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講演会

透析療法と感染対策

11月に薬剤師さん達を対象に行う講演の資料です。

 重症感染症やその治療はしばしば腎不全を起こし、腎疾患を持つ患者は感染症に罹患しやすい。腎疾患と感染症には深い関連がある。腎疾患患者の様相を劇的に改善した透析療法であるが、その透析療法そのものも感染症と深く関わっている。今回は、腎疾患、透析療法、そして感染症というトピックを考えてみたい。

・中等度の敗血症では、4人に1人が腎不全、血液培養陽性になる敗血症性ショックの2人に1人が腎不全になる。感染症と腎不全は切っても切れない関係である。
・敗血症で腎不全になるのは、acute tubular necrosis(ATN)によることが多い。
・「大量抗菌薬」をもちいると腎不全になる、という伝説には要注意。たしかに、アミノグリコシドなどはそうだが、βラクタム薬は間質性腎炎(アレルギーII型)の原因であり、容量非依存性。腎機能に応じて投与量は調整するが(血中濃度を安定させるため)、それと「腎臓によくない」と解釈するのは、筋違い。
・逆に、アミノグリコシドは腎機能障害のある患者、高齢者では極力避けるか、使うにしても短期間で中止する方がよい。
・ただし、腸球菌の心内膜炎の場合はアミノグリコシド長期投与が避けられないことが多い。腸球菌に対してβラクタムは静菌的にしか作用しないから、シナジーが必要だからである。バンコマイシンにアミノグリコシドを噛ませるかについては、異論があり、controversial。副作用もシナジスティックに起きるからである。
・バンコマイシンは以前と異なり、腎不全の原因となることは極めてまれ。以前は混入物のためにしばしば腎不全の原因となっていた。バンコマイシンを用いていて腎機能が悪くなったら、血中濃度が高すぎるか、何か別の原因があると考えた方がよい。
・バンコマイシンの至適血中濃度は不明である。臨床症状も見ながら判断するべきで、杓子定規に5−10といった数字を設定すべきではない。
・溶連菌感染後の糸球体腎炎は有名。抗菌薬投与で予防できないのが悩み。尿検査をルーチンでやる必要はあるか?無症候性血尿を見るだけなら、臨床的には価値は小さいか?
・尿毒症があると免疫機能が修飾されると昔から考えられてきた。免疫システムの慢性的な活動性と反応性の低下が相まって、全体的には免疫機能異常になっていたのだという。この辺は理論値、実験値からの仮説なので、臨床的にどうなのかh、はにわかには分からない。
・その証拠として有名なのは、透析患者のB型肝炎ワクチンの陽性率がぐっと低い、などの観察に示されている。他にも、破傷風トキソイドや肺炎球菌ワクチンの反応も低い。
・end-stage renal disease(ESRD)患者は、一般人より死亡率(crude mortality)は20倍高いといわれる。一般人の死亡原因は心疾患、悪性疾患が多いが、ESRD患者では感染症が多く、死亡原因の第2位である。敗血症と肺炎で死亡者全体の10%程度を占めている。

透析患者と敗血症

・SIRSが感染症によって起きるものを敗血症と言い、それにより臓器障害が起きれば重症敗血症(severe sepsis)、それによりショックになれば敗血症性ショックである(septic shock)。「もともと」腎機能が悪いことを理由にsevere sepsisと呼ぶ必要はない。
・重症敗血症、敗血症性ショック(severe sepsis, septic shock)は内科エマージェンシーである。
・Critical Care専門家からは、Surviving Sepsis Campaignといった診療ガイドラインが出ている。
->参考 http://www.survivingsepsis.org/
最新のガイドラインは大人で2008年、小児で2002年である。上記のサイトから、ガイドライン、ポスター、PPTファイルまで全部手に入る。太っ腹!

敗血症の定義
・American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicineによると、感染症があって、SIRSがあれば、敗血症である(1992)。
・bacteremia(菌血症)と敗血症が同義でない、ということは知っておくべき。
・severe sepsis/septic shockの血液培養陽性率は50%に過ぎず、20−30%ではどんなにがんばっても(他の方法でも)感染源を特定できない。
・SIRS, systemic inflammatory response syndromeは、以下のうち2つ以上あればOK.
1.体温が38℃以上、あるいは36℃未満
2.心拍数が90/min
3.呼吸数が20/min、あるいはPaCo2<32Torr
4.WBCが12000/CC以上、あるいは4000/CC以下、あるいは未熟杆状球が10%以上

・SIRSがあっても感染症でない(すなわち敗血症でない)ことが多いのには、注意
・また、上記の条件を満たすものには重症患者もいるが、結構軽症で済んじゃっているものもいるので、なかなか判断は難しい。
・別にSIRSがあるからといって、フルワークアップが必要だったり、広域抗菌薬が必要である、という意味ではないことは理解しておく必要がある。
・で、ここでsevere sepsisという概念が出てくる。これはsepsisに加え、1つ以上の臓器障害が生じている場合を指す。
・臓器障害とは、acute lung injury, renal failure, coagulation abnormalities, thrombocytopenia, altered mental status, renal, liver, or cardiac failureなどを意味する。DIC、あるいは血小板減少などもsevere sepsisの定義を満たす条件なのは要注意。血液内科の先生に言われなくても、血液は立派な臓器であり、輸血は臓器移植の一種なのである。
・ただし、臓器障害といっても、もともと既往にある場合だってあるし、敗血症が原因でない臓器障害だってあるだろう。だから、ここでも杓子定規に「条件を満たすか」という穴埋め問題をやってしまうと、臨床的には判断を誤ってしまう。
・septic shockは敗血症に加え、「輸液に反応しない」低血圧、すなわち収縮期血圧90mmHg未満あるいはmean arterial pressure(MAP)65mmHg未満(成人)、あるいはベースラインの血圧よりも40mmHg以上収縮期血圧が下がって輸液に反応しない場合を指す。ベースラインの血圧は、よく研修医の先生は見逃しているけれど、結構大事である。というか、全てのパラメター(所見、血液検査など)において、ベースラインの把握は大事なのである。クレアチニンが普段0.5のひとが、0.9で来院したとき、腎臓が大丈夫だと即断してはいけない。
・血圧が低いだけではなく、「輸液をしても反応しない」ことが大事である。ある学会で偉い先生に、「輸液でよくなった敗血症性ショック」の話をされて話が全然かみ合わなかったことがあります。
・どうも、SIRSがあるだけでは予後悪化因子とは言えないようである。Ann Emerg Med 2006;48:583およびChest 2006;129:968を参照。白血球が高いから予後が悪いというのもおかしいし、呼吸数も30を越えるといけないが、、、、、繰り返すが、SIRSの存在イコール予後の悪い患者というレッテルを貼ってはいけない。
・他方、severe sepsis, septic shockの患者の予後は悪い。
・敗血症性ショックの治療は、early goal directed therapy. 大量輸液を、躊躇無く行う。
・無尿の患者にオートマティックにラシックスを使ってはいけない。「何故無尿なのか」考える。敗血症性ショックで無尿の場合、ラシックスは禁忌で、むしろ大量輸液が大事である(ただし、後期ではラシックスをもちいるが)。

・敗血症の死亡率は透析患者で100−300倍、腎移植患者は20倍とか。糖尿病があるとこれはさらに高くなる。
    Kidney Int 2000;58:1758-
・敗血症のリスクは血液透析患者の方が、腹膜透析患者よりも多い。
・逆に、敗血症を起こすと、透析に入りやすい。
・中心静脈ライン、透析カテは感染のリスク
・鎖骨下、経静脈に比べて鼠径部はリスクが高い。
・グラム陽性菌が原因の敗血症が多い。グラム陰性菌やカンジダも要注意
・合併症に要注意。心内膜炎、椎体炎は多い。腰痛、発熱はそうでないと分かるまでは椎体炎。椎体炎を見たら、心内膜炎を疑う。頭に飛ぶ前に治療するのが肝心
・カンジダ血症をみたら、必ず眼内炎を考える。
・血液培養は2セットとるのが原則。透析患者ではとりにくいが、、、、
・心内膜炎を疑ったらDukeの基準を用いて診断を行う。経胸心エコーは感度が低いため、経食道エコーがベター。
・治療期間は最低4週間と長い。抗菌薬は短く切るのが原則とよく言われるが、それは診断次第なので、長期投与も必要な場合を理解するのが大事である。他に、化膿性関節炎、椎体炎、膿瘍性疾患など。
・敗血症における血漿交換の価値は微妙である。米国のガイドラインでは「エビデンス不十分」として推奨していない。あるスタディーでは有意差が出たが、コントロール群の年齢が高いなど問題のあるプロトコルであった。
 Intensive Care Med 2002;28:1434-
 こちらのスタディーでは、有意差無し
 Crit Care Med 1999;27:2096-
・予防が大事。maximal barrier precautionを。
・anticiotic lock therapyも有効か。
・イソジンよりはクロルヘキシジン2%製剤の方が好ましいと考えるが、日本にはない。

透析患者と、肺炎

・実は、肺炎は多い。一般人の20倍。
・肺炎後1年間の死亡率はなんと45%。一度入院してしまうとあれやこれやで死亡率は高くなる。
・予防が大事。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを全ての透析患者に!

感染症と、心血管系疾患

・感染症を起こすと、心臓も悪くなりやすい。心臓が悪い患者が感染症を起こすと予後が悪い。
 Ramirez J et al. Acute myocardial infarction in hospitalized patients with community-acquired pneumonia. CID 2008;47:182-
 Foley RN et al. Septicemia in the United States dialysis population, 1991 to 1999. J Am Soc Nephrol 2004;15:1038-45

・クラミジア感染との関連やピロリ菌感染との関連も取りざたされたが、よく分からない。炎症との関連はよく言われていて、CRPは今このために測定されている。アジスロマイシンのトライアルは陰性だった。

・開発中 黄色ブドウ球菌、緑膿菌ワクチン

腹膜炎

・本当にやりづらい。
・皮膚の細菌が入り込む。ブドウ球菌が多い。水が好きな緑膿菌も
・間違って液がコンタミした場合、2日間予防的抗菌薬をもちいた方がよい。カテーテル挿入時、観血的な歯科治療時、大腸ファイバーでも考えた方がよい。
Perit Dial Int 2005;25:107-
・Y-setが感染を減らしている。
・ムピロシン鼻につけて除菌、、、、腹膜炎そのものは減らないか。刺入部に塗ってもあまりインパクトなし。
・ゲンタシン軟膏で、緑膿菌感染を減らせる?
 Bernardini et al. Randomized double-blind trial of antibiotic exit site cream for prevention of exit site infection in peritoneal dialysis patients. J Am Soc Nephrol 2005;16:539-

その他

・透析センターは感染症流行の震源地。広くて、人がたくさんいる。
・医療者のインフルエンザや百日咳に要注意。咳、熱があれば勇気を持って休もう。アウトブレイクを起こしたら、やぶ蛇です。
・結核患者に要注意。肺結核が臨床的に疑われたら個室で透析を

腎不全と抗菌薬投与
・腎機能に応じて、抗菌薬投与量は調整されねばならない。
・腎不全患者は腸管浮腫などで消化管からの抗菌薬吸収は低下している可能性がある。重症患者では点滴投与がベター。逆に、肝でのfast pass effectが低下していることもあり、その場合は血中濃度が上昇することも。
・タンパク低下に伴うunbound antibioticの増加が臨床的にもたらす影響については、不透明なことが多い。
・通常は、Cockroftの簡易式でGFRを計算し、それを用いる。実体重と理想体重どちらを用いるかは議論があり、Pesolaらは理想体重の使用を提唱した。理想体重はpalmpilotのMedCalcなどで簡易に計算できるが、
男性で 50kgに、150cmから1インチ増すごとに2.3kg足し、
女性で 45.5kgに、150cmから1インチ増すごとに2.3kg足すと計算できる。面倒くさい。
・乏尿があったり、クレアチニンレベルがどんどん上がっているときは、クレアチニン・クリアランスは10mL/min以下と解釈すべきである。
・トリメトプリムは腎機能と関係なくクレアチニンレベルをちょびっと上げるので要注意。セフォキシチン、セファロシン、5FCでも同様の現象が報告されている。
・高齢者のクレアチニン1.0は決して正常ではない!!!
原則
・初回投与は、全ての抗菌薬において、最大量を投与する!
・初回投与からは、教科書を見ながら腎機能に応じて投与方法を調整する。サンフォードガイドが便利である。
・投与量を減らすか、投与間隔を増やすかは、どちらでも良いことが多い。ただし、教科書的に
「投与間隔を増す」ものとして、
ストレプトマイシン、セファゾリン、セフェピム、セフォタキシム、セフォキシチン、セフポドキシム、セフタジジム、セフロキシム、セファレキシン、ダプトマイシン、スルバクタム、サルファメソキサゾール、テイコプラニン、トリメトプリム、アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリン、ノルフロキサシン、テトラサイクリンなどがある。
「投与量を減らす」ものとして、
セファクロル、セフィキシム、セフォテタン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、アズトレオナム、シラスチン、クラブラン酸、イミペネム・シラスタチン、ertapenem、メトロニダゾール、タゾバクタム、ペニシリンG、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシンなどがある。
と、教科書にはあるが、ピペラシリン・タゾバクタムはどうすればいいの?という素朴な疑問も湧く。

・血液透析による薬物クリアランスには様々な要素が関与している。カラムによっても異なる。その為、透析後に追加抗菌薬投与を行うことが多い。
・いちおう、尿素クリアランスを指標にした計算式もある。
Kx=Kurea x 60 /MWx で、Kureaは尿素クリアランス、MWxはXという名の抗菌薬の分子量、Kxは抗菌薬xのクリアランスである。現場で使ったことあるのを、見たことがありません。

・continuous renal replacement therapy (CRRT) 持続的腎代替療法
 日本では血液濾過透析CHDFを行うことが多い。CAVHD, CAVHDF, CVVHF, CVVHDFなどがある。私もよく理解していないけれど、以下が原則らしい。
・動脈内抗菌薬濃度と静脈内抗菌薬濃度は同じと(いちおう)考える。だから、AV,VVの区別は不要。
・血液濾過にて除去される抗菌薬の効果をsieving coeffieicnt(SC)と呼ぶ。限外濾過液と血清の薬の比率をいう。例えば、アミカシンのSCは0.9(結構濾過される)、アンホテリシンBは0.3(あまり濾過されない)、イミペネムは1(全部濾過される)。
・CRRTはこれを「持続で」行うので、濾過される抗菌薬は以下のように計算される。
除去される抗菌薬の量(mg)=限界濾過液濃度(mg/L)x濾過速度(L/min)x 濾過時間(min)

 濾過速度が速ければ速いほど、濾過時間が長いほど、よく除去される、ということです。
 まあ、これにタンパク結合率など不確定な要素が絡みますし、限界濾過液濃度は通常の現場では測定しません。SCを使って予測するにしても、濾過だけなのか、濾過と透析両方やるとどうなのか、といった問題はあると思います。この辺、薬理学の先生のほうから分かりやすい表を作ってくれると嬉しいです。今のところ、CRRTを受けている患者の場合、私はサンフォードの通りに投与していますが、間違っているかもしれません。ご意見があったら教えてほしいです。

まとめ
・透析患者は感染症が多い。
・特に、異物感染に要注意
・感染症を起こすと腎不全、透析になりやすい。
・予防が大事。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを
・やっぱり、腎移植が望ましい、か。

参考
Foley RN. Infections in patients with chronic kidney disease. Infect Dis Clin N Am. 2007;21:659-72
Livornese Jr LL et al. Use of antibacterial agents in renal failure. Infect Dis Clin N Am. 2004;18:551-
深川雅史、吉田裕明、安田隆(編集) レジデントのための腎疾患診療マニュアル 医学書院

実習指導者研修会

今日は、西宮市で日本外来小児科学会教育検討会 実習指導者研修会でお話しします。

タイトルは、
「感染症を教えるパラダイム 何を教えるかから、どう教えるか。whatからwhyに」
というものです。

 卒前、卒後の感染症教育が不十分であると言われて久しいですが、どうしたらよいのでしょう。感染症の知識は増え続け、青木先生のマニュアルは倍増し、そのくせ教える時間は短くなる一方です。微生物学は学生にもっとも人気のない科目で、短い時間で増えた項目を無理矢理詰め込もうとするとますます人気がなくなります。どうしたらよいのでしょう。

そこで、何を教えるかだけでなく、どう教えるか、を考えたいです。コンテンツだけではなく、デリバリーも大事、と言うわけです。

臨床現場では問題意識をもって問題の定式化が重要です。しかし、知識だけ詰め込まれて、「○○だったら何とか病」「○○病には××マイシン」という1対1対応で覚えさせられた学生は、現場に出てコンテクスチャルな患者にとまどいます。曖昧さに悩みます。デジタルでない世界にいらだちます。どうしたらよいのでしょう。答えはwhatではなく、whyという疑問のなかにあると思います。

講演会で紹介する、指導医のための感染症の教科書です。他にもあるかもしれませんが。

・お奨めは、ハリソン。ここの感染症の項は本当に勉強になる。
・マンデルは非専門家にはあまり必要ない。
・サンフォードは必須。英語、日本語ありますよ。
・青木眞先生の「マニュアル」は、無人島に一冊だけ持って行け、と言われたら選ぶ一冊(もっとも無人島では役に立たんが、、、)
・藤本卓司先生の感染症レジデントマニュアル、西原先生の「一刀両断」、大野先生の「レクチャーノーツ」は病院で学ぶのなら定番。
・体系的に学ぶなら30デイズ(感染症スタンダードマニュアル)
・予防接種ならRブック
・感染症診療のエビデンスは我田引水ながらよくできた本。臨床的な疑問に答えてくれます。
・小児抗菌薬マニュアル(笠井先生)はいい本です。
・私の本は、もちろん買って読んでね(せこい!)。
・もやしもんは面白い!
・ケアネットDVDもどうぞ!

講演会というか、宣伝会だな、これじゃ。暑いですが、がんばりましょう。

『診療所における感染対策』セミナー@福井 2008.7

『診療所における感染対策』セミナー@福井(2008年7月12日予定)のまとめ

私は普段講演の時、ハンドアウトをお渡ししません。理由は以下の通りです。

1.エコのため。ハンドアウトは紙ゴミが増え、また多くの方は(必ずしも全てのかたではありませんが)二度とハンドアウトを目にすることはありません。
2.講演中は会場のみなさんとアイコンタクトを取り、良好なコミュニケーションを取りたいと願っています。ハンドアウトがあるとどうしても目線が下を向いてしまうように私には思えるのです。
3.ハンドアウトを渡してしまうと先の展開が読めてしまう。
4.3のために、ギャグがすべりやすい。
5.私の使っているプレゼンソフト(Keynote)ではハンドアウトが作りにくい。

 ギャグがすべるのは、単に面白くないからだ、という話もありますが、、、、

 とはいえ、「ハンドアウトがほしい」「ハンドアウトがないのはけしからん」「かもすぞ」とおっしゃる方もおいでです。そこで、ブログ上で講演の要旨を公開してこれに代えることにしました。講演をご覧になった方もそうでない方も、どうかご活用ください。
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診療所における感染症

・感染症の持つイメージとは?
・うつる、みえない、こわいなど
・イメージを脱し、実態を知るところから始めよう。

結核

・ボッティチェッリのビーナスの誕生。モデルは結核患者だった。やせて肌が白く、頬を赤く染め、目の周りがくぼんで大きく見える。
・結核は今でも多い。日本でも減少傾向だがその減少には歯止めがかかりつつある。先進国で比べると日本はまだまだ結核の多い国。
・ツ反の判定は要注意。基本的には硬結10mm以上で陽性。強い曝露があったり免疫抑制があれば5mm以上。ブースター効果を理解する。BCGはワクチンの名前。幼児期に1回だけ接種。QFTは健康な人の潜伏結核診断に有用。BCG関係なし。「疾患の」診断に役に立つかは、微妙。
・結核予防法は2005年に改定され、これは後に感染症法に取り込まれた。
・予防接種の簡素化
・再接種の廃止(2003年から前倒し実施)
・乳幼児期接種の強化
・生後3−6ヶ月までに
・事前にツ反はやらない
・潜伏感染の治療(化学予防)
・29歳以下に適応
・のちに、それ以外にも適応は広がる
・INHは9ヶ月。6ヶ月にあらず
・健康診断の効率化
・入学時のツ反廃止
・問診に基づいて健診
・検診をリスクを絞ってターゲット化
・定期外検診を強制的に

抗生物質とモラルハザードの問題

・46歳の男性。3日続く微熱、鼻水、鼻づまり、くしゃみで来院。診察上、鼻粘膜の肥厚以外特に所見なし。選択すべき抗菌薬は?

・抗菌薬は原則出さない
・例外的に必要なケースは?
・例外に引っ張られて、一般原則を捨ててはいけない
・例外を無視してもいけない
・感染症診療は、バランスが大事

使わない抗菌薬は
耐性を作らない

風邪を制する者、
気道感染症を制す

・3歳の女児。耳が痛いと来院。左鼓膜の発赤、水が溜まっている。微熱あり。全身状態良好。選択すべき抗菌薬は?

・オランダでは1990年から抗菌薬を原則として使用せず
・オランダでの耐性肺炎球菌の検出率は1998年で3%
・米国ではこれまで抗菌薬の投与を基本
・2004年の米国小児科学会のガイドラインでは抗菌薬の使用を制限する方針を初めて認めた
・基本方針 48〜72時間は対症療法のみによる経過観察
・耳漏があるとき 7日間は抗菌薬を投与せず,外耳道の洗浄や清拭などの処置のみで経過観察
・耳痛があるとき 鎮痛薬としてアセトアミノフェンの10〜15mg/kg/回の投与とする。2歳以上ではイブプロフェンの5mg/kg/回の投与も
・熱があるとき 急性中耳炎以外の重症細菌感染症の合併を常に考慮
・抗菌薬療法 経口抗菌薬の第一選択はアモキシシリン(以下,AMPC)とし,60mg/kg/日の5日間投与とする。抗菌薬が無効なとき 耳鼻科専門医と連携

使わない抗菌薬は
耐性を作らない

抗菌薬は患者の
利益のためにある
ばいきんを殺すこと
そのものが目的ではない

・40歳の女性。4日間の微熱、頭痛で来院。右のほほを押すと圧痛。鼻腔は腫れている。選択すべき抗菌薬は?

・大部分はウイルスが原因であり,膿性鼻汁がみられても10〜14日間は抗菌薬を使用しない。
・下記の条件の1つを満たすとき急性細菌性副鼻腔炎と診断し,抗菌薬投与を考慮する。
 症状や所見が10〜14日以上軽快することなく持続した場合(10day-mark)
 顔面の腫脹や疼痛が発現した場合
 上気道炎の経過中に高熱を伴って症状や所見が増悪する場合    

・抗菌薬を出すのなら、やはり、アモキシシリンです。
・増量した60〜90mg/kgではpenicillin-intermediate Streptococcus pneumoniae(PISP)や一部のpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae(PRSP)にも対応できる

使わない抗菌薬は
耐性を作らない

・20歳の男性。一昨日から咳と高熱。診察上有意な所見なし。レントゲン正常。血液検査では白血球とCRP軽度高値。2選択すべき抗菌薬は?

・大多数の急性気管支炎は、抗生物質を必要としない。
・マクロライドを塩胡椒代わりに使わない!

・マクロライドにご用心
・A群溶連菌の多くはマクロライド耐性
・急性咽頭炎には使いにくい!
・肺炎球菌の大多数にはマクロライド耐性
・肺炎に単独使用はNO NO
・マイコプラズマにまで耐性菌が。こどもはどうやって治療するの?

・18歳の女学生。5週間続く咳
選択すべき抗菌薬は?

・慢性の咳は原因様々。まずは原因検索を
・抗菌薬で治るものは、むしろまれ

Cough variant asthma(抗菌薬不要)
上気道炎ののこりかす(抗菌薬不要)
Postnasal drip(抗菌薬不要)
ACEI(抗菌薬不要)
喫煙(抗菌薬不要)
百日咳(これは、抗菌薬で治療することも)
肺ガン、COPDなどなど(まずは診断)
必ず、結核は除外する事

インフルエンザ

・飛沫感染
・ものや手などの接触でも
・手洗いの重要性
・待合室で流行らせてはいけない

・タイプA, B, Cがある。このうち疾患を起こすのはAとB
・現行のワクチンは、2種類のAと1つのB
・Aには複数のH抗原とN抗原
・Antigenic shift, antigenic drift 大流行の原因に
・BにはHとNがひとつずつ。Antigenic driftは起きる

・タミフルの問題点
症状を1日程度減らす役割
他の抗菌薬使用は減
耐性の問題
重症化を減らす訳ではない
鳥インフルエンザ用に備蓄が必要か

・ The UK National Institute for Clinical Excellence (NICE) の推奨
アマンタジンは使わない
リスクのない成人、小児には使わない
発症48時間以内にのみ、用いる
postexposure prophylaxis を流行時に(特にワクチン使っていない場合)

・インフルエンザワクチンを活用しよう。
原則としては1回投与でいい
初回のみ、1か月ごとに2回
ただし、13歳以下は2回、とうオプションもある
6か月以上が対象

・ワクチンの対象は?
65歳以上の高齢者
老人ホームなどの施設居住者
慢性呼吸器疾患、心疾患、腎疾患
糖尿病
免疫抑制
医療従事者
医師や看護師だけではない
長期アスピリン使用者(例、川崎病患者)
その他希望のあるもの

efficacy
見積もられたefficacyは77%
小児で80%
高齢者でおよそ50%

effectiveness
高齢者で、
インフルエンザ様症状は35%減る
肺炎などによる入院は47%
死亡率は50%

市中肺炎
・まずは重症度分類を CURB65はお奨め。
confusion (based on a specific mental test or disorientation to person, place, or time),
BUN level >7 mmol/L (20 mg/dL)
respiratory rate >30 breaths/min,
low blood pressure (systolic, <90 mm Hg; or diastolic, <60 mm Hg),
age <65 years
the 30-day mortality
0, 1, or 2 factors was 0.7%, 2.1%, and 9.2%, respectively.
3, 4, or 5 factors were 14.5%, 40%, and 57%, respectively.
0–1 be treated as outpatients
2 be admitted to the wards
>3 often required ICU care.
A simplified version (CRB-65), no BUN
・グラム染色を。肺炎球菌であればペニシリンを。

肺炎球菌ワクチンを!
他のワクチンも米国とは10−20年遅れ!Hib, Tdapも
・麻疹ワクチンも。麻疹って怖い?
肺炎の合併が年間4800例
脳炎は年間55例
死亡例は年間88例程度
・韓国では2006年に撲滅!

・ワクチンの接種法
原則、SCでもIMでもいい
AdjuvantがあればIMのみ
生ワクチンはSCのほうがいい(副作用が少ない)
小児には大腿外側を。他では三角筋を
お尻に打たないで!
SCは45度
IMは90度
Intradermalは15度くらい

同時接種は通常可能
麻疹や風疹ワクチンの前に免疫グロブリンは免疫原性を落とすと考えられている。黄熱病やポリオならOK

下痢

ノロウイルスとは
・以前はNorwalk-like viruses(NLVs)とか、small round structured viruses (SRSVs)と呼ばれていた。
・1970年代に発見
・電子顕微鏡は現場では使いにくく、そのままおざなりにされてしまっていた。
・1990年代にELISA, RT PCR作成
・世界中で報告。世界の下痢症で、最大の原因
・アウトブレイクも
・同じソースから、2人以上患者が出れば、アウトブレイク
・施設で2人以上下痢が出たら、アウトブレイクを疑え!

下痢のマネジメント
・下痢症の入院患者は何が原因であれ、接触感染予防
・アウトブレイクを見逃さない
・脱水をおこさない
・ものすごく吐いている場合は個室管理も考慮
・アルコール製剤は、だめ

STD
・どんなSTDがあるか?必ず意識にはとどめよう。
・HIVは増えている!

疥癬
・潜伏期間は1ヶ月
・見逃さないのが、大事。積極的に見つけるのが大事
・ノルウェー疥癬以外は恐ろしくない
・熱に弱く50℃、10分間で死滅する
・人間の体外では生き延びられない
・隔離は不要
・いずれの薬剤も頸部から下の全身に塗布する。ノルウェー疥癬では,頭頸部を含め全身に塗布する。(AIII)
・ステロイドは使用しない
・γBHCが治療薬。ただし、これは日本だけ。オイラックスも。
・ムトウハップなどいおう剤は使用しない
・治療は専門家が行った方がよい
・海外ならペルメトリンクリーム!これが安全
・イベルメクチンも

MRSA
・MRSAは怖い菌ではない
・強い菌でもない
・MRSA陽性は、病気ではない
・MRSAは空を飛ばない
・手洗いが、大事
・除菌は、意味がない
ただし、、、
ADLの低下した全介助患者,抗菌薬の長期投与例,低栄養状態の患者,褥瘡患者などは,MRSAの感染リスクが高い。したがって,これらのハイリスク患者とMRSA保菌者とを同室にしないように配慮する

基本は,手洗い,清潔動作の励行,部屋の清掃(AIII)
MRSA保菌者の隔離は行わない(CIII)
MRSA保菌者の除菌は強いて行う必要はない。また,MRSA陽性の入院患者が施設に移る前の除菌および入所時の保菌検査を勧告しない。(CIII)
施設における医療従事者の保菌検査は不必要(CIII)
可能であればMRSA保菌者をハイリスク患者と同室にしない。(BIII)

2016年12月
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