DDV IV阻害薬
最近話題のお薬。再勉強。
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はじめてコメントさせていただきます。
DPP-4阻害薬のレポートを拝見しました。
学生さんのレポートとしては、かなり優秀なので感心しました。
しかし、気になる点がいくつかあります。
その1
「インクレチンは食物摂取がトリガーとなり小腸より分泌されるため、血糖値に依存性にインスリンの分泌調整が行える」とありますが、これは間違いです。
インクレチンがグルコース依存性にインスリン分泌を促進するのは、インクレチンがcAMPの活性化を介して、インスリン分泌経路の増強に働くからであり、決して「食事性に分泌されるから」ではありません。
その2
全体的に、GLP-1アナログとDPP-4阻害薬を混同しているようです。
特に、「食欲抑制作用により体重を減少させる働きがある」とありますが、体重減少作用は、DPP-4阻害薬には認められません。
その3
インクレチン関連薬のデメリットとして、「長期安全性や効果が証明されていないこと」を指摘されていますが、もうひとつ、「コストが高い」ことも重要だと思います。
シタグリプチン50mg(通常投与量)の薬価は185.70円です。
メトホルミン750mg(先発品)が27.60円で、グリメピリド1mg(先発品)は22.50円ということを考えると、これもデメリットとして知っておく必要があります。
その4
「既存の薬物治療により良好な血糖コントロールができていない症例に対してHbA1cの改善が認められたとの報告がある。」
と、ありますが、参考文献にはその出典が記載されていないようです。
私の知る限り、小数例の報告を除いて、そのようなスタディは存じていません。
気になった点は以上です。
しかし、インクレチン関連薬は、学生の目から見ても魅力的な薬なんですかね。
私は、インクレチン関連薬が夢の薬だとは思っていません。
しかし、世間ではそのようにメーカーがコマーシャルしており、実際に、新薬の売り上げランキングでも、DPP-4阻害薬・GLP-1アナログはともにかなり上位となっていて、違和感を覚えました。
岩田先生が、ペニシリンの大切さを強調されるように、私も内分泌専門医の端くれとして、「メトホルミンとSU剤、インスリン」の大切さを学生や非専門の先生に強調したいと思います。
Medical Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes: A Consensus Algorithm for the Initiation and Adjustment of Therapy; Diabetes Care 32:193–203
10-Year Follow-up of Intensive Glucose Control in Type 2 Diabetes; N Engl J Med 2008;359:1577-89.
投稿: Yosh | 2010年12月13日 (月) 17時47分
yoshiさま
コメントいただき、ありがとうございます。
学生のレポートは、5年生の実習時に提出させ、開陳するにはちょっと、、という場合はボツにして再提出させています。また、スーパーバイザーに当科研修医を当て、彼らが教えることから学ぶという一石二鳥な勉強法を模索しています。
とはいえ、100点満点の原稿を書くまでやらせていては、いつまでたっても完成しないので、だいたい60−70点くらいのできになったところで合格にしています。所詮学生の書いたものなので、情報の信憑性については、ご留意ください。
加えて、僕の糖尿病の知識が足りないため、今回のレポートの瑕疵の責任の多くは僕自身にあります。数々のご指摘ありがとうございました。勉強になりました。
なお、レポートのテーマは岩田自身が独断と偏見で決めています。今回はインスリンを用いている糖尿病患者で肝機能などからメトホルミン、SU、グリタゾンなどが使えない外来のケースで、DPP-IV阻害薬を用いる価値はどのくらいあるか、という検証をしていたときに「ちょっと調べてきてごらん」とテーマを与えたものです。DPP-IV阻害薬の属性を勉強するのはもちろん前提として大事ですが、既存の薬剤との使い分けはそれだけでは分かりません。新薬たるこの薬は安全性などのデータがまだ希少で、ハード・アウトカムも少ないです。学生には新薬に飛びつくリスクについては十分に教育したいといつも思っています。率直に申し上げて、世界的に日本とアメリカのドクターは、たぶん製薬会社の影響で安易に新薬に飛びつく傾向があると僕は思っており、それを危惧しています。
要するに僕も学生のレポートから勉強させていただいているわけで、一石三鳥ですね。
投稿: 岩田健太郎 | 2010年12月14日 (火) 08時11分