/515245.html

総括会議でも僕は厚労官僚の見解や分析を聞きたくて、それを要望したのだけれどこれは却下された。まあ、こういうところでアウトプットがあればそれでよいのだろう。

兵庫県、国での総括をいちおうやったのだが、さて、例えばメディアとかは自らの振る舞いをどう総括しているのだろう。するのかな、そもそも

違うんだけど、、、

朝、NHKラジオのニュースを聞いていたら(もう最近はテレビのニュースも見る気が失せています。いよいよスポーツ以外は何も見なくなってしまった)、サッカーワールドカップ、ここまで負けが続いていますが、なんとしても選手にはがんばって欲しいですね。とアナウンサーがコメントしていた。

なんとしてもがんばる、ではだめなのだ。がんばるのは当たり前だ。4年に1度の祝祭である。みな全力でがんばるに決まっている。プロなんだし。

新型インフル総括会議の議事録が丁寧に作ってあるので、ぜひ読んでください。こんなに丁寧につくんなくても、、と思っていたが、なるほど臨場感があってよい。これなら、インターネットで会議そのものをYouTubeに公開した方が良いんじゃないかとすら思う。文字起こしして、議事録作るの、大変でしょう。ご苦労様、大変だなあ、偉いなあ、と思う一方で、「無駄だなあ」とも思う。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/info_local.html#section04

どうしてこんなことを書いているかというと、まとめの報告書が見事に骨抜きだからである。たとえば僕は感染症法、予防接種法の改正、感染症情報センターのCDC(らしきもの)への進化を具体的に何度も提言しているが、「報告書」には見事にそのような文言は抜けており、代わりに「法制度について検討する」といった言葉に転じられている。だから、議事録をそのまま読んでくれた方がよい。新しい厚労大臣がだれになるのか知らないが、その人にも読んで欲しい。報告書じゃなく、議事録を。

「検討する」ことが目標になってどうするんだよ。検討するのは当たり前で、その後どうなるかが問題なのに。検討する、とか議論する、ことを「目標」にすると、結果どんなに尻すぼみになったってだれも文句は言わないわけだ。

ヴィジョンとは具体的に目に見えるように誰の目にも分かる目標をいう。だから、visionというのだ。現行の報告書(案)を読んでも具体的にどうなるのかがよく見えない。人によって「何とでも解釈できる」文章になってしまっている。そういうメッセージのわかりにくさが2009年の大きな障壁になった、と会議で何度も言われているのに、同じことをやる。不思議だ。

まあ、民主党政権みたいにできないことをぶち上げてあとでどんどん撤回するよりもよい、という意見はあるかもしれない。でも、できるかできないか分からないところで 目標を立て、挑戦し、そして失敗することは、目標すら立てないよりもよほど立派な態度だと僕は思う。挑戦して失敗し、敗れたことを非難するのはおかしいの ではないか。「なぜ」失敗せざるを得なかったのか、その点を論じるべきなのではないか。あるいはでは、どのようにすれば「成功」するのか、あるいは何をもって成功と呼べるのか?こういう話は既存のメディアからはでてこない。もちあげておいて、叩く。トスしてアタック。日本のメディアはバレーボールみたいだ。

そう言う意味では岡田監督個人を責めるのはおかしいなあ、とちょっと反省した。世界レベルのチームで世界レベルの戦いを経験していない監督が、世界で勝つことに必死で挑戦しているのである。それはそういう経験のない人物には大変なチャレンジだ。外国に行ったこともないのにいきなりエベレストを制覇せよ、というようなものだからだ。だから、批判すべきは岡田監督と言うよりも、そういう人事にいたってそのまんまにした協会のほうにある。

カメルーンもデンマークもオランダも、予選リーグ突破は具体的な目標だ。そのためには、必ず日本からは勝ち点3を奪うプランしかないはずだ。98年のフランスとはそこが違う。フランスの時は同グループにジャマイカがいた。アルゼンチンもクロアチアもだから、それほどエンジンをかけずに「流していた」。日本で引き分けてもジャマイカで勝てば十分予選突破は計算できたのだ。だから日本は善戦できたのである。しかし、今回はそのようなアンダードッグは日本だけだ。だから、どのチームも「他で負けたり引き分けても、日本にだけは勝たなきゃいけない」と思っている。そんな彼らに勝つのは、今の日本では極めつけに難しい。日本のエース本田はロシアのリーグでは活躍できるが、プレミアリーグやセリエAのトップチームのエース級をそろえたチームの前では「ただの一選手」に過ぎない。中田のときもそうだったが、日本代表選手の相対評価が甘すぎるのである。日本は個の力に頼っていては世界で勝てないので、コレクティブにやるしかないのだ。それは2002年に韓国がやったことだ。オシムがずっと言っていたことだ。もう今更言ってもぐちになるだけだが。

いずれにしても、ワールドカップは4年に1度の祝祭だ。楽しむに限る。確かに、近年クラブチームの方がレベルは高いのだけど、通常提供されすぎていて「け」のイベントになってしまっている。ワールドカップはいまだ「はれ」の舞台であり、その高揚感、空気がもたらすものはまた違う。4年前のドイツの盛り上がりは今でも思い出す(その後のものすごいもりさがりも、、、)。ここ数回、各国の予選を全然見ていないので優勝チームの予測が全く出来ない。昔のメンタリティーのままで、情報のないまま楽しめる、ということで。

CDI/CDADガイドライン

さっきだしたIDSA/SHEAのガイドラインはここです。

http://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/651706

どうして、CDADではなくCDIなのか?という疑問があったのだが、「下痢だけじゃないぞ」という点を強調したかったからのようだ。なるほどね。でもならば、下痢をしている場合はやはりCDADでよいわけで、、、構造主義的にはちょっとなあ、、、と思う。

www.eurosurveillance.org/images/dynamic/EE/V13N31/art18944.pdf

アイルランドのように併記している国もあるようです。こっちのほうが大人の態度だと思う。

www.hpsc.ie/hpsc/EPI-Insight/Volume92008/File,2944,en.PDF

今、監訳している「Issues and Controversies」にはCDI/CDADの煮え切らないところがよく議論されていてとてもおもしろい。お奨めです。英語で読むのはちょっと、、という方は、もちょっと待っていただければ日本語版がでる(と思います)。煮え切らない部分こそしっかり勉強。

http://www.amazon.co.jp/Emerging-Controversies-Infectious-Disease-Diseases/dp/0387848401/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1275525108&sr=8-1

偽膜性腸炎、経口メトロニダゾール、塩野義

医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での検討結果を受けて開発企業の募集又は開発要請を行った医薬品のリスト

ができている。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/s0521-5.html

ここにメトロニダゾール経口薬がある。現在トリコモナス膣炎にしか適応がない。で、嫌気性菌、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症、細菌性腟症などに要望が出ているのだが、、、、

※ 「クロストリディウム・ディフィシル関連腸炎」については、塩野義製薬(株)からの特段の意見により開発要請を保留している。

というコメントがついている。これは異な、、、、

というわけでその「特段の意見」を拝聴してみる。それは、重症例にはバンコマイシン経口よりも治療効果が低いので、軽症、中等症に用いるように、というIDSAとSHEAの新しいガイドラインがある、というものである。米国ではメトロニダゾール経口薬の必要性が「低下している」ため、日本での承認は必要ない、という見解である。

これは異な、、、、

米国でメトロニダゾール経口薬の価値が低下しているのは、事実である。しかし、それは相対的なものでメトロニダゾールが承認取り消しになった、とか販売中止になった、ということではない。優先順位に変更があっただけである。しかも、軽症、中等症にはいまだにファーストラインの治療だ。ファーストラインの治療について、日本はまだそのスタートラインにすら立っていないのである。承認の有無とは全く関係ない。議論のすり替えだ。

ちなみに、バンコマイシンは125mg1日4回が推奨される。コストをやや抑えられる。ただし、再発は多い可能性があるので、再発例には500mg4回のほうがよいかもしれない.

Am J Gastroenterol. 2002;97:1769-

こっからはあくまで憶見が入っているが、世界最大の抗菌薬消費国である米国は偽膜性腸炎のインパクトが大きいのだろう。メトロニダゾールの使用量も日本より圧倒的に多い。相対的に効きが悪くなるのは当然といえば当然だ。

バンコマイシン経口薬がVREを増やすという明確な証拠はない。が、バンコマイシン経口薬使用が増えた後、韓国ではVREの増加が観察されている。

J Infect Chemother 2003;9:104-

また、各国のデータ(フランス、UK、韓国、カナダ)を見るとメトロニダゾールの感受性は全体的には保たれている。アメリカのデータだけを見ていてはいけない、日本には日本の事情がある、というのは日本のメーカーの常套句ではなかったのか。

Antimicrob Agents Chemother 2002;46:1647-
J Antimicrobial Chemother 2005;156:988
Antimicrob Agents Chemother 1999;43:2607-
Diag Microbial Infect Dis 1999;34:1-
Clin Infect Dis 2005;40:1591-

バンコマイシン経口だけでなく、別のオプションもあったほうが戦略的である。逆に、塩野義に、メトロニダゾールが「使われてはいけない」根拠を求めたい。米国においてその価値が低下した、だけでは「根拠」とは呼べない。もし、そういうものがあるとすれば、その根拠は塩野義の内部にしかない、と僕は思うのだが、どうだろうか。

本日のjくらぶ

Combined antiretroviral treatment and heterosexual transmission of HIV-1: cross sectional and prospective cohort study
BMJ
2010 vol. 340 pp. c2205

フォロー中のパートナーへのHIV感染を観察した前向きコホート研究。大都市でこんなことやってしまうってすごい!
HAARTとプロテクションで、ヘテロセクシャルな感染はかなり少ない(かもしれない)。患者さんに対してもインフォーマティブで臨床屋的には非常に意味のあるデータ。

A step-up approach or open necrosectomy for necrotizing pancreatitis
NEJM
2010 vol. 362 (16) pp. 1491-502

壊死性急性膵炎はオペか?ドレナージでだめならステップアップか?のスタディー。壊死性膵炎は9割以上感染合併。抗菌薬使用を正当化する。ステップアップのほうがコンポジットでよかった。壊死があってもドレナージなしで半分くらいはいける。

Use of procalcitonin to reduce patients' exposure to antibiotics in intensive care units (PRORATA trial): a multicentre randomised controlled trial
Lancet
2010 vol. 375 (9713) pp. 463-474

有名なPRORATAスタディー。プロカルシトニンを毎日測って抗菌薬出してね、、、という「おふれを出すと」抗菌薬は減る。プロカルシトニン「そのものの」価値はこの論文では不明。ログランクで「線」で評価すると29−60日の死亡率はプロカルシトニン群のほうが高い、、、か?

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